記者の目 / 開発・分譲

2008/3/24

桜に抱かれた都市型戸建て

三井不動産、武蔵野市で2年半ぶりの供給

 1990年代後半から「都市型戸建て」ブームを牽引し、同市場におけるトップブランドとして君臨してきたのが、三井不動産(株)の「ファインコート」シリーズ。同シリーズが、もっとも得意としている供給エリアの一つが「武蔵野」エリアだ。近年は用地取得が難しく供給が途絶えていたが、今回、実に2年半ぶりとなる「ファインコート武蔵野桜堤ブロッサムレジデンス」(東京都武蔵野市)を供給した。その名の通り、桜に包まれたロケーションが最大のウリ。周辺マンションと競合する価格設定も絶妙で、人気を呼びそうだ。

「ファインコート武蔵野桜堤ブロッサムレジデンス」メインエントランス。2本の桜の大木がめだつ。その両側は提供公園となっており、そこにも時期をずらして咲いていく様、種類の違う桜の樹が植えられる。
「ファインコート武蔵野桜堤ブロッサムレジデンス」メインエントランス。2本の桜の大木がめだつ。その両側は提供公園となっており、そこにも時期をずらして咲いていく様、種類の違う桜の樹が植えられる。
十分な植栽に彩られたエントランス脇の「はなもも公園」
十分な植栽に彩られたエントランス脇の「はなもも公園」
「ファインコート武蔵野桜堤ブロッサムコート」のまち並み。建物は淡い色彩でまとまられ、外構にはクラシックレンガを多用。団地内道路は、一部をインターロッキングとしている
「ファインコート武蔵野桜堤ブロッサムコート」のまち並み。建物は淡い色彩でまとまられ、外構にはクラシックレンガを多用。団地内道路は、一部をインターロッキングとしている
各住戸に設置されている防犯カメラ。駐車場や玄関脇に人が立ち入ると、フラッシュライトが点滅し、録画を開始する
各住戸に設置されている防犯カメラ。駐車場や玄関脇に人が立ち入ると、フラッシュライトが点滅し、録画を開始する
モデルルームのリビングダイニング。1階はすべて防犯サッシュとしているほか、掃き出し窓は電動シャッターも完備する
モデルルームのリビングダイニング。1階はすべて防犯サッシュとしているほか、掃き出し窓は電動シャッターも完備する
モデルルーム主寝室。専有面積に限りがあるため、小屋裏収納、下屋裏収納といった容積率に不算入の収納を多く設置
モデルルーム主寝室。専有面積に限りがあるため、小屋裏収納、下屋裏収納といった容積率に不算入の収納を多く設置

仙川と築樋による天然の「城郭」

 同物件は、JR中央線「東小金井」駅徒歩13分、同「武蔵境」駅からバス15分、最寄りバス停留所徒歩1分に立地する、総戸数24戸の建売団地。開発地は駐車場として使用されていたもので、2年前に取得。すでに、全住戸が完成している。

 人気の高い、いわゆる「武蔵野」と呼ばれるエリア(武蔵野市、三鷹市、国分寺市)は、環境、教育、治安といった「まちのレベル」が高く、それだけに開発規制も厳しい。
 ファインコートシリーズは「経年優化」(時を経るほど価値が上がる)を合言葉に積極的に供給を続け、これまでに100戸以上の実績がある。その多くが、建物はもとより外構にも力を入れており、高人気で即日完売している。ただ、近年は用地取得が難しく、供給が途絶えていた。今回の「桜堤」は、武蔵野市内としては実に2年半ぶりの供給だという。

 桜堤エリアは、江戸時代に全国から2,000本の桜が取り寄せられ、玉川上水沿いに植樹されたことを由来とするまち。同団地の前にも、桜の大木が3本並んでいる。
 今回の開発地は、その敷地形状に大きな特徴がある。敷地東面を除く三方が仙川と築樋(つきどい=起伏の大きい場所に水を通すときに用いられた土木工法。赤土を盛ってつき固め、土手を築き、そこを用水路としたもの)に囲まれており、まるで「城郭」のような天然の塀になっているのだ。

