記者の目 / 開発・分譲

2008/5/29

藤和不動産、コンパクトマンションで攻勢

新コンセプトと常設モデルルームでニーズ取り込む

 分譲マンション市場において、着実にシェアを拡大してきたのが「コンパクトマンション」だ。ワンルームとファミリーの中間領域にあるコンパクトマンションは、都市型立地を中心に、DINKSや女性ユーザーの支持を集めてきた。しかし、ここ数年は、用地価格の高騰もあり魅力的な物件が少なくなっているのも事実。そこで、コンパクトマンションの魅力を再考し、ニーズを取り込もうと、新たな戦略を打ち出したのが藤和不動産(株)。ユーザーの求める要素を商品企画の必須条件としたコンパクトマンションの新プロジェクト「Tokyo Lover’s Selection」をスタート。新宿に常設モデルルームを設けて、同コンセプトのマンションを継続的に供給していく。

「BELISTAギャラリー新宿」エントランス。「Tokyo Lover’s Selection」をコンセプトとしたコンパクトマンション情報を継続して発信する常設モデルルーム
「BELISTAギャラリー新宿」エントランス。「Tokyo Lover’s Selection」をコンセプトとしたコンパクトマンション情報を継続して発信する常設モデルルーム
「BELISTA椎名町」完成予想図。病院跡地に建設されるもので、周辺は閑静な戸建住宅街
「BELISTA椎名町」完成予想図。病院跡地に建設されるもので、周辺は閑静な戸建住宅街
「BELISTA椎名町」モデルルーム。リビングに隣接した洋室は、収納間仕切りとして一体化。開放感を演出した
「BELISTA椎名町」モデルルーム。リビングに隣接した洋室は、収納間仕切りとして一体化。開放感を演出した
「BELISTA椎名町」のヌックカウンター。通常のキッチンカウンターより低い位置にあるので、キッチンテーブルやワークスペースとして使うことができる
「BELISTA椎名町」のヌックカウンター。通常のキッチンカウンターより低い位置にあるので、キッチンテーブルやワークスペースとして使うことができる
「BELISTA新御徒町」完成予想図。モノトーンの落ち着いた外観
「BELISTA新御徒町」完成予想図。モノトーンの落ち着いた外観
「BELISTA新御徒町」モデルルーム。オプションとはなるが、スモーク処理されたガラス間仕切りがおしゃれ
「BELISTA新御徒町」モデルルーム。オプションとはなるが、スモーク処理されたガラス間仕切りがおしゃれ
両物件とも、コンパクトマンションとしては水回りにゆとりを持たせたほか、ユニットバスはミストサウナ付き
両物件とも、コンパクトマンションとしては水回りにゆとりを持たせたほか、ユニットバスはミストサウナ付き
女性ユーザーも多いことから、セキュリティを強化。すべての開口部に防犯センサーを設置。携帯電話による遠隔操作も可能なセキュリティシステムを導入している
女性ユーザーも多いことから、セキュリティを強化。すべての開口部に防犯センサーを設置。携帯電話による遠隔操作も可能なセキュリティシステムを導入している

売れるための「3つの条件」課す

 同社がスタートした「Tokyo Lover’s Selection」は、「利便性の高い暮らしを、東京で楽しみたい」というユーザーのこだわりを満たすマンションを供給していこうというプロジェクトで、シングル、DINKS、女性ユーザーをメインターゲットにしたコンパクト系マンションを提案していく。

 とはいえ、間取り(面積)だけが「コンパクト」では、ユーザーの厳しい選択眼にはかなうわけもない。継続して供給していくためには、「立地」(Place)、「商品企画」(Plan)、「価格」(Price)といういわゆる「3P」に、それなりのハードルを課す必要がある。そこで同社は、入口となる「用地選定」について、3つのハードルを課した。

 第一条件は「東京23区内」。ビジネスやレジャーで都心をアクティブに動き回るコンパクトマンションユーザーにとって、東京郊外や他県という立地は大きなマイナス要素に写る。一見大したハードルではなさそうだが、都心部の用地価格が高騰し続けるなかでは、用地をコンスタントに取得するのは難しい。だが、この条件を外せば立地はどんどん遠隔化し、売行きは当然悪くなる。

 次は「駅から徒歩5分以内」。これも、前出の条件と同じ。とくに、働く女性にとっては、駅に近いというのは重要なファクター。駅からの距離があっては、夕食の買い物を持って歩く時間も長くなる。また独身女性であれば、「夜のひとり歩き」の時間は、短いに越したことはない。

 最後が「商店街や公園が身近にある、落ち着いた住環境」。駅から近ければ、原則的に商店街も近いが、「賑わいのある」商店街というのは、23区でも数少ない。また、繁華街が近すぎると住環境は悪くなるし、駅に近い所に公園がある場所はあまりない。ということで、これも結構高いハードルだ。

