記者の目 / リフォーム

2024/11/26

「住まいの資産価値向上意識」を高めたい!

関西発、「外壁塗装」+「内窓施工」の挑戦

 住まいを長持ちさせるためには定期的なメンテナンスが欠かせないが、その代表格といえば「外壁塗装」だろう。だが、家の中の手入れやリフォームには関心があっても、外壁のメンテナンスは疎かにしがち、というユーザーは少なくない。こうした中、住まいの寿命を延ばす外壁塗装と、住まいの省エネ性や快適性を高める「性能向上リフォーム(内窓施工)」を組み合わせて提案することで、ユーザーに支持されている企業を紹介する。

住まいの耐久性向上に極めて重要な「外壁塗装」

 関西圏・首都圏で5万戸以上の分譲住宅・注文住宅を供給・施工してきた(株)創建(大阪市中央区、代表取締役社長:吉村卓也氏)。同社は、その実績を生かして2023年9月、新たに外壁塗装事業「創建ペイント」を立ち上げた。自社グループの分譲住宅や注文住宅で培った施工技術と施工体制により、関西2府4県内の既存戸建てを中心に、高品質の外壁塗装を提供する事業だ。

 デベロッパーやハウスメーカーの中には、新築住宅の供給には熱心だが、保証期間終了後のメンテナンス提案には消極的な会社は少なくない。そうした中にあって同社は、「建物をしっかり維持管理していくことが住まいの資産価値向上につながる」と、住宅点検やアフターサービスに注力してきた。2011年にはグループ会社(株)日本戸建管理を設立し、定期点検や駆け付けサービスを行なう戸建維持管理サービス「家ドック」をリリースしている。「創建ペイント」のスタートも、高品質でリーズナブルな外壁塗装を自ら提供することで、ユーザーの住まいの資産価値向上への意識を高めていきたいという同社の想いがある。創建ペイント公式サイト(https://www.k-skn.com/ sokenpaint/)

「外壁塗装」は建物の美観を回復するだけでなく、建物の寿命を長く保つための重要な作業。だが、ユーザーの意識はあまり高くない(写真はイメージ)

 「外壁塗装」というと、見た目のリフレッシュや美観向上が目的と思われがちだが、実は建物の維持管理上、極めて重要な作業だ。一般的な戸建て住宅は、日照・風雨等により、新築後10年前後でもれなく屋根や外壁の塗装、外壁のつなぎ目や開口部周辺のシーリングが劣化してくる。塗装の塗膜やシーリングが劣化してくると、雨水が躯体内部へと侵入して、内壁のカビや躯体の腐朽などを引き起こす。

 さらに問題なのは、こうした劣化が「新築後10年前後」で発生してくるということだ。新築住宅であれば柱、梁、床、屋根などの構造耐力上主要な部分や、雨水の浸入を防止する部分については、10年間の瑕疵保証が受けられる。だが、10年を過ぎてから何らかのトラブルに見舞われると、修理・補修のため余計な負担を強いられる。外壁塗装は、こうした悲劇を防ぐための「予防安全」の意味でも重要だということだ。

外壁塗装を怠ると塗膜やシーリングが劣化して、建物が加速度的に傷んでくる(写真はイメージ)

 このような重要性が伝わっていないこともあり、ユーザーの外壁塗装に対する意識はあまり高くない。住まいの耐久性向上には極めて重要である反面、直接的な「住み心地」の変化がわかりづらいということ(遮熱塗料などを使うことで快適性は向上するため、あくまでも一般論)もある。

 そこで同社が2024年1月にスタートしたのが、「外壁のリフレッシュと同時に、省エネ性も住み心地も良くしてもらう」ことで外壁塗装工事の需要を喚起する「内窓無料キャンペーン」だ。

国の補助金を活用して最大10ヵ所まで無料で施工

イメージキャラクターにはタレントのIKKOさんを起用(キャンペーンは2024年10月31日で終了しています)

