記者の目

2006/6/30

“本当の森”を持つマンション

藤和不動産の会心作「フォートンヒルズ」が竣工

 近年、空地率・緑地率を高め、植栽を豊かにした環境創造型のマンションが増えている。そうした物件は確かに素晴らしいが、「作られた緑」には限界もある。そうしたなか、敷地内に「本当の森」を抱くマンションが完成した。藤和不動産(株)の「フォートンヒルズ」だ。敷地面積の半分近くが保存林というこの驚くべきマンションは、入居者のコミュニティー形成を完成前から実施するなど、ソフト面でもさまざまな工夫がなされている。まさに同社を代表するマンションとして、記憶にとどまるであろう「フォートンヒルズ」を見学してきた。

建物の目前に迫る保存林。建物は高さ45メートルなので、日当たりがとても良く、木漏れ日も心地いい
建物の目前に迫る保存林。建物は高さ45メートルなので、日当たりがとても良く、木漏れ日も心地いい
保存林は、散策ができるよう整備されている。
保存林は、散策ができるよう整備されている。
入居前から住民のコミュニティー形成に力を入れてきた「フォートンヒルズ」。住民たちはさまざまな交流イベントを通じて、交流を深めた
入居前から住民のコミュニティー形成に力を入れてきた「フォートンヒルズ」。住民たちはさまざまな交流イベントを通じて、交流を深めた
「このマンションに出会えて本当に良かった」。杉浦社長も、会心作に満足げ
「このマンションに出会えて本当に良かった」。杉浦社長も、会心作に満足げ

敷地の41%が保存林、緑地率はなんと61%!

 「フォートンヒルズ」(横浜市戸塚区上品濃)は、地上16・18階建て2棟、総戸数888戸の分譲マンション。大和システム(株)とのJVだが、商品企画・販売戦略などは藤和不動産が主導している。建設地は、小高い丘陵地で標高65m。周囲は50~80m。山坂道が多い横浜市だが、市内最高地点は標高91mだから、市内屈指の高台に建設されるマンションということになる。総敷地面積6万2,000平方メートルのうち約41%、約2万5,000平方メートルが開発することのできない「保存林」。敷地北側には、横浜市が管理する別の保存林が隣接する。
 保存林に加え、さらに約1万5,000平方メートルを緑地としたこのマンションの緑地率はなんと61%。ここまでの緑地率を誇る物件といえば、大京の環境共生マンション第1号「フォレストレイクひばりが丘」くらいしか記者は思い浮かばない。

 実は、この建設地は研究所を誘致するため、バブル時代に区画整理事業が進んでいた(注:そのため、第1種住居地域並みの規制がある一方、建物高さは45mまで認められている。これがマンション建設には幸いした)が、バブル崩壊により頓挫、最低限のインフラ整備を終えたまま放置されていたものを、藤和不動産が取得した。
 都心へのアクセスがいい東戸塚駅圏ではあるものの、いくら自然環境が良くても敷地の4割が開発できない土地を仕入れるのは勇気がいる。だが、同社はあえてトライし、都市機能と自然とを一体化した商品を作り出した。東戸塚といえば、駅前に広がる三井不動産による3,000戸余の都市型マンション群「ニューシティ東戸塚」のイメージが強いが、「フォートンヒルズ」はその対極にあるマンションといえる。

見渡す限りの緑、小鳥や蛍が息づく森

 マンション見学会が行なわれた6月16日は朝から大雨が降り、敷地内の保存林の立ち入りができなかった。その代わり、記者は建物周辺と建物屋上から、「ホンモノの緑」を堪能した。
 建物高さは45mだが、丘陵地に立っているので屋上高さは東戸塚駅前のタワーマンション高層階にも匹敵する。そこからの見晴らしは、想像以上のものだった。建物周囲の保存林に加え、名門・戸塚カントリー倶楽部ほか2つのゴルフ場が隣接。緑の中にマンションが浮かんでいるような気分だった。東側には、横浜みなとみらい地区、西側は湘南地区が遠望できる。

