不動産ニュース / その他

2008/9/19

2008年都道府県地価調査結果に業界・各社がコメント

 国土交通省が18日に発表した「2008年都道府県地価調査(基準地価)」について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。

■(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏
■(社)不動産流通経営協会理事長 岩崎芳史氏
■(社)不動産協会理事長 岩沙弘道氏
■三菱地所(株)取締役社長 木村惠司氏
■東京建物(株)取締役社長 畑中 誠氏
■住友不動産(株)取締役社長 小野寺研一氏
(順不同)

■(社)全国宅地建物取引業協会連合会会長 伊藤 博氏

 平成20年都道府県地価調査は、昨年までの上昇傾向とは打って変わって、全国平均で見ると住宅地(▲1.2%)、商業地(▲0.8%)ともわずかながらに下落している。これは今年年始の地価公示結果と比べても、この半年間で地価下落傾向となり、不動産取引市場の急速な転換が鮮明になってきた。
 これらの要因として、対外要因では、昨年の米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融不安による投資ファンド等のわが国への不動産市場への資金減少がある。国内的には、改正建築基準法施行による建築確認手続きの厳格化や建築資材の高騰による住宅着工の減少のほか、わが国経済そのものが景気後退局面に入っていることに他ならない。
 本会では、今後とも不動産市場が健全に発展し、全国的な資産デフレからの脱却を目指して、「土地住宅税制あり方研究会」(座長:山崎福寿上智大学経済学部教授)を設置している。これ以上不動産市況を悪化させいないためにも、同研究会の政策提言を踏まえ、今年の税制改正においては、「住宅ローン減税制度」の延長や拡充のほか、登録免許税・不動産取得税の軽減措置等、国民の住宅取得に直結する特例措置の適用期限延長等を強力に要望していきたい。
 いずれにしても、地価の安定的な持続確保と内需の柱である住宅市場の活性化はわが国経済にとっても極めて重要であり、今後発足する新内閣においても強力な施策の推進を期待したい。

■(社)不動産流通経営協会理事長 岩崎芳史氏

 今回の地価調査については、取引価格上昇、投資環境の変化、景気の減速等を背景とする需給バランスの調整の結果、三大都市圏・地方ブロック中心都市において上昇幅が大幅に縮小し、下落に転じた地点も少なくないなど、これまでの地価の持ち直しの兆しに陰りが見られた。また、地方圏全体では、住宅地・商業地ともに平均では依然下落の状況にある。
 この1年間におけるこれらの基調の変化は、世界規模の金融市場の混迷や米国経済減速の長期化の懸念、株式市場の低迷、原油をはじめとした商品価格の高騰などの影響による景気の減速感や、将来の所得に対する不安を抱えた消費者の購入意欲の後退によるものと考えられるが、金融機関における企業向けの不動産融資姿勢の変化による影響も少なくないと考えられる。これまで大都市圏を中心に堅調さを維持してきた不動産流通市場においても、その影響などによって取引の減少や売り物件在庫の増加等市場の悪化が急激に広がっている。
 今後、全国レベルでのバランスの取れた地価の安定化のためには、景気の回復が喫緊の課題であり、「安心実現のための緊急総合対策」の実施はもとより、(1)住宅ローン減税や不動産流通諸税の特例措置など住宅投資の活性化等に向けた税制の継続および拡充、(2)金利引き下げによる住宅金融の拡充、(3)不動産融資の迅速かつ的確な実行などにより、不動産流通市場の活性化を図ることが不可欠である。

