記者の目 / 仲介・管理

2017/5/8

「DIY」でよみがえる団地

 現在、住宅ストック数約6,060万戸に対し、空き家の数は約820万戸といわれ、空き家の増加は社会問題となっている。空き家と聞くと、一戸建てが頭に浮かびがちだが、昨今は団地の空き家増も深刻化しつつあるという。そうした中、UR賃貸住宅や分譲マンションなどの管理・改修・リフォーム等を多く手掛ける日本総合住生活(株)(JS)が、「稲毛海岸三丁目団地」(千葉市美浜区、総戸数768戸)の空き家再生に乗り出した。

鉄筋コンクリート造5階建ての27棟からなる
「稲毛海岸三丁目団地」

◆かつての“憧れの住まい”も、経年劣化・高齢化が顕著に

 1960年代以降、日本各地で次々と開発された団地。「稲毛海岸三丁目団地」が立地する千葉海浜ニュータウン地区もその当時に開発されたエリアで、最寄りのJR「稲毛海岸」駅を降りてしばらく歩くと、見渡す限りの団地が広がっている。

 かつて団地は、ダイニングキッチンや水洗トイレといった先進的な設備や、規格化された間取りなど、世のサラリーマンたちの憧れの住まいだった。ところが、経年劣化やライフスタイルの多様化による住戸の魅力低下、さらには居住者の高齢化に伴うコミュニティの担い手不足などにより、団地離れが進み、空き家の数が増えつつある。もはや、管理組合のみでは解決困難なさまざまな課題が健在化しているのが現状だ。

 「稲毛海岸三丁目団地」は、鉄筋コンクリート造5階建ての27棟からなる。住戸は3DK~3LDK、専有面積は47.99~66.00平方メートル。入居は1968年から始まった。現在の空き家率は、総戸数768戸に対して約9%にとどまっているが、進む経年劣化や高齢化により、今後も空き家が増えていくことが予想される。

空き家となった住戸。
現在の空室率は約9%だが、
老朽化・高齢化によりさらに空き家が増える可能性が

◆「やむを得ず」「とりあえず保有」が空き家増の原因に

 そうした現状を踏まえ、JSは団地内の空き家の現状や活用可能な空き家の調査を開始。すると、所有者の「希望価格で売れない」「資産としてとりあえず保有しておきたい」「やむを得ず空き家にしているのを何とかしたい」などの状況が浮き彫りとなった。また、管理費は毎月きちんと納めているものの、実際には人が住んでおらず、数年間にわたって空き家が続いている住戸も少なくないことが分かった。「そうなると大掛かりな改修が必要ですが、その費用が賄えずさらに空き家のまま放置してしまう…といった悪循環を招きます」と、同社営業企画部新規事業担当部長の斉木広和氏は危惧している。

 一方、入居希望者のニーズを調べると「団地の豊かな環境で暮らしたい」「賃貸でもDIYで自分らしく暮らしたい」「戸建てを手放し、団地で暮らしたい」などが挙がっていた。

 そこで考えたのが、リノベーション等による空き家の活用を通じて多世代の入居を促進し、団地コミュニティを活性化させる事業。2017年2月、JS、管理組合、NPO法人「ちば地域再生リサーチ」の3社が事業協定を締結。JSが事業主体となって空き家の取得から改修、賃貸物件としての管理・運営までを実施し、管理組合は団地内の空き家情報を収集、NPOは事業へのアドバイスとサポートを行なっていくこととした。

JS、管理組合、NPO法人が協力し合い、
空き家活用事業を推進

 また、「賃貸でもDIYで自分らしく暮らしたい」というニーズが多かったことに着目し、第1弾は若年層を含めた多世代に訴求する「DIY」対応のリノベーション住宅として賃貸することに決定。すでに5戸の空き家の買い取りが完了しており、3年間で10戸の空き家再生を目指す。将来的には、サブリース方式も検討していく考えだ。

 5戸のうち3DKの2戸はすでにリノベーション済み。壁に間柱を立てることで、棚や壁材の取り付け下地や簡易フックなどの取り付けに利用できるのが大きな特長。間柱は原状回復義務なしとしているため、撤去さえしなければどんなに手を加えてもいいのだという。間柱を活用して飾り棚を製作したり、それぞれの部屋の雰囲気に合わせて壁や木部を自由に塗装することもできる。

