記者の目 / 開発・分譲

2005/5/31

横浜・金沢に現われた「コート・ダ・ジュール」

日本綜合地所「レイディアントシティ横濱」を歩く

 (社)日本住宅建設産業協会が行なっている優秀事業表彰(今年で5回目)で、「中高層分譲住宅部門・最優秀事業賞」を受賞した日本綜合地所「レイディアントシティ横濱」を見学した。  同社が創業10周年記念事業として全力を傾注してきたもので、「街づくり」というデベロッパーの「使命」であり「王道」に、真っ向から挑んだビッグプロジェクトだ。14.6haもの工場跡地に、南仏・コート・ダ・ジュールを手本に作り上げられた街並み。その街並みの素晴らしさは言うまでもないが、総戸数1805戸の8割が専有面積100平方メートル以上というゆとり、坪単価130万円台・専有100平方メートルで3,700万円台という低価格、高い住戸基本性能と仕様、そしてさまざまなアメニティ・コミュニティサービスなど、その魅力は数多い。

シーサイドアネックス(共用棟)から敷地中央のレイディアントパークを臨む
シーサイドアネックス(共用棟)から敷地中央のレイディアントパークを臨む
ゆったりとした公園スペースや道路周辺の植栽も南欧風の雰囲気が
ゆったりとした公園スペースや道路周辺の植栽も南欧風の雰囲気が
街灯や小さな“水辺”など、細かなディテールにもこだわりが見える
街灯や小さな“水辺”など、細かなディテールにもこだわりが見える
ひろびろとした公園では子供たちが遊び(上)、カフェテリアなどの商業スペースでは憩いのひととき?を(下)
ひろびろとした公園では子供たちが遊び(上)、カフェテリアなどの商業スペースでは憩いのひととき?を(下)
モデルルームの様子。スペースをとったアルコーブ(左上)、奥行き2mのバルコニー(右上)には、リビングから直接アプローチできる(左下)。TVモニター付きインターホンとインターネット端末を兼ねるマンションナビゲーターシステム「アディット」。居ながらにして共用施設などの様子が分かり、住民同士のコミュニケーションツールとしても活躍(右下)
モデルルームの様子。スペースをとったアルコーブ(左上)、奥行き2mのバルコニー(右上)には、リビングから直接アプローチできる(左下)。TVモニター付きインターホンとインターネット端末を兼ねるマンションナビゲーターシステム「アディット」。居ながらにして共用施設などの様子が分かり、住民同士のコミュニケーションツールとしても活躍(右下)
人気の可動式サンシェード付きオープンエアスペース。「1階から売れていった」のも納得
人気の可動式サンシェード付きオープンエアスペース。「1階から売れていった」のも納得

 シャトルバスが小高い丘を登り、「八景の杜」のトンネルを抜けると、背高のパームツリーに囲まれた街路の向こう側から、ベージュやライトブラウンのタイルに彩られた南仏調の建物群が現われた。街の中には、うっとうしく視線を遮る電柱は一切なく、建物と建物を仕切るフェンス類も存在しない。自然の起伏を生かし、ゆるやかな曲線に沿ってまとめられた街並みを、心地よい浜風が流れる。やわらかい色調でまとめられた建物は、テーマパークのように過度に飾りつけられたものではなく、老若男女誰でも抵抗がない。開発者が「普遍の価値」「いつどこから見ても美しい街」と語るとおり、完成して間もないとは思えぬほど落ち着いた雰囲気が漂っている。色とりどりの花々とともに、街のあちこちに飾られた欧風のオブジェも、全く違和感がない。違和感があるとするならば、ここが「日本」であることだろう。

 この「レイディアントシティ横濱」は、日本綜合地所が01年から開発を進めてきたもの。京浜急行線金沢文庫駅徒歩20分、横浜市金沢区大川に位置する、総戸数1,805戸という首都圏民間マンションとしては最大級のプロジェクト。14.6haの敷地は、東洋テルミーの工場跡地だったが、自然の起伏に富んだ丘陵地であること、北西部を2.6haの自然林(グラースの森と呼ばれる)に接し、南面は八景の海を望めるなど住宅地としてのポテンシャルは高いと判断。同じように海と緑に囲まれた南仏「コート・ダ・ジュール」の街づくりを範に、南欧風の街並みを作り上げることにした。

