記者の目

2015/11/30

名古屋駅前のランドマークが生まれ変わった

「大名古屋ビルヂング」が竣工

 JRなど「名古屋」駅前のランドマークとして約50年にわたって地域に親しまれてきた「大名古屋ビルヂング」(名古屋市中村区)の再開発が10月末に竣工した。開発した三菱地所(株)の担当者によると、地域のランドマークとしての役割は「東京で言えば丸ビルや新丸ビル、もしくはそれ以上の存在感があるビルだった」という。そのため、既存部材を生かした共用部やエントランスの装飾など、旧ビルの名残を残している。

竣工した「大名古屋ビルヂング」。外観デザインは「丘の上に立つ大樹」をイメージしたという
竣工した「大名古屋ビルヂング」。外観デザインは「丘の上に立つ大樹」をイメージしたという
住居表示の銘板は旧ビルのものをそのまま使用している
住居表示の銘板は旧ビルのものをそのまま使用している
1階車寄せに移動したモザイク壁画
1階車寄せに移動したモザイク壁画
名古屋駅周辺では「大名古屋ビルヂング」をはじめとした複数の大規模オフィスビルが開発中。周辺のビル市場への影響は少なくない
名古屋駅周辺では「大名古屋ビルヂング」をはじめとした複数の大規模オフィスビルが開発中。周辺のビル市場への影響は少なくない

◆全国的に知名度の高いビル

 旧「大名古屋ビルヂング」は1962年に竣工した地上12階地下4階建ての複合ビルで、延床面積は7万5,955 平方メートル。三菱地所の地方進出の足掛かりになったビルとしても知られている。従前は、建物上部に「大名古屋ビルヂング」と大きくビル名称が掲げられており、名古屋圏のみならず全国的に知名度の高いビルだった。

 老朽化や高度化するオフィスニーズに対応できなくなってきたことを理由に、三菱地所は09年に建て替え計画を発表。12年にはオフィスビルとしての役割を終え、解体に着手した。そして隣地にあったホテル「ロイヤルパークイン名古屋」を閉鎖し、その敷地と一体化した再開発に踏み切った。

 建て替え後の「大名古屋ビルヂング」は、敷地面積9,155.56平方メートルに鉄骨造鉄骨鉄筋コンクリート造地上34階地下4階塔屋1階建て・高さ174.70mのオフィス・店舗からなる複合ビルとなった。都市再生特別地区の指定に基づく容積率の割り増しを受け、延床面積は約14万8,000平方メートルまで拡大している。

◆ビルの“記憶”を残す

 待ち合わせスポットになるなど、地域のランドマークとして愛されてきた経緯から、「地域に深く根付き、愛された“大名古屋ビルヂング”という名称をそのまま利用することにした」(同社名古屋支店次長ビル事業課長兼総務課長:中野忠光氏)という。ビルの住居表示版は旧ビルに使われていたものをそのまま新ビルの入り口に設置し、旧ビルの特徴のひとつだった建物上部の名称看板は撤去したが、同じフォントで建物の低層部(地上25m)に名称をLED内照式サインで表示した。

 このほかにも、さまざまな旧ビルの“記憶”を新ビルにも盛り込んでいる。旧ビル1階のエレベーターホールにあった巨大なモザイク壁画「海」(作・矢橋六郎氏)は、新ビルの車寄せに移設。車で来館する人を、幅約8mのモザイク壁画が出迎える。エントランスホールの壁大理石の再利用や、旧ビルの2階に設置されていた瓢箪型の手すりも新ビルの2階駐車場待ち合わせスペースに設置するなどした。この手すりの瓢箪型の形状は、名古屋ゆかりの武将・豊臣秀吉が馬印に使ったものだ。

 このように、旧ビルで使われていた資材を再利用するなどといった取り組みは、同社が「丸ビル」「新丸ビル」(共に東京都千代田区)でも行なったもの。地域のランドマークとして長年愛されてきた建物に対する敬意を表す意味も込められている。