 保存林の緑は、建物のすぐ傍にまで迫る。自然林ならではの静寂と、森に息づく小鳥たちのさえずりが手に取るように聞こえる。マンションの低層部は日当たりに難があるので人気がないものだが、このマンションの場合は、森からの木漏れ日はなんともいえない表情を作り出しており、低層部ほどマイナスイオンたっぷりの生活が楽しめそう。こうした自然の表情を室内に取り込むため、バルコニーはアルミ製ではなくガラス製だ。
 同社は、保存林の中に12個の巣箱を設置したり、近くの遊水地に蛍を放つなどして自然環境の保全に取り組んでいる。取材中見た木箱は、すでに「入居者」が決まっていた。
 このマンションの造園を手がける業者は、「この森は宝の山だ。業者としてではなく、入居者としてずっと手をかけていきたい」と、即座にマンション購入を決めたという。まさに「プロ」が認めたホンモノの森なのだ。

コミュニティー形成にも力 入居前から多数のイベント実施

 「フォートンヒルズ」は、同社がマンションのコミュニティー形成に入居前から本格的に取り組んだ初めての物件でもある。
 プレセールス段階から、「森のある生活」をアピールするため現地でイベントを開催。販売開始後は、契約者を対象にした「夏の交流会」「女性だけの茶話会」「大人の茶話会」などを開催。入居後には、住民コミュニティを目的とした「フォートン倶楽部」を発足し、サポーター会議やまちびらきイベントを実施した。その甲斐あって、入居後のいま、掲示板にはさまざまなサークルイベントや同じ趣味を持つ住人を募る張り紙が溢れ、施設内のコンビニには住民手作りの作品が展示・販売される。エントランスに着く幼稚園の送迎バスを待つ奥さまたちが仲良く談笑する姿は、とても入居1ヵ月も経っていないマンションとは思えない光景だ。

 こうした地道な努力が奏功し、「フォートンヒルズ」は順調な売れ行きをみせた。03年3月の販売開始からこれまでの総来場組数は6,000組。販売戸数888戸に対し、総登録件数1,500件。最高倍率25倍、平均倍率1.7倍で全期即日完売した。購入者は30歳代のファミリー世代が半数だが、環境の良さを評価した60歳代以上の購入者も15%にのぼっている。専有面積は60平方メートル~110平方メートル。価格は2,538万円~5,938万円。駅からのアクセスにやや難があるが、決して高い値付けではない。得がたい環境を考えれば、むしろ割安感もある。最新マンションらしく、保存林周囲も含めたゾーンセキュリティは万全。メディカルルームや託児施設、多目的ルームなどを備えた共用棟なども十分すぎる充実ぶりだ。

「この物件に出会えてよかった」杉浦社長も感無量

 「フォートンヒルズ」竣工発表会には、杉浦重厚社長ほか、首都圏事業本部の幹部が勢揃いした。実は、同物件の販売説明会にも今回出席した幹部が揃って記者会見しており、同社のこの物件にかける意気込みが半端ではないことを表している。
 杉浦社長は、席上次のように語った。「モノ作り、コミュニティー作りなど、フォートンヒルズは、わが社のマンション作りに対する基本的な考え方が集約されている。私は今まで、いろいろな物件を手がけてきた(注:藤和不動産は創業以来プロパー社長がいなかった。杉浦社長は同社初のプロパー社長であり、分譲マンション一筋)が、こんな物件に出会えて本当に良かった」。

 記者は、同社のマンションを取材し始めてまだ10年強に過ぎないが、その10年間に分譲された同社のマンションの中で、「フォートンヒルズ」は間違いなくナンバー1の物件だろうと断言する。もちろん、「フォートン」はあの立地があってこそという部分もあるが、数々の制約を乗り越えて、その立地のポテンシャルを最大限(以上)に生かせる企画を生み出した藤和不動産の大英断は褒めて然るべきだ。こういうマンションを世に送り出した経験は、今後のマンション企画に必ずや生きてくるだろう。(J)

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