記者の目

2009/10/2

人同士の“つながり”を重視した住宅提案

戸建・マンションそれぞれの取組み事例紹介

 新築物件において、2DKや3DKといった画一的な間取りから、可変性のある間取りを提案するハウスメーカー、ディベロッパー各社が増えている。さらには、居室間の間仕切り壁を減らし、空間を共有させるプランニングも目にするようになってきた。これは自然と家族間のコミュニケーションが育まれることを期待してのものである。  今回は、この空間を共有させた戸建・マンションの見学を踏まえ、その効果を探ってみたいと思う。

「tvkハウジングプラザ横浜」(横浜市西区)にある「RONDINO」モデルハウスの外観。四角のタワーとのびやかに葺き下ろす大屋根が特徴的な、アシンメトリーなデザインを採用
「tvkハウジングプラザ横浜」(横浜市西区)にある「RONDINO」モデルハウスの外観。四角のタワーとのびやかに葺き下ろす大屋根が特徴的な、アシンメトリーなデザインを採用
今回見学したモデルハウス(65.34坪の「typeA」)の間取り図
今回見学したモデルハウス(65.34坪の「typeA」)の間取り図
「スタディコーナー」とエントランスは、のびやかな勾配天井でつなぎ、吹抜けとなっている
「スタディコーナー」とエントランスは、のびやかな勾配天井でつなぎ、吹抜けとなっている
「パークホームズ成増マークレジデンス」外観。敷地の高低差を生かしたランドスケープには、約4
「パークホームズ成増マークレジデンス」外観。敷地の高低差を生かしたランドスケープには、約4
000本の樹木が植栽され緑豊か
000本の樹木が植栽され緑豊か
最優秀作品の間取り図。すべての間仕切りを開放すると一続きの空間に
最優秀作品の間取り図。すべての間仕切りを開放すると一続きの空間に
手前がLDK、左奥が個室になるが、パーティションによって、ゆるやかな間仕切りであることがわかる
手前がLDK、左奥が個室になるが、パーティションによって、ゆるやかな間仕切りであることがわかる

◆戸建住宅
~三井ホーム「RONDINO【輪舞曲】」の場合~

 三井ホーム(株)が先般発売した「RONDINO(ロンディーノ)【輪舞曲】」は、同社が標榜するブランドコンセプト「暮らし継がれる家」をテーマにしたフリー設計タイプの戸建商品。
 同社独自の技術「Gフレーム」や「DSパネル」を導入し、中庭を中心とした、エントランスホールから左回りに一続きの空間を実現した(右間取り図参照)。

 フリー設計タイプなので、基本、各居室の配置はユーザー側で自由に行なえるが、同社では、左回りの動線に沿って“奥に進むほどプライベート度が高まっていく仕組み”を提案している。
 1階の場合、エントランスホールから始まって、「サロン→リビング→ダイニング→畳部屋→ガレージ」、2階の場合「スタディコーナー→子供部屋→バス・トイレ→主寝室」と配置することで、空間同士のつながりがあっても、パブリックとプライベートスペースを自然と分けることができる。

 ちなみに、「サロン」は来客者に気軽に立ち寄ってもらい会話などができるスペース。玄関から土間続きでとなっているため、家族間のみならず、友人・知人とのちょっとしたコミュニケーションがとりやすい。

 さらに、1階サロンからリビング、そして2階の「スタディコーナー」も、のびやかな勾配天井でつながれており、スタディコーナー部分は吹抜けとなっている(右画像参照)。
 2階子供部屋は、10.5畳の空間は家具で、入口部分もスクリーンパーティションで仕切るタイプとしている。
 いずれも、最近注目されている「頭のよい子が育つ家」(スペース・オブ・ファイブ(株))ではないが、家族の気配を感じて子供に集中力を高めてもらうことが狙いだ。

 また、動線部分の外壁、内壁、例えば、内庭に続く路地に面する壁、リビングを仰ぐスタディコーナーの壁などを曲線で描くことによって、ゆるやかなつながりを表している。

 同物件のターゲットは、都市部の建替え層としており、反響も40~50歳代のハイグレード層が中心だが、今年4月から展示を開始した「tvkハウジングプラザ横浜」(横浜市西区)は複合展示場であるため、その高いデザイン性などを部分的に参考にするユーザーも多く、幅広い層に注目されているそうだ。

◆◆分譲マンション
~三井不動産レジデンシャル「パークホームズ成増マークレジデンス」の場合~

 三井不動産レジデンシャル(株)は、「第5回三井住空間デザインコンペ」において、「パークホームズ成増マークレジデンス」(東京都板橋区、総戸数223戸[事業協力者住戸51戸含む])の1階テラス付住戸(専有面積79.13平方メートル)で、『親と子の新しい住まい』をテーマに昨年2月に募集を開始。先般、最優秀作品を受賞した倉本 剛氏(倉本剛建築設計事務所代表)の作品であるモデルルームをマスコミ向けに公開した。

 倉本氏の作品は、すべての居室をパーティションで区切り、開放すれば一つの大きな「ハコ」となる(右間取り図参照)。LDKだけでなく、住戸全体で流動的な家族関係が築けるようにしている。

 その中心的存在が“机ギャラリー”。これを核とした家族のコミュニケーションが自然と生まれる住まいをめざしている。
 物件北側にある緑地に面して、全長11mの机を居室3室とユーティリティを横断して設置。父親が歯磨きを、母親が読書を、子どもが勉強をなど、各々の世界で作業をするなか、互いの存在を自然と感じることができるというものだ。

 また、机ギャラリー、間仕切り壁・扉、造作家具などの表面素材を統一し、視覚の面でも一体感を演出している。

 倉本氏は「これまで個々で行なわれてきたであろう読書やインターネット、歯磨きや化粧などは、いわば人の“生き生きした活動”。これを図書館やカフェのように家族と共有できれば、コミュニケーションがよりとりやすくなるのではと思った」と同プランへの想いを語る。

◆◆◇多様化するライフスタイル、求められるプランニングとは?

 今回は、住戸内を連続した空間とすることで、家族間のコミュニケーションを円滑にするプランニングを紹介した。
 ただ、こういったプランニングが注目される一方で、せっかくマイホームを持つならば、自分だけの趣味の部屋を持ちたい、書斎を持ちたいというニーズも耳にする。
 総じて考えると、新築住宅においてもユーザー自身が選べる、アレンジできるということがこれまで以上に重要視されるということだろう。
 これまでの決まった間取り、つまりは“枠”から、住戸を大きな一つの“ハコ”として提案するのと同時に、中の“パーツ”の選択肢をいかに多く用意できるかが、ユーザーの気持ちをつかむカギになる、ということだろうではないだろうか。(umi)

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【関連ニュース】
都市における環境配慮型住宅、「RONDINO」発売/三井ホーム(2009/9/10)
「第5回三井住空間デザインコンペ」最優秀作品のモデルルーム公開/三井不動産レジデンシャル(2009/9/18)

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