 このキャンペーンは、同社が外壁塗装工事を施工した戸建住宅を対象に、内窓を最大10ヵ所まで施主の負担なしで同時に施工するというものだ。既存のサッシの内側にもう1枚サッシを追加して二重窓とするリフォームは、近年のリフォームトレンドである「性能向上リフォーム」の代表格だ。熱伝導が低く音が伝わりにくい樹脂製の枠に、遮熱効果の高いLow-Eガラスを用いたサッシを既存の窓に取り付けることで、居室の断熱性や遮音性は大きく高まり、省エネにも効果がある。国も省エネ性の高い住宅ストックを増やすべく、補助金を設けてその普及を支援している。

 同社のキャンペーンはこの補助金(環境省の「先進的窓リノベ事業」)を使い、同社が施主に代わって補助金(戸当たり上限200万円)を申請する。これにより、施主は自ら補助金申請することなく、かつ補助金額を超えた分は同社が負担するため、施主は自己負担なしでリビングや各居室の窓を二重窓へリフォームできるというわけだ。自社でリフォーム事業を手掛け、工事業者を手配できる同社ならではだ。

 新築住宅や注文住宅で樹脂サッシや二重窓が定着し始めたのは、ほんの十数年前。既存戸建ての多くは、単板ガラスやアルミサッシが一般的だ。これらを樹脂サッシや二重サッシにすれば、それだけで快適性や省エネ性が十分実感できるということになる。

「夏暑くて、冬寒い」不満解消に期待

 実際に、キャンペーンによる内窓施工現場を見せてもらうことができた。

 京都府宇治市の住宅街にあるYさん宅は、築23年の戸建住宅。記者が訪ねた時は、すでに創建ペイントによる外壁塗装工事が終わっており、清潔感あふれる外観となっていた。「何年か前から“そろそろ外壁塗装をやらなければまずいかな”と思ってはいましたが、最初に問い合わせた業者の対応がものすごく悪くて…。そのあと別の業者にも見積もりを出してもらったのですが、ちょっと予算が合わず、比較するため問い合わせたのが創建ペイントさんでした」と振り返るYさん。

 Yさん宅では、1階のリビングと2階のすべての居室、合計7ヵ所に内窓を取り付けた。既存の窓と7センチほど間隔を空けた位置に、内窓の窓枠を設置。熟練の職人さんが、手慣れた様子で窓枠にサッシを滑り込ませていく。約半日で作業は無事終了した。

内窓取り付け風景。熟練の職人さんが手慣れた様子で窓枠を施工していく
窓枠に内窓を滑り込ませて完成

 「我々の負担なしに内窓を取り付けてくれるというのは、創建さんを選んだ理由になりましたね。我が家は風の通りも日当たりも悪くないのですが、“夏は暑くて、冬は寒い”ことや、冬の結露には不満を感じていました。内窓を取り付けたことで、これらが改善されればありがたいですね」とYさんは笑顔で話してくれた。

外壁塗装工事を施工した顧客の多くが内窓も施工

 創建ペイントの「内窓無料キャンペーン」は、補助金の申請の都合上、10月末で終了(24年内工事完了が条件)した。この間同社で外壁施工を手掛けた工事の多くで、内窓を施工したという。また、内窓を施工したユーザーからは「エアコンの効きが良くなった」「外からの騒音が気にならなくなった」など住まいの「性能向上」を喜ぶ声も寄せられているという。

 同社は、今回のキャンペーンの成果を踏まえ、25年も補助金実施が決定次第、キャンペーンを再開する予定だ。補助金を活用したキャンペーンということはあるが、外壁塗装という本来の目的とともに「性能向上リフォーム」の需要を喚起できたことは、リフォーム事業も手掛ける同社にとって収益拡大につながるだけでなく、創建グループの目指す「住まいの資産価値向上」に資する点でも、大きな意味を持つ。今後の動向を見守っていきたい(J)。

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