不動産ニュース / 調査・統計データ

2017/9/19

平成29年基準地価、業界各トップがコメント

 国土交通省が19日に発表した「平成29年 都道府県地価調査」結果を受け、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された。(以下抜粋、順不同)

■(一社)不動産協会 理事長 菰田正信氏
■(一社)不動産流通経営協会 理事長 榊 真二氏
■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏
■(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏
■三菱地所(株) 執行役社長 吉田淳一氏
■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
■東急不動産(株) 代表取締役社長 大隈郁仁氏
■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏
■野村不動産(株) 取締役社長 宮嶋誠一氏

■(一社)不動産協会 理事長 菰田正信氏

 今回発表された都道府県地価調査は、全国平均と住宅地で下落幅が引き続き縮小し、商業地は昨年の横ばいから上昇に転じた。特に商業地については、三大都市圏で上昇基調を強めるとともに、地方圏も下落幅が縮小し、下落から上昇へ転じる地域も増えた。我が国経済が緩やかに回復する中、経済活性化の芽が徐々に広がりを見せ始めつつあることの表れであると評価している。

 このような状況において、デフレからの確実な脱却と経済の好循環を実現するためには、さらなる都市の国際競争力強化と地方創生の推進が求められ、引き続き企業の生産性向上や都市・地方の活性化に向けた取組みを進めていく必要があると考えている。

 来年度には、商業地等の土地固定資産税について、据置特例をはじめとした負担調整措置が期限切れを迎えるが、地価の回復に伴い評価額の上昇が見込まれる中、据置特例が廃止されると大幅な増税となり、活性化に向けた取組み等を阻害することになりかねない。措置の延長等によって固定資産税の負担軽減を図ることが不可欠である。

■(一社)不動産流通経営協会 理事長 榊 真二氏

 今回の都道府県地価をみると、三大都市圏と地方四市の地価は、全用途平均で5年連続の上昇となった。全国的に雇用情勢の改善が続く中、住宅地は低金利や住宅ローン減税等の政策による下支え効果もあり上昇が継続、商業地は外国人観光客の増加等による店舗・ホテル需要の高まりやオフィス空室率の改善等による収益性の向上等から上昇基調を強めていることは、地価の安定的回復を示すものと評価している。

 東日本不動産流通機構(レインズ)によると、本年4月以降の首都圏全物件の成約状況は、前年比で平均価格が5%の上昇、取引件数はほぼ横ばいであり高水準な状況が続いている。取引の現場においても、個人の売り・買いの需要は底堅く、また法人の投資意欲にも相変わらぬ根強さが感じられ、足元の流通市場は堅調だ。今後も、金融緩和の継続や住宅取得に対する優遇措置等の政策が下支えとなり、不動産取引は活発に推移するものと期待され、地価はゆるやかな回復が続くものと見込まれる。

 わが国経済が緩やかに回復を続けるなか、さらなる成長力強化に向け、不動産流通業界には市場規模を8兆円に倍増することが求められている。来年4月には、既存住宅の安心を担保する新たな施策として、改正宅建業法による建物状況調査を活用する制度がスタートする。本制度は、既存住宅の信頼を高め市場活性化を促すものと期待され、業界を挙げて育んでいくことが重要であり、当協会ではその導入に向けて万全を期すべく準備を進めている。既存住宅が、良質で魅力あるものと評価され住宅市場を牽引する『新たな住宅循環システム』の構築に引き続き取り組んでいく。 

■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 伊藤 博氏

 平成29年の都道府県地価調査の結果は、全用途平均の下落幅が縮小し変動率にして0.3%のマイナスとなった。但し、平成22年以降の下落幅は継続して縮小し、用途別でも住宅地の下落幅は縮小、商業地においては10年ぶりに上昇に転じたことは、上昇基調への潮目を見通せる結果となったのではないか。

 地域別にみれば、三大都市圏、地方四市は概ね上昇基調を強めた。まだまだその勢いには及ばないものの地方圏の下落幅も縮小しており、地価の回復傾向は着実に全国的な広がりを見せていると言っていいであろう。

 さて、全宅連が実施したDI調査によると、地価の見通しはまだプラスであるが、その比率は実績値に比べ低くなっており、東京オリンピック前後に不動産市場の腰折れを懸念する声が多くみられた。

