記者の目 / 開発・分譲

2009/4/24

1棟まるごとリノベーション、敷地内の環境・コミュニティも再生

リビタ、「リノア赤羽」の内覧会を開催

 リノベーションビジネスのリーディングカンパニーである(株)リビタがかねてより取り組んでいたプロジェクト、「リノア赤羽」(東京都北区、世帯数39戸)が竣工した。  最新設備の導入によるバリューアップを実施、自由設計ができる部屋も用意し、分譲(現在は完売)。「森のリノベーション」や「無印良品+リビタリノベーションプロジェクト」の第1号実例もあり、盛りだくさんの内容となっている。今回は同物件のプレス向け内覧会が開催されたので、詳しくレポートする。

リノベーション前の「リノア赤羽」外観。築17年の社宅だった
リノベーション前の「リノア赤羽」外観。築17年の社宅だった
リノベーション後の「リノア赤羽」外観。再塗装して落ち着きあるデザインに
リノベーション後の「リノア赤羽」外観。再塗装して落ち着きあるデザインに
リノベーション前の1階共用部。廊下の壁に沿って自転車置き場が設置されていた
リノベーション前の1階共用部。廊下の壁に沿って自転車置き場が設置されていた
共用廊下の腰壁を取り払い、居住者同士のコミュニティスペースとなった1階共用部。自転車置場は移設した
共用廊下の腰壁を取り払い、居住者同士のコミュニティスペースとなった1階共用部。自転車置場は移設した
リノベーション前の居室内
リノベーション前の居室内
一番オーソドックスなタイプといえる「プラスリノベーションコース」で仕上げられた居室
一番オーソドックスなタイプといえる「プラスリノベーションコース」で仕上げられた居室
森の入口として整備・新設した階段
森の入口として整備・新設した階段
入居者イベントの様子。森の中に新設したデッキテラスを塗装したり、森の勉強会を実施
入居者イベントの様子。森の中に新設したデッキテラスを塗装したり、森の勉強会を実施

●入念な「デューデリジェンス」実施で他社と差別化

 「リノア赤羽」は、地方銀行の社宅だった築17年の建物を1棟丸ごとリノベーションしたもの。リビタが手がけた1棟丸ごとリノベーションでは9棟目となる物件だ。
 JR京浜東北線・埼京線・湘南新宿ライン・高崎線・東北本線「赤羽」駅徒歩9分。鉄筋コンクリート造地上5階塔屋1階建て、敷地面積1,974.52平方メートル、専有面積約68平方メートル。外構計画含めて共用部のデザイン企画・監修は(株)ブルースタジオ。

 外観は外壁タイルに再塗装を施し、落ち着きのあるデザインにした。また、エントランスホールは、奥行きが出るよう開口部を拡げ、外部とのつながりや開放感を演出。オール電化やオートロック、宅配ロッカー等を導入し、住宅機能を向上させ、デザインも一新。インターネットやセキュリティ等の最新システムも導入している。

 同社のプロジェクトでは、バブル期に大手ゼネコンによって建てられた、仕様のしっかりした社宅が多く採用し、顧客からは建物の安全面で定評が高いという。
 また、同物件では、購入者の不安を払拭すべく、第三者調査機関による調査・診断(デューデリジェンス)を実施。その診断結果に基づいて、建物の修繕計画を立て、適切な大規模修繕を行なったことで、既存住宅性能評価A判定を取得。資産価値を高めたことで、他社との差別化を図っている。

●ライフスタイルに合わせて選べる3つのコンセプトプラン

 もとの住戸はいわゆる田の字型の3LDK。これに「プラスリノベーションコース」「フリーリノベーションコースA」「フリーリノベーションコースB」の3種類のコースを用意、購入者の選択にもとづきリノベーションを実施していく。

 「プラスリノベーションコース」は、既存の間取りをベースに内装材、設備機器をリニューアルしたもの。一見すると3LDKプランでも、来客の場合は和室の襖を開放して、ワイドリビングのある2LDKにするなど、柔軟に対応することができる。