 全11棟の建物は、最終販売街区4棟を除いた7棟が完成し、1,200世帯が入居している。ベージュやライトブラウン、オフホワイトを基調にしながらも、緩やかなアーチを描く建物、球状のドームを持つ建物、あるいはスペイン瓦に彩られた建物など、微妙にコンセプトを変えている。
 外壁や共用部には、スペイン、フランス、中国から調達したレンガ、タイル、瓦、装飾品がふんだんに使われている。こうした部材の海外調達は、同社がもっとも得意とする分野でもある。敷地中央には、オベリスク(尖塔)やガゼボを設けた広さ9,000平方メートルの欧風庭園があり、水路を挟んだ向こうにはヨーロッパの街並みのようなカフェテリアまである。惜しむらくは、街中を走る道路が横浜市に提供されているため、まったく無表情のアスファルトであることだ。これが建物と同じレンガや石を用いたインターロッキングだったら、どんなに素晴らしかったことだろうと思うが、それは同社の責任ではない。

 住戸プランも充実している。3~4LDK、専有面積は76~120平方メートル。ほぼ全ての住戸がワイドスパン仕様。総戸数の8割が専有面積100平方メートル超、1割が120平方メートル台であり、平均専有面積は100平方メートルを超える。
 主力となる100平方メートル超の住戸は、全戸1畳以上のトランクルームを備えた7畳大のアルコーブ付き。生垣があしらわれた門柱から玄関までは、天然石が敷きつめられる。廊下幅は、1.4m。居室扉、建具は全て突き板調で、居室扉は高さ2,300mmを確保する。高さ2,200mmの全開口サッシュからアプローチできるバルコニーは、ウッドデッキ、可動式のサンシェードを設置した「オープンエアスペース」を標準としている。マンションの場合1階住戸というのは人気薄の場合がほとんどだが、このマンションは1階住戸から売れていったというのも理解できる。
 ボイドスラブ厚280mm、二重床仕様、天井高2,650mmと建物の基本性能も高い。敷地内を取り囲む160台以上の防犯カメラや24時間巡回管理、虹彩認証オートロックなど高度なセキュリティも導入している。

 また、単にハードを供給するだけでなく、住民のコミュニティに積極的支援も行なっており、ライブラリーやラウンジ、フィットネスクラブなどの共用施設を有効的に使った「フレンドリークラブ」も立ち上げている。
 今では、こうした交流に加え、住民の自治会活動も活発化。公園の花々の手入れやホームページによる情報発信などが積極的に行われているという。

 販売価格は時期によって異なるが、おおむね坪単価130万円台、最多価格帯は3,500万円~4,000万円台に収まっている。周辺相場からみれば、坪160万円台がついてもおかしくない造りだが、更生会社からの用地取得と短期集中販売が功を奏し、割安感のある値付けができている。購入者は、20~30歳台のファミリー層から50~60歳台のシニア層までほぼまんべんなく集まっている。高齢者の戸建てからの住み替えや親子近居といったケースが多かったのも特徴的だ。

 ここまで書いておいて申し訳ないが、このマンションを手に入れることはもう難しい。今春の販売をもって、全1,805戸はすべて即日完売したからだ。あとは来年3月の最終引渡しまでキャンセル待ちをするか、中古市場に出るのを待つかだ。
 ほぼ同時期に、JR大船駅圏で総戸数1,502戸の大規模マンション「ビックオレンジ」(東京建物他)が販売され大規模開発同士の競合となったが、それをもろともせず2年弱で売り切った。モデルルームに足を運んだユーザー数、実に1万5,000組。同社の販売力を考えれば驚異的なことだが、それだけこの街の魅力がユーザーに訴求したという証でもある。

 総戸数100戸前後のマンションが主力だった同社が、何もない所に一から街づくりを行なうというこの事業を手がけた意味は大きいはずだ。日住協の優秀事業審査委員会も、こう評している。「住むことにとどまらず、そこに暮らすことが楽しくなり、誇りに思える街を供給したことは、今後の業界に一石を投じる」と。
(J)

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