 この3つのハードルを越えるのは至難の業である。だが、逆に考えれば、これらのハードルを越えた商品であれば、「立地」上は間違いなく売れる商品となる。もちろん、商品企画についても、間取りや内装類の作り込みやグレード感の向上等により、買い意欲を増す工夫をしている。これらは、後段で説明したい。

「広域集客」「コスト軽減」狙った常設モデルルーム

 同社は、「Tokyo Lover’s Selection」のスタートにあたり、JR「新宿」駅前のビルに、常設モデルルーム「BELISTAギャラリー新宿」(東京都新宿区)を開設した。新コンセプトによるコンパクトマンションの供給が継続すること、コンパクトマンションを求めるユーザーは首都圏全域にいること、さらにさまざまな物件を比較する広域回遊性への対応、そしてビジネスに多忙なユーザーにとって、会社近くのターミナルで、夜遅くまで商談に応じる体制づくりが必要、といった理由からの設置である。

 ギャラリーでは、2タイプのモデルルームを設置し、複数物件を併行して紹介するほか、予約制を採ることで、営業時間外(10時~18時)でも商談に応じている。

 「40~50戸規模のコンパクトマンションを通常のモデルルームで販売しても、集客力には限界があります。常設モデルルームを持ち継続的にプロモーションすることで、認知度とブランド力もアップしていきます。また、専門スタッフを集約することで、彼らのスキル向上にもつながりますし、結果として営業コストも低減することができます。建設地を直接案内するのは難しいですが、インターネットを使った現地案内等でフォローしていきます」とは、同モデルルームを担当する、首都圏事業本部第三事業部課長・宇都宮 高明氏。

第1弾は「椎名町」と「新御徒町」

 ギャラリー開設と同時に販売を開始したのは、「BELISTA椎名町」(東京都豊島区)と「BELISTA新御徒町」(東京都台東区)の2物件だ。

 「椎名町」は、西武池袋線「椎名町」駅徒歩5分に立地する、地上7階建て・総戸数42戸のマンション。現地は、商店街から一歩入った戸建中心の住宅街で、公園も現地周辺に点在する。建物は、三方を道路に囲まれたスクエアなフォルム。1つだけ奇異な点は、南側に全く窓のない建物であること。これは、隣接する低層住宅への民法上の配慮(観望権)だという。幸い、低層住宅街のため、日照への問題はほとんどないが…。

 住戸はワンルーム~2LDKの13タイプ、専有面積は40~65平方メートル。ギャラリーに設けられたモデルは、シングル・女性をターゲットとした、専有面積40平方メートルの1LDKタイプ。リビングに隣接する洋室を多目的家具を間仕切りにして一体化しており、専有面積の割に広めのスパンも相まって開放感がある。また、キッチンカウンターは幅広で低位置にある「ヌックカウンター」としており、ダイニングテーブルとして利用できる。カラーリングは、シングル向け物件に多い奇抜な色づかいは避け、アイボリーホワイトでまとめており、収納の充実や広めに取られた水回りと相まって、女性に人気が出そうなプランにまとまっている。唯一、気になるとすれば、容積対策で2,400ミリしかない天井高と、それに伴い1,800ミリとなったサッシュか。

 一方の「新御徒町」は、つくばエクスプレス「新御徒町」駅徒歩5分に立地する、地上14階建て・総戸数39戸のマンション。現地は、メインストリートである「春日通り」から奥まった古くからの住宅街で、商店街にも近い。建物は、下層部は黒、上層部に白を基調としたモノトーンで、ガラスバルコニーを効果的に使ってモダンさを演出している。

 住戸は、全フロア共通の3タイプで、専有面積42、43平方メートルの1LDKと、58平方メートルの2LDK。ギャラリーのモデルルームは、DINKS利用を想定した58平方メートルの2LDKだ。「椎名町」とは正反対のダークブラウンを基調としたインテリアデザイン。クリアガラスを用いた大型の引き戸で、見た目の広さを演出している(もちろんオプションだが…)。また、大型のシューズインクロークが使いやすそうだった。

 両物件とも、最低面積40平方メートルを確保してワンルームでは飽き足らないユーザーのニーズにこたえているほか、ミストサウナ、床暖房、携帯電話と連動したホームセキュリティなど、都市型生活を充実させる設備を標準化し、商品力を高めた。

坪単価は300万円以下、今期は3物件を供給

 さて、予定販売価格だが、「椎名町」は3,200万円台~4,100万円台。「新御徒町」は3,500万円台~5,100万円台。いずれも、坪単価にして約280万円だ。コンパクトマンションを求めるユーザー(とくに女性)の懐具合を考えれば、グロス価格は3,500万円~4,000万円が限界だろう。そう考えると、両物件とも高くはないし、むしろ買い得感すらある。

 反響も上々で、ゴールデンウィーク明けからの完全予約制による来場者だけで120組を数えている。今期は、あと1物件(最寄りは、東急大井町線「中延」駅)、来期も1物件(東急池上線「戸越銀座」駅)の販売が確定しており、年間3物件程度をコンスタントに供給していく方針だ。(J)

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