海外トピックス

2018/5/7

vol.344 自転車でGO!ブリスベンの通勤事情【オーストラリア】

 健康促進のために自転車通勤を。日本でも広がりつつあるその「アイディア」には大賛成だ。文庫本も広げられなかったりスマホもいじったりできないほど混雑した電車で通勤するよりも、その時間に体を動かしたほうが心身ともにリフレッシュするのは間違いない。

あまりに危険な東京の自転車環境

 だが自転車通勤の環境が整っているのかと問われれば、少なくとも東京都区内に限って言えば「そうでもない」と言わざるをえないだろう。
 確かに幹線道路には「自転車専用レーン」が設けられている。とはいえそのすぐ横を時速60キロ、ときにはその制限速度をかなりオーバーした猛スピードで乗用車やトラックが奏功する。何かの拍子に接触したらかすり傷では到底すまないだろう。
 自動車を避けて歩道を走ると、今度は歩行者に危害を加える可能性が出てくる。幅1メートル程度しかない坂道の歩道を猛スピードが駆け下りてくる自転車は、とくにお年寄りや小さな子どもにとって、凶器を越えて殺人マシーンに近い。

「専用レーン」ではない「自転車専用道路」

 そんな風に感じられる理由は、私が住むオーストラリアのブリスベンではかなり「自転車専用道路」がつくられているからだ。「専用レーン」ではない。車道とはまったく別の空間にある「専用道路」だ。市の中心部に向かう高速道路や幹線道路の脇(いわゆる「路肩」ではなく、その外側)に設置されていることが多い。
 また自動車と歩行者が共存する「専用道路」もあるが、たいていの場合、幅3メートルほどあり、きちんと線で区切られている。市の中心部を流れるブリスベン川の岸にある自動車と・歩行者専用道路は、通勤・通学者だけでなく、市民や観光客にも広く親しまれている。

ブリスベンの中心部に近い、川沿いの歩行者自転車専用道路。写真右は自転車置き場
ブリスベンの中心部に近い、川沿いの歩行者自転車専用道路


広い公園の一部を自動車と歩行者が共存する道路にしていることもあるが、街中の歩道と違って見通しもいいので接触事故が起こることはほとんどない。

日本の大都市ならではの自転車専用道路のつくりかた

 衛星都市も合わせて人口260万人程度のブリスベンと過密都市東京を同列に語ることは無理があるのはわかっている。都心には余っている土地がほとんどないし、たとえあったとしても買い上げて自転車専用道路にするのは財政的負担が大きすぎる。

自転車専用道路や自転車レーンの路面に書かれたイラストもわかりやすい
「自転車道。シャーウッド州立小学校まで1240メートル」の表示

 だが東京をはじめとする日本の大都市ならではの自転車専用道路の造り方もある。たとえば首都高速道路の下は店舗などに利用されているところもあるが、他の道路や河川、駐車場・駐輪場、公園となっているところも多い。ここは利用できないだろうか。
 何も駐車場・駐輪場や公園をつぶせと言っているのではない。車道のすぐ下にぶら下がるような形で「高架の自転車専用道」をつくるのはどうだろう(その脇に歩行者専用道路をつくってもいい)。車道が屋根の役割をするので、横殴りでない限り雨にも濡れない。強い日差しも遮られる。地上の何倍も快適な自転車専用道路ができるはずだ。建設費は多少かかるが、新たな土地代はゼロで、財政にもやさしい。
 高架といえば、鉄道の下で駐車場・駐輪場や公園になっているところも同様に利用できるだろう。
 さて、話を少しずらして専用道路以外の自転車環境についても触れてみたい。ブリスベンの電車には「自転車置き場」が設置されている。よって自宅の最寄り駅まで自転車で、そして会社の最寄駅から再び自転車でという利用が可能。とはいえ東京の通勤ラッシュ時の混雑ぶりを考えるとさすがにこれは実現不可能だろう。

電車内にも普通に自転車を持ち込むことが可能

 市の中心部のビジネス街の地下には、更衣室やシャワー、ロッカーが完備の巨大公共駐輪センターが設置されている。今の東京だと自転車通勤している人たちが仕事前にシャワーを浴びようとすると、朝から営業しているネットカフェや銭湯を利用するしかないが、会社近くにそうしたものがないことも多い。
 自転車通勤を増やそうというアイディアそのものはいい。専用の道路や駐輪スペースといった環境の整備なくしては、なかなか加速することはないだろう。

柳沢 有紀夫
東京都出身。慶応義塾大学卒。1999年にオーストラリア・ブリスベンへ「子育て移住」。『極楽オーストラリアの暮らし方』(山と渓谷社)、『オーストラリアで暮らしてみたら。』(JTBパブリッシング)、『日本語でどづぞ』(中経出版)など著書多数。海外在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」を主宰し、朝日新聞出版・小学館・日経BP社・マガジンハウス・ぐるなびなど数多くのウェブサイトや雑誌でリレー連載を担当している。
・柳沢有紀夫オフィシャルサイト

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2018/5/25

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