記者の目

2009/3/4

永く使える、変えられる。暮らしのためのプレーンな「器」

「木の家」「窓の家」に続く新商品「無印良品 朝の家」を見る

 福祉・健康から子育て、環境共生、防犯などに積極的に取り組み、各方面から注目を集めている一大開発地「ユーカリが丘」(千葉県佐倉市)。その地に、ムジ・ネット(株)が山万(株)と共同で「無印良品 朝の家」の分譲販売物件2棟を完成させた。  同社は、2004年10月に「木の家」、07年4月に「窓の家」を発売。今回、第3弾として新たに発売する「朝の家」は、普遍性にこだわり“あえてデザインしないデザイン”を採用した、簡素で簡潔な住宅だ。その物件についてレポートする。

まち並みに馴染むよう、奇をてらわない普遍性のあるデザインを採用した「朝の家」外観。フレームレスのバルコニーが特徴
まち並みに馴染むよう、奇をてらわない普遍性のあるデザインを採用した「朝の家」外観。フレームレスのバルコニーが特徴
装飾を省いたシンプルな玄関。庇もいたってシンプルだが、防錆効果の高いZAM鋼板を使用しており、耐久性の高い仕様となっている
装飾を省いたシンプルな玄関。庇もいたってシンプルだが、防錆効果の高いZAM鋼板を使用しており、耐久性の高い仕様となっている
キッチンから見たセンターダイニング。夕食後、父はリビングで読書、母はキッチンで家事、子供はダイニングで宿題といった具合に、多くの時間を共有できる仕掛けに
キッチンから見たセンターダイニング。夕食後、父はリビングで読書、母はキッチンで家事、子供はダイニングで宿題といった具合に、多くの時間を共有できる仕掛けに
ドアやサッシはすべて天井ぎりぎりの高さのものを採用。余計な隙間や線をつくらないよう、内装でもシンプルさを追求した
ドアやサッシはすべて天井ぎりぎりの高さのものを採用。余計な隙間や線をつくらないよう、内装でもシンプルさを追求した
広めのスペースを家族で共有して使う「ファミリークローゼット」。収納を個室に分散させ、書斎やオーディオルームなどに転用することも可能
広めのスペースを家族で共有して使う「ファミリークローゼット」。収納を個室に分散させ、書斎やオーディオルームなどに転用することも可能

誰にでも、どこででも受け入れられるシンプルさを追求

 無印良品の家3タイプに共通するのは、「永く使える、変えられる」という基本コンセプトと、頑強な柱と梁で支えるSE構法、高性能な断熱材で覆う外断熱工法を採用している点だ。違いはデザインにある。

 吹抜けがある開放的な一室空間の木造住宅「木の家」は、「永く使える、変えられる」というメッセージを強く発信するために、従来の家の概念を打ち破る斬新なデザイン。「窓の家」は、窓を付けたい場所に、壁を切り取るように窓を開けることを可能にしたデザインを採用した。

 そして今回の「朝の家」は、いつでも、誰にでも、どこででも受け入れられるよう、できる限り装飾を取り除き、まち並みに馴染む普遍性のあるデザインとした。
 例えば食器など、模様も何もないごくシンプルなものほど、結局は長く使っているもの。また、盛り合わせた料理も、真っ白で飾り気のない皿の上だと、素材の色が映えて美味しそうに見える。それと同じで、家も余計な装飾をせず、奇をてらわないものこそ飽きがこない、という結論に至り、あえて“デザインしないデザイン”を採用したという。

 エクステリアを見ると、そのシンプルさがよくわかる。
 まず、バルコニーにはフレームがない。建物のデザインを邪魔しない、目立たないデザインを究めるためだ。玄関ドアは、無駄な装飾を省いた断熱アルミドアを採用。断熱性と気密性には優れているが、見た目はいたってシンプル。まち並みとの調和を第一に考え、主張しない、ごく控え目で簡素な「家の原形」そのものだ。

良質な親子関係を育みやすい、子育てしやすい仕掛け

 もう一つ、「朝の家」には大切なテーマがある。それは、親子のコミュニケーション。
 例えば、玄関から廊下と階段を経て、直接子供部屋につながる仕様だと、子供がいつ帰ってきたのか、何をしているのかがわからず、どうしても目が行き届かなくなって会話が滞ってしまう。それを回避すべく、同社が打ち出したのが「センターダイニング」という考え方だ。

 センターダイニングとは、キッチン、ダイニング、リビングをまとめた一つの空間(DKリビング)に家族が集まり、それぞれ思い思いのことをして過ごすという考え。これは、同社が行なった住まいに関するアンケートで、「夕食後はどこで過ごすか」という問いに対し、「父はリビング、母はキッチン、子供はダイニングで過ごすことが多い」という結果からヒントを得たという。夕食後、同じ空間内で自然と家族が寄り集まり、多くの時間を共有できる仕掛けをつくった、とのこと。
 なお、用意している60プランはすべて、玄関を入ると必ずセンターダイニングを経由してからでないと2階の個室には進めない造りとなっている。

 また、「朝の家」では各個室にクローゼットを設けず、広めの収納スペースを家族で共有して使う「ファミリークローゼット」という考え方を採り入れている。一つの場所に収納することで個室も広く使え、何より家族のコミュニケーションを生む場ともなる。
 さらに、子供が大きくなってスペースが余ったら、書斎やオーディオルームに転用することも可能なのだとか。家族の成長、暮らしの形に合わせて自由に変えられるよう、コンセントや照明器具もあらかじめ取り付けられているという。

 核家族化が進み、両親が共働きの家庭も少なくない昨今、親子のコミュニケーションは大きな課題だ。「朝の家」は、設備や装置に頼ることなく、空間を利用して自然と会話が生まれ、子育てしやすい家をめざしたという。
 「始まりの家」を意味する「朝の家」というネーミングには、一日が始まるという意味のほかに、親子のコミュニケーションを通して、あらためて家族の営みが始まる、という思いも込められている。

住まい手が色を付ける、色のない「器」

 「木の家」「窓の家」は、すでに200棟の注文が入っており、150棟が竣工しているという。1月から予約制の見学会を開催している「朝の家」も、来場者数は50人を超え、好調な滑り出しをみせている。
 なお、今回分譲する2棟であるが、「7-23-5棟」は、DKリビング+洋室2+ファミリークローゼット+1WICLで4,525万円、「7-23-6棟」は、DKリビング+洋室3+ファミリークローゼットで4,792万円。

 「“朝の家”は、家族の成長に合わせて空間を自由に変えられるよう、プレーンな器でありたい。色のない器に、それぞれの家族の個性やカラーを打ち出していってもらえれば」と語るのは、同社住空間事業部開発担当部長の川内浩司氏。
 「永く使える、変えられる」というコンセプトどおり、時を重ね、暮らしに合わせて形を変えながら、住み継がれる家となるか、注目したい。( I )

【関連ニュース】
無印良品の家第3弾「朝の家」を発表/ムジ・ネット(2009/2/16)
新商品「無印良品 窓の家」発売/ムジ・ネット(2007/3/30)
ムジ・ネット、「木の家」をリニューアル(2006/4/20)

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