分譲マンション事業の総合コンサルティングを手掛ける(株)トータルブレイン(東京都港区、代表取締役社長:久光龍彦氏)はこのほど、2017年前半戦のマンション市場を振り返りながら、同年後半戦の市場動向を予測したレポートを発表した。
同レポートでは、今年前半戦のマンション市場を(1)販売戸数は微増、都下が大幅増、(2)価格の上昇傾向は継続。マンション価格はアベノミクス前底値(11年)から30%上昇。ただし郊外は弱含み(3)売れ行きはさらに悪化。都下、埼玉・千葉など郊外が苦戦、(4)在庫も3年連続増加、と分析した。
前半戦に首都圏で新たに売り出されたマンションは226物件で、前年同期より47物件減。売れ行きは「好調」28%(前年同期:32%)、「まずまず」50%(同:40%)、「苦戦」21%(同:29%)と平準化が進んだが、これは市況の好転ではなく「苦戦のハードルが下がっていることや、プレ活動の反応から価格調整する物件が増えたため」と分析している。また、好調物件の理由の多くは圧倒的に「立地」だったが、苦戦物件の理由は「価格」「需給バランス」「立地(駅遠)」「集客難」など多様化が進んでいる。「新規発売が減っているにもかかわらず販売戸数が増えていることは継続販売物件が増えているということもあり、販売期間の長期化が懸念される」とし「売れ行きの急激な減速は明確で、今後の販売価格は慎重に見ていかざるを得ない」とした。
後半戦のマンション市場は、大手ディベロッパーの販売予定物件が溜っていることなどから、供給は年間4万戸程度(前年比10%増)に回復すると予測。売れ行き悪化により販売期間の長期化が進んでおり、大型物件や郊外物件は販売リスクとなり得ること、単身・2人世帯の増加に対し、コンパクト商品のシェアが変化がなく、需給バランスが良好であること、超富裕層と富裕層がターゲットとなる販売価格2億~3億円のハイグレードマンションの供給量がターゲットに対して圧倒的に少なく、商品総合力があれば有望であることなどを課題やチャンスとして指摘した。
こうした環境下でディベロッパーに求められるものとして同社は、(1)販売リスクの相対的に少ない好立地の小規模物件に積極的に取り組むべき、(2)一次取得のファミリー層ではなく、シングル・DINKS・パワーカップル・富裕層など新しいターゲット層をメインに、3LDK中心の商品企画を転換する、(3)販売はロングスパンで計画する、(4)ナロースパンの田の字プランはユーザーに飽きられており、ワイドスパン等商品企画の魅力付けが必要、(5)都心ハイグレード商品に過剰感はない、などと指摘。「好立地物件はより積極的に、そうでない物件はより慎重にと、ますますメリハリの利いた取り組み姿勢が必要」とした。