そこで、同団地では、東側の桜2本の間をまちのエントランスとし、仙川と築樋に向けて建物を並べた。これにより、車や人の通りぬけができない、自然を利用したセキュリティを実現している。また、エントランス脇の提供公園は、あえてエントランスを取り囲むよう2分割。桜の大木とともに、グリーンベルトを形成し、エントランスに潤いを持たせている。
 まちなみ形成には、4人のデザイナーを採用。街区道路の要所にインターロッキング舗装を施し、オランダ煉瓦を使った外構設計を実施。建物は、桜と緑と調和するような淡い色づかいでまとめている。

地形との相乗効果生むセキュリティシステム

 武蔵野市の最低敷地面積規制に対応するため、敷地面積120~136平方メートルとし、建物は全戸木造2階建ての4LDK、2×4工法(施工:東急ホーム(株))、専有面積95~100平方メートルと、非常にコンパクトな造りだ(第1種住居専用地域で建ぺい率が40%、容積率80%のため)。

 住戸の最大の特長は、全戸に標準装備された「監視カメラ」だ。

 このカメラは、エントランス横、カーポート・サイクルポートの上部に設置されており、道路とエントランスに向いている。カメラにはセンサーが内蔵されており、人がカーポートや玄関付近に立ち入ると、それを威嚇するようにセンサーライトが点滅。同時に、30秒前まで遡り、録画を開始する(在宅中は解除も可能)。録画データは保存されるので、留守中の様子が確認できるほか、オプションとして10万円追加すれば、携帯電話への送信もできる。もちろん、建物1階のガラス窓はすべて防犯ガラスだ。

 この監視カメラにより、まち中の道路すべてを監視体制に置くことができ、期せずしてタウンセキュリティが構築されることになる。一方、前述したような敷地形状も相まって、一戸建てでありながら、大規模マンションなみのセキュリティ体制を享受できる。

住宅設備仕様が高く、マンションとも競合可能

 設備機器は、これまでのファインコートシリーズ以上に充実させた。全住戸とも、高効率ガス熱源機「エコジョーズ」と、ミストサウナ付き浴室乾燥機を装備。ほか床暖房、食器洗い乾燥機、1階サッシュの電動シャッター、キッチンバックカウンターなどが標準となり、新築分譲マンションに設備水準で見劣りしないレベルである。

 LDKの設計も、アイランドキッチンによる開放感を出したものや、DK独立型などバリエーションを持たせている。また、専有面積に限りがあるため、容積に参入されない小屋裏収納や下屋裏収納、畳下収納といった収納を充実させている。ただ、建具等がややチープさを感じさせるものだったのが残念だった。

 さて、販売価格だが、7,180万~7,690万円。最多価格帯は、7,500万円台だ。道路を挟んだ正面で、某ディベロッパーによる大規模マンションが分譲されているが、このマンションが坪単価240万円台である。つまり、専有面積で比較すると、ほぼ同価格帯となるのだ。マンション並みのセキュリティと設備が備わっているだけに、人気が出そうである。

 すでに同団地は、1期・2期販売合せて15戸が売りに出され、12戸が販売済み。年明けから事前案内を開始し、これまでに200件の反響と100組の来場者を得ている。間もなく、桜の季節。同団地にとっては、最高の季節がやってくるに伴って、売れ行きも加速しそうである。(J)

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2024年5月号
住宅確保要配慮者を支援しつつオーナーにも配慮するには?
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2024/4/5

「月刊不動産流通2024年5月号」発売開始!

月刊不動産流通2024年5月号」の発売を開始しました。

さまざまな事情を抱える人々が、安定的な生活を送るために、不動産事業者ができることとはなんでしょうか?今回の特集「『賃貸仲介・管理業の未来』Part 7 住宅弱者を支える 」では、部屋探しのみならず、日々の暮らしの支援まで取り組む事業者を紹介します。