
6月5日開催の(一社)不動産流通経営協会の定時総会で理事長に選任された遠藤 靖氏(三井不動産リアルティ(株)代表取締役社長)が7月15日、業界誌記者と会見した。
同氏は現在の既存住宅流通市場について、「東日本レインズの既存マンションデータを見ても、成約件数の増加・1平方メートル単価の上昇が続いている。特に都心部は旺盛な需要に伴う好調の維持が見込まれるが、その他の地域では、マンションの値上がりでユーザーがついてこられないケースも出てきており需要の減退も見られる。日米関税交渉や物価上昇、長期金利の引き上げといった社会経済の先行きは不透明であり、予断を許さない」などと分析。
その上で、「経済動向をしっかりと見据え、多様なお客さまニーズに対して的確に対応すると共に、会員各社の成長と発展に役立つよう協会の事業に取り組んでいきたい」と就任の抱負を述べた。
今後の課題については、(1)政策提言・調査研究・情報発信、(2)デジタル技術を活用した新たな不動産流通システムの構築、(3)安全・安心な仲介サービスの実現の3点を掲げた。
(1)については、「顧客の住宅取得に係る調査などを通じて、既存住宅流通の活性化に向けた要望のエビデンスとしていく」とした。(2)では、電子契約やIT重説など制度的な枠組みはできているものの、売買仲介取引での活用は伸び悩んでいることから「現場レベルでのデジタル活用に関する悩みを吸い上げ、国土交通省や自治体に働き掛けると共に、会員に対して先進事例を紹介するなどの取り組みを進めたい」とした。
(3)では、事業者とユーザーの情報格差が縮まる中で、個々の営業担当者のスキルアップがポイントになるとし「建築物の省エネルギーに関する知識や税制、管理の状況など、あらゆる情報をユーザーに分かりやすく伝達できる能力が必要だ。積極的な情報発信を通じて業界各社への意識付けを促していきたい」(遠藤氏)。
2020年に公表した同協会の活動方針・計画等を示した「FRK提言2020」についても、現状の進捗などを説明。「これまで、建物の品質評価制度に関する提言など、多くの政策提言を行なってきた。現状に残された課題の中でも目玉となるのが、投資対象としての既存住宅の価値向上だ。従来はほとんど投資対象になっていない木造の既存住宅や、地方圏の既存住宅などを投資対象として見る動きが広がれば、投資マネーが流入して市場が拡大する。そのために協会として何ができるか。具体的な政策提言について今年度以降検討を進め、早期に実行に移していきたい」などと語った。