「サービスアパートメント」(以下、「SA」)という住居が、都心部を中心に増えている。ちなみにSAとは「日常生活に必要な設備・サービスを備えた賃貸住宅。家具、食器などが備えられているほか、リネン類の交換などのサービスが提供されることもある」(不動産用語集R.Ewords)と定義されており、カテゴリは住宅。1ヵ月から1年くらいの入居(滞在)が多いようだ。
ニーズの伸びに対応して、新規の開発に加えて、最近では既存物件をSA化した物件も増えてきている。不動産投資物件の開発・運営などを手掛ける(株)Concept K(東京都渋谷区、代表取締役社長:多幾宏平氏)がリノベーションを手掛けた外国人向けサービスアパートメント「KYO RESIDENCE新宿代々木」(東京都渋谷区)を取材した。◆インバウンドが求める宿泊施設が少ない日本
SAといえば、海外からの長期出張者や駐在者がメインの利用者として理解していたが、最近では、インバウンド(訪日外国人旅行客)の利用者が増えているようだ。
2019年に3,188万人を記録したインバウンドだが、コロナ禍の2021年に25万人にまで減少。しかしコロナ禍が明けると円安の進行も相まって、23年には2,507万人、24年に3,687万人、25年には4,268万人と数字を伸ばしている。
インバウンドの特徴として、1週間以上の長期滞在が多く、また家族やグループで旅行する傾向が強い。また、観光地を巡るだけではなく、ローカルな生活を体験するスタイルを希望するケースが多数だ。しかし、そうした希望をかなえられるホテルが、日本ではまだまだ少ない。
特に都心部ではビジネスホテルやシティホテルがほとんどで、それらの施設は、インバウンドが望むグループ宿泊・長期滞在に適しているとは言い難い。さらに、さらに、ホテルの稼働率が上がり、客室単価が上昇傾向にあるという事情もある。
そこでインバウンドから注目されているのが、民泊や今回取り上げるサービスアパートメントというわけだ。多幾社長は、「東京の渋谷や青山といったエリアはインバウンドに人気で、宿泊ニーズがとても高い。にもかかわらず、ホテルの数が非常に少なく宿泊料金も高価」と語る。そこで、既存の居住用物件をSA化して、そうした需要に対応しようという動きが出てきており、大手不動産会社でも取り組む事例が見られる。
SA化することで収益性の向上も実現できる。例えば、港区にあるとあるホテル。通常の客室でも1泊5万円を超える。しかしそのホテルから1本道を隔てた賃貸住宅の賃料は坪当たり2万円ほど。SAにすると、この間の賃料を狙える。ここにビジネスチャンスを見出し、同社は賃貸住宅をサービスアパートメントとするコンサルを展開している。
◆雰囲気は“ホテル”。生活しやすさは“住居”
同社が、一般賃貸住宅をSAに変更した「KYŌ RESICENCE 新宿代々木」(東京都渋谷区)を取材した。
京王新線「初台」駅徒歩5分、小田急小田原線「参宮橋」駅徒歩7分。駅名はなじみがない方もいるかもしれないが、巨大ターミナル駅であり巨大繁華街を抱える新宿から徒歩移動も可能な都心のまちで、閑静な住宅街としての認知も高いエリアだ。賃貸マンション1棟をJA三井リース建物(株)が取得。空室を順次リノベーションしており、9月に全面開業を予定している。
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建築物の種類は「住居」のままのため、外観・エントランスの印象を改善するようなリフォームと、住戸内のリノベーションで、サービスアパートメント化を進めている。
住戸内のリノベーションは、そこまで大規模なものではない。インバウンドが滞在するにあたりデッドスペースとなる空間をリビング等に集約することで開放感のある空間を仕立てるという目的で工事が行われているようだ。ここでいうデッドスペースとは、広い収納、廊下といった空間を指している。それらは、居住ではなく“滞在”で必要な量を除き、リビング等の時間を過ごす空間に集約している。
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非日常の空間の演出も重要なポイント。ソファやベッドといった家具、キッチン、洗面所、家電、さらに空間を装飾するアートなどにはこだわり、ホテルのような空間を創出している。旅という非日常には本当の日常とは異なる空間が不可欠のようだ。
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この工夫が必要なのは、滞在中の満足度を高めるためという目的もあるが、もう一つ、インバウンドの集客はネットが中心で、そこでの「映え」が顧客獲得に大きく影響するというのも理由のようだ。
7月からリノベーションを終了した一部の部屋の運用を開始したそうだが、その反響を聞いたところ、 「完成予想パースをInstagramや海外での認知度が高い日本の不動産のプラットフォーム『e-housing』にアップした段階で、100件を超える問い合わせがありました。そして、リノベーションが終了した部屋から先行で募集を開始したところ、1週間ほどで募集をかけた2部屋に申し込みが入りました」(同氏)という。1ヵ月以上からの定期借家契約で、賃料は、ワンルーム(40平方メートル)で40万円台から、2SLDK(100平方メートル超)で120万円代といった設定。これは地域の居住用物件の相場からすると倍ちかいが、それでも、ホテルに宿泊するためはるかに安価で長期滞在に適していることから引きは強く、そして一般賃貸に比べて収益性が大幅に上がることから、オーナー、投資家の関心も高いそうだ。
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取材活動の中で、都内の数々のSAを見る機会があったが、多くは世界的ブランドの高級サービスアパートメントで、ユーザーはエグゼクティブと言われるビジネスマンおよびその家族が利用している様子だった。
そんな“富裕層”がターゲットのカテゴリだと思っていた「SA」が、今や、一般のインバウンド層に広く利用される住居(意識としては宿泊施設?)となっていると知り、驚いた。
なお、多幾社長は、「インバウンドから見ると坪10万円払っても安いと感じる住戸を、日本人に普通賃貸借で坪2万円で貸している。そこを需要に合わせて、相手と貸し方を変えることでビジネスチャンスが生まれる」と語った。その考え方は、他の地域、他の種類でも生かせるはず。(NO)







