MISAWA・internationalが「HABITA」を公開
「スクラップ&ビルド」という言葉は、もはや死語なのかもしれない。 2006年、「自由民主党政務調査会住宅土地調査会」(会長・福田康夫氏)の中間とりまとめの中で「200年住宅」という言葉が初めて使われた。以来、各住宅メーカー、住宅・建築業界とも、その実現、普及に向けて着々と準備を進めている。その200年住宅の事業化に早くから取り組んできたMISAWA・international(株)(東京都新宿区、代表取締役・三澤千代治氏)が、同社の200年住宅商品「HABITA」のモデル住宅を千葉県山武市に完成させ、報道陣に公開した。200年という長きにわたり住まいとしての機能を維持できる住宅は、これまで一般的とされてきた住宅とは何が違うのだろうか。






太い柱・梁、そして陳腐化しないデザイン
今回公開されたモデル住宅は、JR総武本線「日向」駅徒歩約30分の美杉野住宅団地内「さんぶの杜」にて建設されている。山武市は九十九里海岸も含む、自然溢れる地で、田舎暮らしを望まれる方だけではなく、都心まで約50~70kmという立地から、都心通勤者で自然豊かなところで生活したい、と考えるユーザにも支持されるエリア。同社はこの地に、「岩瀬牧場」「出居家」「SORA・MADO」の3つのモデルを完成させた。
三澤社長は、200年にわたる超長期住宅を実現するポイントとして、『耐久性、耐震性、断熱性等の建物の基本性能の高さ』、『住まいを維持保全していくための仕組み』、『次世代に継承したいと思われる快適な空間や質の高いデザイン』を挙げている。
まず、『基本性能の高さ』。大断面木構造を採用、構造材である柱・土台に5寸角(15cm)の木材を採用。梁は5寸×1尺(15cm×30cm)と、さらに太いものを採用している。「現存している古民家の多くが5寸角の柱。太い柱、土台であれば、耐震性能はもちろん、耐火性能もアップする。それゆえ、太い柱・梁を採用した」(同氏)とのこと。ちなみに「HABITA」では、強度アップのために集成材を採用。木材が「くるう」ことによる、建物の傾き、壁の割れを防ぐ点でも集成材が優れているのだという。
次に『住まいを維持保全していくための仕組み』。スケルトン・インフィル(S・I)を採用し、設備を含めて内部はシンプルに構成。「頑丈な構造体さえあれば、たいていのことはできます。床、天井、設備なども含め、自由度が高いのが特徴です。そして、再生しやすいものを採用しました」(常務取締役住宅開発部・石川新治氏)。壁は珪藻土の塗壁とし、健康にも配慮。水回りはもちろん、配線・配管、そして内装も含め、メンテナンス・交換がしやすい設計としたことで、住宅の長寿命化を実現させている。
そして『次世代に継承したいと思われる快適な空間や室の高いデザイン』。「たとえ構造部分がしっかりしていても、『こんな変な家に住みたくない』『こんな陳腐な家はイヤだ』となれば、そこで寿命は終えてしまう。超寿命ということは、デザインが優れているなければならないという大前提がある。頑丈な構造と並んで、当社ではデザイン性を追求した」(三澤社長)。屋根は急勾配、外壁はモルタルかき落としと、奇抜ではないものの、懐かしい、普遍的なデザインを採用している。どのような土地でもまち並みに溶け込むデザインとすることで、資産価値が維持される住宅を実現している。
実際に3棟が並ぶ光景を眺めると、何とも懐かしいような、落ち着くような感覚を覚える。
構造体費用の建築費に占める割合は約25%
今回公開する住宅の価格は、「岩瀬牧場」(施工面積138平方メートル)が2,204万円(税込、以下同)「出井民家」(同138平方メートル)が2,355万円、「SORA・MADO」(平屋、同112平方メートル)が2,360万円。なお、一般的に構造体の費用は建築費の約10%といわれているが、「HABITA」では25%を構造体にかけているという。それだけ住まいの超寿命化には、構造体が重要だということなのだ。
今後同社では、HABITAの販売推進に提携店と手を組み積極的に展開していくほか、100年住宅ローンの実現にも金融機関と取り組んでいく。
「100年ローンは、是非とも09年中には実現させたい。住宅をよくしても、住宅ローンの負担が大きかったら、生活は豊かにならない。ローンの返済期間を倍にすることで、月々の返済金額を半分にすることができれば、その分ゆとりある生活に回していただける」(三澤社長)。
今回実物モデルを拝見して、ふと頭をよぎったのが、小さい頃に行った祖父母の家。太い柱、梁がむき出しの、天井がとても高い、藁葺き屋根の平屋であった。現在はもう建て替えられてしまったが、あの家は、今も存在していたとしても、十分住めたのではないか…と思った。
今回建築された「HABITA」の立派な構造を目にすると、200年、いやもっと長い間、住宅としての使命をまっとうするのは間違いないように思える。
家族が何代にもわたり歴史を、思い出を積み重ねていく住まい。その超寿命化は、「もったいない」思想が根付いている日本人なら、きっと誰もが願うことなのではないだろうか。(RN)