海外トピックス

2018/10/1

vol.349 公共空間の新しい利用法と豊かな暮らしの提案【アルゼンチン】

 アルゼンチン第3の都市ロサリオは、パラナ川沿いに広がる人口120万人の緑豊かな街です。多くの芸術家を輩出した歴史を持ち、「アルゼンチンで最も住みやすい街」を標榜するこの街では、地方行政が率先して新しい暮らし改革を提案し、国内でも注目を集めています。これまでに実施されてきた数あるプロジェクトの中から、今日は「創造の道」と「夜のピクニック」についてご紹介しましょう。

「創造の道」が提案する心身ともに健康的な暮らし

ここから「創造の道」が始まります、という立て看板。普段は車の流れが途切れない大通りから車が消えると、すっきりと広々した空間が広がる

 「創造の道(La Calle Recreativa)」は、公共空間である道路を全く別の目的のため市民に開放するプロジェクトです。ロサリオにはオローニョ通りとペレグリーニ通りという2本の目抜き通りがありますが、この内、毎週日曜日の午前8時半から昼12時半までの4時間、オローニョ通りから川沿いの道にかけて28キロ間が歩行者天国になります。

 人々はこの「創造の道」でウォーキング、ランニング、サイクリング、ローラーブレードなど様々なスポーツを無料で自由に楽しむことができます。また人形劇やピエロのショー、自転車の乗り方指導など、子供向けのイベントもあちこちで行われます。

誰もが参加できる無料の自転車講習会。乗り方だけでなく、道路上の注意点やメンテナンスの仕方までも指導してもらえる。参加者は大人から子供までさまざま

 通り沿いの公園では芝生を利用してヨガクラスが開かれ、また交差点の広いスペースではズンバのクラスがあり、いつも多くの参加者を集めています。これらのイベントへの参加費は全て無料です。

芝生の上でヨガをした後は、テントの下でのんびりとおしゃべりに花が咲く
大人気のズンバ教室には、毎週末40~50人ほどの参加者が集まり、大きな交差点を埋め尽くす

 人々が行き交う通りには、搾りたてのオレンジジュースを売るスタンドや、手作りジャムやケーキを販売するテーブルなども出され、ちょっとしたお祭りのような雰囲気が広がります。

ハンドジューサーで目の前でオレンジを絞ってくれるスタンドには、いつも長い列ができる

 小さな子供連れでも安全に自転車の練習ができたり、犬を連れてランニングしても十分な広さがあるなど、様々な目的を持った人達でにぎわう「創造の道」は、子供から高齢者まで気軽に参加でき、心身ともにより健康的で、社会交流を生む生活スタイルや街づくりに大きく貢献しているプロジェクトと言えます。

「夜のピクニック」で涼しい夏の夜を家族で安全に満喫しよう

涼しくなる夜8時ごろから人が集まり始め、10時近くにはかなりの賑わいになる

 治安上の理由から、夜間に人気のない公園へ行くのはあまりお勧めできないこの国で、「夜のピクニック(El Picnic Nocturno)」をプロジェクトとして提案したことは画期的だと言えます。ロサリオ市内にはいくつかの広い公園と、プラザと呼ばれる小規模の公園が多数あります。日中は厳しい暑さの続く夏の間、涼しく過ごしやすい夜間の時間帯にこれらの公共空間を市民にもっと活用してもらおうという意図から、ロサリオ市がスケジュールを組んでこのプロジェクトを実施しています。

 会場となる公園では、夕刻から電飾などの飾り付けが始まります。毎回ライブもあるので、機材の搬入やステージの設営なども行われます。本格的に「夜のピクニック」が始まるのは夜9時を過ぎてから。夏の間は夜8時を過ぎてもまだ明るいため、3ヵ月もある夏休み中は子供達もとても宵っ張りになります。夜9時に寝てしまう子はほとんどいないので、子連れファミリーがレジャーシートやビーチチェアーを片手に続々とやって来ます。

風船おじさんが現れると一気にお祭りの雰囲気になり、子供たちのテンションも上がる

 「夜のピクニック」では健康的な食生活の提案も兼ねて、事前にネット上でおやつの予約をしておくと、ナッツやドライフルーツなどをメインにした”健康的なお夜食”を市が提供してくれます。ただしこちらは数量限定なので、なかなか手に入れることは難しいよう。ほとんどの家族はサンドイッチやミートパイなど、アルゼンチンでお馴染みのお夜食やお菓子を持って参加します。

 バンド演奏が始まると、大人たちは立ち上がってサルサやクンビアを踊り、夕食を食べ終えた子供たちは砂場や遊具に集まって思い切り遊びます。

滑り台、ブランコ、お砂場などの見慣れた遊具や景色も、夜空の下では特別な空間に姿を変える

 「夜のピクニック」周辺は警備も強化されるため、涼しい夜風に吹かれながら、それぞれが気軽に、安全に、自由に、そして開放的に夏の夜を楽しむことができるだけでなく、近所の人たちとの交流や、友達夫婦と落ち合っての参加など、人々の輪が広がる社交の場として夜の公園が活用されるようになりました。

 ロサリオ市による公共空間の再利用の提案は、人々の生活をより健康的で社交的に、そしてより豊かにする新しいアイデアに満ちています。

山本 夏子
武蔵野美術大学映像学科卒業。日本語教師の資格取得後、エルサルバドル国立大学で教鞭を取る。その後、米企業メキシコ支社勤務、国際協力機構ボリビア事務所勤務を経て、2008年にアルゼンチンへ移住。ラテンアメリカ滞在16年となる。現在は子育てと日本語教育、翻訳業、執筆業に従事。朝日出版『ジュニアエラ』、JA(農協)家の光協会『ちゃぐりん』等でアルゼンチンの子供と生活をテーマに記事を執筆、また複数のWEBサイトでアルゼンチン情報を広く紹介中。海外書き人クラブ所属。

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