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(一社)日米不動産協力機構(JARECO)は26日、日本大学経済学部7号館(東京都千代田区)でカンファレンスを開催した。
今年のテーマは「国際不動産取引・インバウンドの現状と将来」。全米リアルター協会(NAR)2025年会長のケビン・シアーズ氏、同日本・モンゴル大使の西川ノーマン裕子氏など、アメリカからのゲストも参加した。
冒頭、中川雅之理事長(日本大学経済学部教授)は、「日本とアメリカの不動産市場は、制度や状況こそ違えど“不動産価格の上昇”という共通の課題を抱えている。このカンファレンスが、課題解決に向けた取り組みを行なうきっかけになればと思っている」と挨拶。
ケビン会長は、現在のアメリカの不動産市場について「在庫不足、価格高騰、そして金利上昇が住宅の売買流通を妨げている。既存住宅については、通常500万~550万件の取引があるところ、400万件ほどに落ち込んでおり、平均して5割ほどの価格高騰がみられる。金利も過去5年間で一番高い水準」と解説。その一方で、「住宅の取得に有利な法案が議会を通過する見込み。手頃な価格で持ち家を手に入れるという“アメリカン・ドリーム”の実現に希望も持てる」と話した。
NARチーフエコノミストのローレンス・ユン氏は、「アメリカの不動産市場は、住宅価格の高騰、金利の急激な上昇により、特殊な状況にある。それらの影響により、住宅ローンの月の返済金額が現在は2倍に。消費者にとって住宅を購入しやすい環境をつくるためには、FRB(連邦準備制度理事会)の金利引き下げが不可欠となる」と言及。今後の動向については、「住宅価格が全体的に下がるとは思えない。しかし、景気の後退もなく、雇用は拡大し続けることが予想されるため、住宅購入を希望する人は増加していくのでは」と予測した。
引き続き、日米双方の視点でインバウンドを考察するパネルディスカッションを実施。ワシントン州マネージングブローカー・JARECO顧問のマーク北林氏をスピーカーに、Top Agent(株)代表取締役・RE/MAX Top Agent オフィスオーナーの清水亜紀氏、(株)YAK代表取締役の越水 亮氏、西川氏がパネリストとして参加した。
「日本はアメリカと比較すると、売却履歴を自由に閲覧できないなど透明性が低い。日本の不動産に詳しくないユーザーに納得して物件を購入していただくために、われわれは正しい判断材料を提供することが求められる」(清水氏)、「住宅の購入に限らず、農業用の土地、スキー場・ゴルフ場への投資など対象が多様化しており、日本でのビジネス展開を希望するユーザーも増えている。取引に関わる総合的なサービスを提供することが重要」(越水氏)、「アメリカに移住したが、60・70歳を過ぎ、元気なうちに保険制度がしっかりしている日本への帰国を考える人が少なくない。専門家との連携を強化し、家の売却やライフプランの相談などのサポートをより一層手厚くしていく」(西川氏)など、それぞれが国際不動産取引、インバウンドへの対応についての持論等を展開した。