◆オフィス機能もハイスペック

 同ビルのポイントは、従前の建物の“記憶”を生かしている点だけではない。最新鋭のオフィス設備に対応している点や基準床面積約730坪という名古屋圏最大級のオフィスフロアなども特筆できる。オフィスの就業者数は約5,000人にのぼる計画。

 オフィス就業者専用の貸会議室やカフェラウンジ、一般開放する屋上庭園など、さまざまな機能を設けてワーカーが快適に働ける環境を整えているほか、中圧ガスと重油両方に対応したデュアルフューエル型発電機の設置や、1階や地下接続部の防潮版の設置など、災害対策も充実させている。

 竣工時入居率について公表はしていないが、同社執行役員名古屋支店長・仲條彰規氏は「当社としては満足のいく数字」としている。賃料については、周辺のオフィス賃料相場が1坪当たり平均1万2,000円程度であるのと比較して、かなり高めに設定してあるというが、引き合いは強く、早期の満室稼働も期待できるという。

◆名駅地区で大規模オフィス床大量供給

 この「大名古屋ビルヂング」以外にも名駅地区では、10・11月に「JPタワー名古屋」(事業主:日本郵便(株)他)、「JRゲートタワー」(同:東海旅客鉄道他)など、大規模オフィスが相次いで竣工。今後も複数の開発が竣工する計画で、最終的には名駅地区だけで就業者数が約2万人、オフィス床面積が計6万坪増加する見込みだ。マーケットに与える影響は小さくない。

 ちなみに、「大名古屋ビルヂング」はオフィスフロアを最大14分割でき、最小面積約30坪という中小ニーズにも対応、幅広いテナントが入居できる。同社の見込みでは、オフィスだけで約80のテナントが入居するという。裏を返せば、大規模オフィスからの移転需要だけにとどまらず、近隣の中規模ビルからの中堅・中小企業の移転需要も取り込めるということだ。実際に、近隣ビルではオフィス床の大量供給を見越した動きが出ていた。

 オフィス仲介の三鬼商事(株)の調査によると、9月末時点の名駅地区のオフィス平均空室率は5.29%で、前月よりも0.92ポイントも上昇した。これは、周辺に新築される大規模ビルに、周辺の既存ビルから移転する例が多いためだ。募集賃料については、一般的に値上げの動きが出てくる4%台で半年以上推移していたが、値上げの動きが顕在化することはなく、1坪当たり1万2,000円台前半で安定推移していた。移転防止のために更新賃料を据え置きもしくは値下げで提案する例が見受けられたため、募集賃料も大きく引き上げられなかったという事情がある。

 仲條氏は、こうした動きについて「27年のリニア開通を見込み、名古屋経済圏は活発。空室率は一時的な上昇だと考えている。しかし、老朽化したビルにテナントが入るかどうかについては、そのビルの個別の競争力アップ策が求められるのではないか」と分析する。

※※※※

 名古屋駅周辺の大規模オフィスビルの開発ラッシュは、東京で六本木ヒルズなど大規模複合オフィスビルがの竣工が相次いだ「2003年問題」を思い起こさせる。当時も、大規模オフィスの開業ラッシュで一時的に市場は乱れた。今回の名古屋での開業ラッシュは、果たしてどうなるか。今後、リニア開業を見込んだ需要が期待できるとはいえ、同じタイミングでこれだけ大量のオフィス床が供給されると、市場に乱れが生じる可能性は否めない。

 03年問題の当時、東京では老朽オフィスビルのコンバージョンが話題となった。複合開発の進展と共に、都心居住ニーズも強まった背景があった。今回の名古屋でも、競争力に劣る老朽ビルなどは、都心居住ニーズに対応するために住居系にコンバージョンするなど、抜本的なリニューアルが必要になるかもしれない。(晋)


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