 「フリーリノベーションコースA」は、プロのインフィルスタイリストと共に、間取りの変更、内装仕様の打合せを行ない、指定商品から気に入ったものを選択できる、というもの。「プラスリノベーションコース」に比べて250万~300万円程度の追加費用をかけた人が多かったという。

 「フリーリノベーションコースB」は、ブルースタジオが設計を担当し、間取りから内装仕様、住宅設備まで、カスタムメイドの自由設計が行なえるというもの。「プラスリノベーションコース」に比べて400万円程度の追加費用をかけた人が多かったという。見学した1階のこのコースの部屋は、入口の脇の腰高のサッシを、全開口のサッシに変更し、室内の土間と共用廊下がつながっていた。土間は共用廊下と直結しているため、趣味のスペースとしても活用できる。また、従来から1階住戸前にある、薄暗い自転車置場は、整備してプライベートガーデンに変更されていた。

 「無印良品+リビタリノベーションプロジェクト」の部屋は、棚や壁など住まいの固定的なものを最小限に抑え、迷路のように回遊することができる間取りとなっている。建具の移動により、住み手の暮らしに合わせて自由に可変する住まいとなっている。

 購入者の半分は、オーソドックスタイプを選択し、残りはフリーリノベーションコースA・Bで半分ずつ位、とのこと。

●居住者同士のコミュニティ空間が好評

 共用部では、住民同士が気軽に利用できる庭として、1階共用部に「出会う庭」を設置した。従来あった共用廊下の腰壁を取り払い、住居側とつなげたことで、開放感のあるコミュニティスペースが生まれている。テーブルやベンチも設けられており、入居者同士のコミュニケーションがとりやすい工夫がなされている。

 また、「リノア赤羽」では、敷地の約25%を既存の森(保存樹)が占めるという類まれな敷地条件を生かし、自然環境の再生も行なっている。新たに階段を設け、階段を登ったところには、デッキテラスを設置。子供たちが遊んだり、住民がピクニックなど楽しめるようにした。
 入居者同士が集まって、デッキテラスを塗装し、ピクニックを行なうイベントを開催するなどして、コミュニティのきっかけづくりを行なっている。

 建物だけでなく、緑豊な敷地内の環境、コミュニティまでも再生できたことは、1棟まるごとリノベーションならでは。住民の暮らしに潤いをもたらすことができ、建物の大きな付加価値になったという。

●新築でも単なる中古でもない“第3の選択肢”

 販売価格は「プラスリノベーションコース」で2,986万~3,998万円。販売単価は1坪当たり171万円。ちなみに周辺の新築価格は坪当たり240~250万円、中古は160万円程度だ。
 リビタでは、新築よりも2割くらい安く、中古よりも少し上の価格をマーケットとして狙ったそうだが、その狙いどおり販売は好調で、9月末から募集を開始し、39戸すべて完売となった。購入者像は、周辺地域に住む第一次取得者が中心だが、約4割が周辺地域以外からと、広域からも集客できているそう。

 「リノベーション住宅は、既存の建物や自然環境を壊さずに再生するため、周辺のまち並みに溶け込みやすく、近隣住民に工事の迷惑をおかけすることも少なくて済みます。
 また、共用部分に、住民同士あらゆる世代の人々が、集い合える空間を設けたことが、お客さまから大変好評いただいています」(同社クリエイティブオフィス シニアコンサルタント PR&コミュニケーションデザイン室マネージャー・土山広志氏)。

 既存建物の長所を生かしてリニューアルされたリノベーション住宅。新築でも単なる中古でもない第三の住宅取得の選択肢として、今後はさらに浸透していくのではないだろうか。(さ)

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・5月5日発売予定の月刊不動産流通2009年6月号
連載「リフォーム、リノベーション、コンバージョンで中古不動産が蘇る![17]」
においても同物件を紹介しております。どうぞご覧ください!

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