赤い点線がDIY施工容易な壁面/間柱
青い点線がDIY施工容易な天井木下地部分
緑の点線がDIY施工容易な開口部/枠

 また、完成した2戸のうち1戸は入居者募集を開始しており、別の1戸は段階的にDIYを行なっていくモデルルームとして半年間公開する。
 「“暮らしのDIY”という、モノづくりに限定しないさまざなDIY活動に取り組んでいる『西千葉工作室』の西山芽衣氏に監修をお願いし、DIYの楽しさや改修のヒントを発信していきます。稲毛海岸や団地内で拾ったものをオブジェにしたり、団地内や近くの公園で楽しむためのオリジナルピクニックセットづくりなどをイベント化し、団地暮らしの良さも伝えていく予定です」(同社営業企画部事業計画課・鋤柄 さやか氏)。

◆内覧会には61組が来場。特に若い世代が関心を寄せる

 4月16日、第一段階としてDIYしたモデルルームの内覧会を実施。西山氏と、設計・監修を担当した西田 司氏(オンデザイン)によるトークセッションも行なわれた。ホームセンターで購入した合板や木製のパレットなどを使ってつくったベッドや、合板でつくった箱に天板を載せた大きなテーブルなどを配置。間柱を活用した飾り棚や、オリジナルのカーテン、フックに取り付けた照明などを披露した。家賃は、周辺相場とほぼ同等の7万3,000円(管理費別)に設定、来場者は61組にのぼり盛況に終わった。

壁面に立てられた間柱
(リノベーション住戸)
飾り棚や収納棚、テレビ台など、
自由にDIYできる
(モデルルーム住戸)

 来場者アンケートでは、若い世代の人たちから「住んでみたい!」との感想が多く寄せられ、特に団地外から来た人たちのDIY住宅への関心度が高かったそうだ。また、トークセッションでは、団地の優れた住棟配置や屋外空間の豊かさ、古いものへの愛着などが語られ「モデルルームだけでなく、団地の魅力についての理解も深まったのでは」(鋤柄氏)と手応えを感じているという。

内覧会には61組が来場。
若い人たちからは「住んでみたい!」の声が

 団地内のコミュニティ活性化を目指すため、入居希望者からは入居にあたっての思いなどを直接ヒアリングする予定。「コミュニティづくりに積極的に関われるか」「入居後の取材はOKか」などを質問し、住戸のDIYプランなども提出してもらうそうだ。
 「新たな入居者がキーパーソンとなり、DIY・コミュニティの輪が広がっていくことを期待しています」(同氏)。

 人が住んでいない家は劣化が進み、空き家の多いエリアはまちがどんどん寂れていく。最近、耳が痛くなるほど聞いている言葉だ。取材してみて分かったことだが、管理費のみ支払って何年も住まわれていない住戸や、思い出があって手放せないためとりあえず所有しているなど、空き家予備軍の多さに驚いた。所有者は空き家になることへの危機感が薄いため、なかなか売却に至らず、将来的に手のつけられないほどの空き家になってしまう可能性が高いということだ。

 「DIY」に着目した同団地の取り組みがモデルケースとなり、新たな空き家活用法として他団地にも広がっていけば、地域の活性化にもつながるだろう。今後の動きにも注目したい。(I)

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DIY

自分自身でモノの製作や修理を行なうこと。DoItYourself(あなたが自ら行なえ)の略語。

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2017/11/22

「記者の目」更新しました

「“暮らしが楽しくなる”団地に再生」の記事を更新しました。

神奈川県住宅供給公社が昭和40年代に開発し、近年、半数近くの住宅が空き家となっていた「二宮団地」(神奈川県中郡)。同公社と地域住民が連携し“さとやまライフ”が楽しめる団地をテーマに、再生プロジェクトに取り組んでいます。その取り組みは、団地再生のみならず地域創生にもつながっているのだとか。具体的なプログラムを紹介しています。ぜひご覧ください。