記者の目

2009/8/10

個性派別荘とその魅せ方

月刊不動産流通・クロスメディア企画
~あの会社・あの人のアナザーアングル~(2)

 このクロスメディア企画では、当サイトを運営する(株)不動産流通研究所が、毎月5日に発行する不動産ビジネス専門誌「月刊不動産流通」において取材させていただいた方々にご登場いただき、月刊誌の誌面では掲載しきれなかった“あんな話、こんな話”を紹介します。  第2回となる今回は、8月5日(水)に発売した月刊不動産流通2009年9月号「店舗探訪 おじゃましま~す」コーナーにご登場いただいた(株)レイコム(東京都千代田区、代表取締役:江藤厚明氏)が手がけるリゾート地の“個性派”分譲・建売物件についてです。

「中軽井沢ピトレスク」。その名のとおり、ほとんどを無垢材で仕上げた外観は、周囲の景観に溶け込み、まるで「絵画のような美しい空間」をコンセプトに(写真提供:(株)レイコム)
「中軽井沢ピトレスク」。その名のとおり、ほとんどを無垢材で仕上げた外観は、周囲の景観に溶け込み、まるで「絵画のような美しい空間」をコンセプトに(写真提供:(株)レイコム)
テラスのある1階北側窓には、高さ2mのハイサッシを採用し、すばらしい眺望を楽しめるつくりに(写真提供:(株)レイコム)
テラスのある1階北側窓には、高さ2mのハイサッシを採用し、すばらしい眺望を楽しめるつくりに(写真提供:(株)レイコム)
1階北側窓から望んだ冬の「浅間山」(写真提供:(株)レイコム)
1階北側窓から望んだ冬の「浅間山」(写真提供:(株)レイコム)
「中軽井沢ピトレスク」のホームページのトップページ。建築着工から売却時まではライブカメラを通して現地の状況を映像で知ることができる
「中軽井沢ピトレスク」のホームページのトップページ。建築着工から売却時まではライブカメラを通して現地の状況を映像で知ることができる
「現地便り」では写真とともにさまざまな周辺情報を掲載
「現地便り」では写真とともにさまざまな周辺情報を掲載

■□「数世代に渡って愛される別荘を」■□

 レイコムは、東京都千代田区の「番町」エリアという都心部と、長野県の「軽井沢」を中心としたリゾート地の仲介、分譲などを手がけている。

 同社では、元々仲介のみを手がけていたが、「自分たちが住みたい別荘を提供しよう」と、2004年から分譲・建売事業にも着手した。
 物件の設備や性能については、本誌にて紹介しているので割愛するが、本稿では1軒1軒テーマを設け、取り組んでいるデザイン面を紹介したい。

 同事業の第1号物件である「中軽井沢ピトレスク」は、18世紀フランスに生まれた「ピトレスク(Pittoresque)」という芸術文化の思想、“真の美しさや芸術感を大自然の摂理に求める”をテーマに設定。緑豊かなロケーションを生かすため、外壁は唐松の無垢板張り合わせにし、また同地から浅間山が「絶景」であることから、1階北側窓には高さ2mのハイサッシを採用した。

 この物件のほか、夜に室内の明かりを付けると建物全体が“雪洞(ぼんぼり)”のように浮かび上がるよう、外観の格子をスリット状に入れた「ぼんぼりの家」や、風の流れを意識し、建物全体をS字カーブの形状にした「風の別邸」など、計9物件を分譲しており、いずれも売却済みだ。なかには親子2代に渡って愛用されている物件もあるという。
 「こだわりを持った顧客の方々に心の底から『良い!』と共感してもらえ、何世代にも渡って住みつぎたくなるような別荘の提案を心がけています」(江藤氏)。

 このようにデザイン性の高い、個性的な物件を完成させるには、依頼する建築家も重要になってくる。
 そこで同社では、同じ建築家に依頼し続けるのではなく、それぞれの企画に合うであろう建築家を、夫人の玲子氏がその都度調べ上げて依頼している。
 「昔は、社内に建築士を抱えていたこともありましたが、互いに忌憚なき意見をぶつけて、より良質な物件を分譲するためにも、物件ごとにコンセプトに合いそうな建築家を探し、依頼するほうがいいだろう、ということになりました」(玲子氏)。
 その代わり、コンセプトがぶれていかないように、事前に企画のすり合わせを徹底させることが重要だという。

■□建築進行状況をライブカメラで中継!■□

 別荘の分譲には、土地の仕入れから販売までに少なくとも2年はかかるため、土地を仕入れた段階から、首ふりタイプのライブカメラを設置。春夏秋冬、終日物件ができあがっていく様子をホームページ上で放映している。

 「都心の方がリゾート地の暮らしをイメージしやすいよう、ライブカメラ自体は10年前から取り入れています。広い範囲をリアルタイムの映像で見られると好評で、実際、その様子を見ていた方がご購入に至るケースも多い」(江藤氏)。

 なお、前述のとおり、同社の分譲物件は、1軒1軒のオリジナリティが強いため、ユーザーの興味の有無がはっきりしているという。「物件見学にいらっしゃるお客さまも一目見てすぐ帰ってしまう方もいれば、資金調達が厳しいのにどうしても欲しいといって半日ねばる方もいらっしゃいます(笑)」(同氏)。
 建築状況や周辺環境を、事前にホームページ上で詳しく知ることができれば、現地に見学に行った際のギャップが少なく済み、同社・ユーザーともにメリットが大きい。

 ライブカメラ以外にも、ホームページでは「写真速報」や「現地便り」というコーナーで、四季ごとに多くの写真・情報を掲載している。

*****

 物件の供給量が人口を上回る今、物件選択の幅は広がり、今後はより物件にこだわりを持つ顧客層が増えていくと予想する江藤氏。最後に「当社の顧客層は、必ずしも贅沢を望んでいるという訳ではありません。つつましい、エコを意識された暮らしを大切にされており、我々の別荘もその住まい方に合うよう企画を練ってきました。
 しかし、そういった住まい方は、今後都心部でも重視されてくるはず。別荘事業で得た知識やアイディアを、都心部でも生かして形にしていければ…」と夢を語ってくれた。(umi)

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※同社の「二地域居住」への取組みや接客時の工夫内容については、
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