東急不動産ホールディングス(株)代表取締役社長の大隈郁仁氏は24日、専門誌記者等と会見。2017年度以降の事業戦略について語った。
各事業を取り巻く現在の環境について大隈氏は「住宅は、低金利の追い風で足元はしっかりしているが、郊外と都心部の売れ行き差、湾岸マンションや田園都市線の各駅停車駅での売れ行きの落ち込みなど、実需層が付いてこないマンションが出てきた点に注意が必要となってきた。オフィスビルは、当社の主要エリアである渋谷は床が少ないので心配ないが、他のエリアでは今後の大量供給による賃料引き下げに備えていく必要がある」とした。マンションの供給スタンスについても「年間3,000戸という目標はあるが、収益基準は変えずに供給エリアは限定する。利益の取れない仕入れはしない」(同氏)。
都市事業を牽引する渋谷駅周辺での再開発と広域渋谷圏での開発による収益積み増しは、しばらくの間見込めないことから、それを補う目的で、17年度策定予定の次期中期経営計画では、仲介・管理などのストックビジネスを成長エンジンとして前面に押し出す。仲介事業では、首都圏・近畿圏に加え、地方都市での店舗展開を加速。管理事業は、マンション管理・施設管理の(株)東急コミュニティーと、賃貸管理の東急住宅リース(株)それぞれで、M&Aによる事業規模拡大を図る。
「競合他社の管理事業は、セグメントごとに会社が分かれているが、当社は住宅、ビル、商業施設、インフラ(空港)まで、あらゆる分野のノウハウがあるのが強み。公的施設の管理アウトソーシングも増えてきており、成長が見込める。東急住宅リースは、学生情報センターグループをM&Aしたが、管理ストックの積み増しだけでなく、学生寮の共同開発や大学統合による跡地の仲介や再開発など、グループのリソースを組み合わせたビジネスチャンスも期待できる」(同氏)。
また、開発物件をREITに売却し、その収益でさらなる開発を進めていくという「循環型再投資モデル」をさらに加速させるため、その受け皿となる自社グループのREITの資産規模を、早期に1兆円の大台に乗せたい考え。「私募REITも含めればあらゆるアセットに対応できるが、より大きなアセットを受け入れるためにも大きな受け皿は必要。AM、PM、BMなど関連ビジネス拡大も見込める。他のREITのM&Aも視野に入れていく」(同氏)。