記者の目 / 開発・分譲

2008/10/21

女性をターゲットにした「和風」ホテル

「ヴィラージュ京都」にみる、差別化戦略

 ここ数年、ホテルのなかでも宿泊特化型ホテルの需要が伸びている。また、女性の利用者が増えていることから、女性のニーズに合った仕様やスペックの需要が高まっている。  一般的に宿泊特化型のシステムは、ビジネスホテルで採用されているケースが多いが、先日オープンした「ヴィラージュ京都」(京都市中京区、全81室)は、観光ホテルでありながら、宿泊特化型のシンプルな機能を取り入れた。また、京都をイメージしたおしゃれな内装にすることで、女性に向けてアピールしている。

写真は定員6名までの一番広い部屋、広さは43平方メートル
写真は定員6名までの一番広い部屋、広さは43平方メートル
テレビも部屋に雰囲気に馴染むよう、ワインレッド色を採用
テレビも部屋に雰囲気に馴染むよう、ワインレッド色を採用
充実した食器類に加え、各部屋に電子レンジがあるのは嬉しい
充実した食器類に加え、各部屋に電子レンジがあるのは嬉しい
おしゃれなソファーは実はソファーベッド
おしゃれなソファーは実はソファーベッド
廊下にはかわいい装飾品が
廊下にはかわいい装飾品が
家族連れにはフロントで子供向けアメニティも用意している(内容はスリッパ、歯ブラシセット、浴用スポンジ)
家族連れにはフロントで子供向けアメニティも用意している(内容はスリッパ、歯ブラシセット、浴用スポンジ)
ロビーも落ち着いた雰囲気
ロビーも落ち着いた雰囲気
「ヴィラージュ京都」外観。周囲には競合が多い
「ヴィラージュ京都」外観。周囲には競合が多い



■宿泊特化型の観光ホテル


 「ヴィラージュ」シリーズは、住友不動産グループが展開するリゾート・観光ホテル。昨年末にリニューアルした「ヴィラージュ伊豆高原」(静岡県伊東市、全91室)に続いて「ヴィラージュ京都」が、10月1日にオープンした。
 同ホテルは、阪急京都本線「大宮」駅、京福嵐山線「四条大宮」駅より徒歩1分と京都市内の観光に便利な地に位置する。

 同社が、都心に15ヵ所でチェーン展開している宿泊特化型のビジネスホテル「ヴィラフォンテーヌ」シリーズにおいて培ったノウハウを生かし、ヴィラージュ京都も観光ホテルという位置づけでありながら、同様の形態を採用している。具体的には、朝食付きの料金設定、サービス料無し、婚礼・宴会場は付帯しない、レストランを持たない、などだ。
 同ホテル支配人の實川裕樹氏は「シンプルなサービス、低料金であることで若い方を中心に支持をいただいております。実際、伊豆高原でもリニューアル後、同様のシステムを採用していますが稼働率が上がりました。サービスを限定することで、人件費なども最小限に抑えることができます」と語っている。


■女性の感性に訴える!和風モダンなデザインに


 同ホテルのターゲットは友人同士のグループ客や家族連れ。なかでも女性グループ客をメインターゲットにしている。

 そこで同ホテルでは、「女性の感性」に響くよう、建物全体のデザイン、インテリア、小物にこだわりをみせている。テーマは“地域性”を大切にし、京都ならではの「和」を採用。ブラック、オフホワイト、ワインレッド、カーキなどの色を基調に、エントランス、各部屋、すべて和モダンに仕上げている。

 また、ホテルとしてはめずらしく、全室で和室の畳部屋を採用。インテリアや雑貨も和を意識したものがちりばめられており、なかでも唐草模様のソファーは部屋のアクセントとなっている。


■自由に部屋を使える「布団」を採用


 そして、実はこのソファー、シングルサイズのマットレスに変化するソファーベットなのだ(詳しくは右写真参照)。就寝時にはこの上に宿泊客自身が布団を敷く仕組み(別途マットレスも有)。
 一見面倒な気もするが、大人数の友人グループや小さい子供のいる家族連れなどは、型にはまったベッドよりも自由気ままなスタイルで寝られることのほうがかえって便利のように思う。
 ちなみに敷き布団・掛け布団・枕は、すべてシーツ・カバーがかかっている状態で押入にあるので、単純に「敷く」だけ、というのがまたいい。連泊の際は、そのまま外出すれば、元の状態にベッドメイクならぬ、布団メイクしてくれる。

 客室タイプは4種類。各部屋に宿泊できる利用人数も1~6人と幅広く、ルームチャージ制であることから、定員人数で泊まればかなりの格安料金で宿泊ができる。例えば、一番広い部屋で定員6名、一泊1万7,000円(オープンニング特別価格)だが、これを6名で利用すれば一人当たり2,834円となる。この価格で、観光至便な場所に泊まることができるとなると、若者グループや家族連れには大変ありがたいのではないだろうか。もちろん広い部屋で一人、贅沢にくつろぎたい場合などにも活用できるだろう。
 1番多い部屋タイプが5名まで宿泊できる35平方メートルで全36室、一番狭い部屋タイプである23平方メートルでも3名まで宿泊可能だ。

 また、共用施設として1階には大浴場を完備。残念ながら露天風呂はないのだが、「京都観光で疲れた体を大きなお風呂でゆっくり休んで頂きたい」(實川氏)という思いが込められている。
 加えておもしろいのが、朝食のシステム。前述のとおりもちろん無料なのだが、なんと各部屋にお弁当を配布してくれるのだ。しかもチェックイン時に希望時間(AM7時~10時)まで聞いてくれる。


■ウェブを初めとした、メディア戦略が今後の課題


 ヴィラージュでは、ウェブ集客において宿泊予約サイトは利用しておらず、自社サイトのみで受付している。
 現在多くのユーザーが宿泊予約サイトを利用しており、なかでもヴィラージュ京都のターゲット層とする20~30歳代は利用率が高いはず。しかも同ホテルは競合相手が多くいるエリア(実際にお隣、道路はさんで向かいは某有名ビジネスホテルが立地)で、どうPRしていくのか、どう優良顧客を囲いこんでいくのかが今後の課題になるだろう。(umi)

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