アクティブシニア向け分譲マンション「グランコスモ武蔵浦和」
健康な状態で入居することでその環境での生活をエンジョイすることができる、利用権ではなく所有権の取得のため資産価値を維持できるなどの理由から、所有権分譲型のシニアマンションが人気を博している。 (株)コスモスイニシアは、初弾となるシニア向け分譲マンション「グランコスモ武蔵浦和」(さいたま市南区、13階建て・総戸数160戸)を開発。15年6月の発売開始以来、販売も順調に推移しているという。 同物件を見学する機会を得たので、レポートする。









◆要介護までの期間を引き延ばせる住まいを…
「グランコスモ武蔵浦和」は、JR埼京線・武蔵野線「武蔵浦和」駅前で進められている大規模再開発プロジェクトの一環として、一般分譲マンション「武蔵浦和 SKY & GARDEN」(616戸)と共に開発されたシニア向けの分譲マンションだ。
同社では、シニア向け住宅の企画にあたり、約400人のアクティブシニアを対象にグループインタビューやヒアリング調査を実施。すると、元気な間は施設には行きたくない、今の暮らしを楽しみたいといった意向が確認された。そこで、「その物件に住むことで、要介護までの期間を引き延ばせるような、“アンチエイジング”の住宅を開発しよう」、と開発を進め、商品化したのが、「グランコスモ武蔵浦和」だ。
◆ハード・ソフト両面で管理会社が積極関与
この物件には、入居者の“アンチエイジング”実現に向けて、さまざまな工夫がなされている。その最大のポイントがコミュニティの創出だ。同世代とのコミュニケーションを楽しめる環境が、シニア世代、特に女性シニアに求められていることがヒアリングにより判明。そこで、ハード・ソフト両面で、コミュニティ創出に注力している。
まずハード面では、集まって談話できるラウンジを奇数階に、作品展示も行えるいわば公民館のようなスペースであるアトリエを偶数階に、さらに、キッチンも備えた眺望も楽しめるスカイビューラウンジを最上階に用意。その他、カラオケセットを備えたサウンドルーム、麻雀セットを備えた麻雀ルームなど、コミュニティ形成につながる多種多様な共用設備を備えた。
さらに、そうしたスペースを入居者が有効的に活用できるよう、管理を受託する(株)コスモスライフサポートが、教室やさまざまなイベントの企画・運営などを手掛ける。
ハコだけを用意しても、利用されなければ“無用の長物”だ。これらのスペースを有効に活用し、良好なコミュニティ形成を、同社が積極的にバックアップしているところが、この物件の最大の特徴なのだ。
◆コミュニティ形成の取り組みは入居前から
「引き渡し前にはバス旅行を企画し、ある程度仲良くなったところで入居していただくといった工夫もしました。これまで2度バスツアーを実施しましたが、その結果、入居直後から住人皆様の関係が非常に円満に構築されていると実感しています」(同社シニア事業課 アクティブシニア研究所所長・近江 秀氏)。
なお、入居開始から1ヵ月ほどは同社が企画するイベントがほとんどだったそうだが、2ヵ月が経過する頃からは、入居者による自主的なイベントが徐々に開催されるようになってきているという。
◆1階の食堂は入居者専用ではない。そのこころは…?
「グランコスモ武蔵浦和」には、男女一つずつ大浴場が設けられている。ゆっくりと足をのばして入浴しながら、会話を楽しむ、いわゆる“裸のつきあい”も、入居者同士の人間関係を良質なものにすることに大変役に立っているようだ。
ちなみに大浴場については、自室の浴室の準備・清掃などから解放されるという点でも高評価を得ているという。「自宅の浴室は物置にして、毎日大浴場を利用しているという男性の単身入居者の話も耳にしたことがあります」(同氏)。
年を重ねると、アクティブシニアとはいえ、疲労感が若い頃より増したり、体が思うように動かなくなったりする。日常の生活の手間を減らすということでは、大浴場はありがたい施設なのだろう。
また、同物件には各戸に立派なキッチンが備えられているため、自炊もできる環境が整備されている。しかし、炊事から解放されたいという人も、年齢を重ねるごとに増加する。
「グランコスモ武蔵浦和」には、1階に家庭料理を中心に提供するフランチャイズの食堂「半田屋」(仙台市青葉区)が入居している。ここで好きな物を注文して食べることができるのだ。なお、駅前立地であるため、近隣に飲食店が多数存在する。そこを利用し、食べ歩きを含めて楽しむこともできる。
なお「半田屋」はテナントではなく、付随施設でもない。コスモスライフサポート自らが、通常の飲食店として運営している。
入居者対象の食堂とすると、利用頻度が下がった時に料金を上げたり、運営コスト削減のためにメニューを限定したり、といった状況に陥る恐れがある。
同店は、外部への提供事業で経営を成り立たせているため、そういった心配がない。またテナントを招致した場合、撤退によるリスクも考えられるが、同社が運営することで、撤退により食事が提供できないリスクをなくす事もできるという。
外部利用を基本とした半田屋だが、店内には入居者専用のスペースが設けられている。取材当日も店内は空席待ちの人が並んでいたが、入居者専用スペースでは余裕があった。こうした“特別感”は、入居者専用としての優越感、満足感を高めることにつながりそうだ。
なお入居者からは、「価格設定が安価なため利用しやすい」(例えば、カツ丼は驚きの350円!)、「自分の好きなメニューを選択できるので、連日利用しても飽きない」など、専用食堂でないことでむしろ高評価を得ているようだ。近い、安いということで、ここを利用しての入居者飲み会などもしばしば催されているという。
◆要看護・介護時の体制も整備
専有部分については介護を想定した住宅で見られるような18平方メートルの住戸は設けず、44平方メートル・1LDKから71.28平方メートル・2LDKまで、ゆとりの広さを確保したタイプをラインナップ。
収納もたっぷり確保しており、キッチンもファミリー向けの比較的大きなシステムキッチンを導入している。
専有部は、段差なしのバリアフリー。24時間365日対応の緊急コールボタン、車いす対応洗面台なども採用している。
なお1階には内科系クリニックを設置し、近隣の病院や介護施設とも連携。その他生活サポートスタッフによる日常的な雑事などのお手伝いサービスも提供するなど、看護・介護体制も整えている。
これまで7~8割ほど契約が進んでおり、出足が遅いと言われるシニア向け物件としては、順調な進捗を見せている。
同社では、今後も年に1~2棟のペースで、アクティブシニア向けの分譲マンションを供給していく意向だ。
契約者の平均年齢は69歳。最も多い年代は70歳代(約40%)だが、50歳以下も約20%いるそう。なお、50歳以下はほぼ親のための購入だという。同物件では購入・入居に年齢制限は設けておらず、また所有権分譲であるため、親に万が一のことがあれば売却する、もしくは子世代が入居することも可能。その点も非常に評価が高いという。
◆◆◆
シニアと言われる年代に突入すると、介護の不安は誰もが抱くだろう。しかし、いざその必要が出た時の備えがしっかりできていれば、来たるその日までは、通常の生活をエンジョイしたいと考える人は多いはず。
それを実現できる住宅ということで、多くのシニアの支持を受けているのだろう。
このような、将来の不安を払拭しながら今の生活を満喫できる住宅のニーズは、これから今後ますます高まってくるに違いない。(NO)
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