■(社)不動産協会理事長 岩沙弘道氏

 今回発表された都道府県地価調査では、全国平均で、住宅地が前年比▲1.2%となり下落幅がわずかに拡大し、また商業地は昨年の1.0%上昇から、▲0.8%となり下落に転じた。三大都市圏では、地価上昇は継続しているが、商業地、住宅地とも上昇幅が大きく縮小するなど、地価上昇傾向は鈍化してきている。また、地方圏では、中心市街地活性化の施策などにより利便性の向上が実現した地区で上昇地点も見られたが、全体では依然として商業地、住宅地とも平均で下落している。
 サブプライムローン問題に端を発した金融市場の混乱ならびに世界経済の減速や、エネルギー・原材料価格の高騰などを受け、わが国経済は純輸出の伸び悩み、設備投資、個人消費の減速感が強まっており、先行きは厳しい状況にある。こうした中わが国不動産市場は、賃貸オフィスビル市場のファンダメンタルズは依然として健全である一方、住宅市場は経済の先行き不透明感や建築資材高騰などの影響から、特に分譲マンション市場では本年8月時点で首都圏の販売在庫が1万戸を超える状況にあり、また新規販売の契約率も低迷が続くなど大変厳しい状況となっている。
 このような状況のもと、政治情勢も不透明な状態が続いているが、日本経済が持続的に成長していくためには、内需主導型の経済成長モデルを確立しなければならない。まもなく誕生する新体制には、多くの課題に対処するため、的確な施策を講じることが求められる。特に、内需の大きな柱である不動産関連市場は、経済波及効果が大きいことから、その活性化に繋がる諸政策を迅速に進めなければならない。なかでも、住宅については個人消費をはじめ各方面へ与える影響も大きいことから、住宅取得促進減税措置の延長・拡充等、機動的な対応を期待したい。

■三菱地所(株)取締役社長 木村惠司氏

 商業地は、全国平均で2年ぶりにマイナスに転じた。これは、サブプライムローン問題に端を発した米国経済の混乱が長期化する中で、海外投資家等の投資資金が不動産市場から流出したことが最大の要因と考えられる。
 住宅地も、三大都市圏は各圏域とも平均で上昇したが、上昇幅は大きく縮小した。首都圏では郊外エリアを中心に分譲マンションの販売在庫が1万戸を超える高水準で推移するなど、マーケットの調整局面にあると認識している。今後はエリアや利便性、商品企画等による個別物件ごとの優劣がますます鮮明になると予想され、顧客のニーズに的確に対応することが一層求められる。
 今後も、原油・素材価格の高騰や円高等による輸出の伸び悩み、設備投資や個人消費の減速などから、実体経済の先行きが懸念される。これを打破していくためにも、不動産業界は不動産の価値を引き出す手腕がより一層求められることになるが、その後押しとして、都市再開発や住宅需要を促進し、投資資金の不動産市場への流入を喚起するような税制優遇や規制緩和等の政策運営に期待したい。

■東京建物(株)取締役社長 畑中 誠氏

 地価は、昨年まで回復基調にあったが、今回の地価調査において、景気の減速などを反映し、全国平均では住宅地・商業地ともに下落した。三大都市圏において地価は上昇しているものの、多くの地点で上昇幅が縮小してきており、地価動向の個別化、選別化が見られる。
 ここ数年、日本経済は緩やかな景気回復を続け、都市再開発などの都市・地域再生の進展や不動産証券化市場の拡大発展、グローバルな資金の流入により、地価は都市部を中心に持ち直してきた。しかし、サブプライムローン問題に端を発した米国の景気後退、金融不安、資源価格の高騰、国内政治の不安定などにより、このところ日本経済は不透明感を増しつつある。これらの影響を受け、住宅市場においては分譲マンションの完成在庫の増加や販売期間の長期化、不動産証券化市場においては一部投資の縮小など、厳しい状況が続いている。
一方で、オフィス市場では空室率にやや上昇傾向が見られるものの、依然高い稼働率を維持し、また、優良な住宅や希少性の高い投資不動産に対する潜在需要は底堅いものがある。
 このような状況下、今後、わが国の内需主導型の経済成長を維持させ、経済のグローバル化による国際競争力を強化するためにも、不動産市場の一層の活性化が不可欠である。そのため、官民一体となった都市・地域再生による魅力あるまちづくりの推進や不動産市場の安定拡大・発展に向けた規制緩和、税制支援などを強力かつ継続的に実施していく必要がある。

■住友不動産(株)取締役社長 小野寺研一氏

 地価は、足元では、サブプライムローンに端を発する金融市場の混乱、資金繰り難から建設・不動産関連企業の倒産などが相次ぎ、景気の悪化懸念もあって、市場は一時的な混乱の状態にある。
 金融が安定して、不動産市場の混乱が終息し、住宅実需の顕在化と、長期安定収益狙いの資金流入によって、市場が早期に正常化に向かうことを期待している。

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