 また、ここ数か月の動きをみると好調だった中古マンションの成約価格が前月比を下回り、新築賃貸着工戸数も2ヶ月連続で前年比を割るなど、不動産市場に対する金融が締まってきたのではないかとの懸念もある。

 全宅連としては、地価回復の傾向を着実なものにすべく、雇用情勢の改善を追い風に引き続き住宅取得支援の推進を図り、平成30年度の税制改正に向けて適用期限を迎える各種税制特例措置の延長を要望する。さらに、今年から来年にかけて施行される、新たな住宅セーフティネット、改正不動産特定事業法、改正宅建業法、民泊新法などの国の施策を活用して、不動産取引市場の持続的な成長を後押して行きたい。

■(公社)全日本不動産協会 理事長 原嶋和利氏

 この度の都道府県地価調査結果をみると、ここ数年来、日銀のマイナス金利政策による住宅取得支援策に伴う需要の下支え効果や投資用融資緩和策の流れを受けて、引き続き、地価は三大都市圏や中枢地方都市を中心に、前年に比して上昇傾向や下落幅が縮小するなどの改善が認められた。

 特に中枢地方都市では、全用途において上昇幅が拡大しており、分けても商業地においては三大都市圏の上昇率を大きく上回るなど好調を維持している。

 その他、地方圏の地価についても、全体的に下落率が改善している点で評価できるものである。

 ただし、利便性の高い一部の地域を除き、下落傾向を示すところも多く、人口減少、過疎化といった構造的な問題を抱えている地域では、住宅地の地価もこれを反映して厳しい状況にあることは否めず、依然として地域間格差が認められる。

 我が国の景気は「緩やかな回復基調が続いている」との政府による基調判断が示されているが、政府におかれては、引き続き、デフレ経済からの早期脱却と地域経済再生の実現及び持続的な成長軌道に乗せるために、特に不動産流通の促進に見合う不動産取得税の見直し等をはじめとする税制改正や、労働市場の改革、雇用・所得環境の改善にむけた各種政策の更なる推進が望まれる。

 不動産業は国の基盤産業であり、国の繁栄には欠かせないものである。

 本会は、これからも全国組織としてのネットワークを活かし、地域に密着した信頼産業として、消費者が求める情報とサービスの提供に努め、不動産流通市場活性化の促進と国民の住生活、住環境の向上に鋭意取り組むとともに不動産業の健全な発展に貢献していく。

■三菱地所(株) 執行役社長 吉田淳一氏

 今回発表された都道府県地価調査では、三大都市圏において、商業地では総じて上昇基調を強め、住宅地でも前年に引き続いて小幅に上昇した。緩やかな景気回復基調が続く中、地価の回復が持続していると感じている。

 オフィスビル事業においては、働き方改革・生産性向上のための統合・集約、立地改善等、事業所の拡張・移転需要が引き続き旺盛であり、空室率は低水準で推移し、賃料も緩やかな上昇傾向が継続している。今後も街づくりを通じて、都市競争力向上に加え、時勢を反映した新しい働き方についても提案していきたい。

 建設工事中で竣工までに時間のあるオフィスビル計画への引き合いも強く、2018年秋竣工予定の「(仮称)丸の内3-2計画」はすでに9割のリーシングを完了している。本年6月に着工し2019年8月竣工予定の「(仮称)新宿南口プロジェクト」についても多くの引き合いを受けており、都内の交通利便性の高いエリアにおける事業所ニーズの強さを実感している。

 国内外からの来街者により高い繁華性を有する表参道エリアでは、当社として同エリア初となる商業施設「エムズクロス表参道」が8月に竣工し、有名ブランドのアジア最大の品揃えを備える日本初の旗艦店の入居が決まっている。

 ホテル事業については、訪日外国人等による旺盛な宿泊需要が継続しており、稼働率、客室単価ともに好調を維持している。多様化する需要に応える為、宿泊主体型のカジュアルラインとして「ザ・ロイヤルパーク キャンバス」ブランドを新たに設立した。新規ホテルの出店についても、京都・大阪等の人気観光地だけでなく、全国で積極的に取り組んでいきたい。

 住宅事業においては、低金利、住宅ローン減税等の各種優遇施策の実施、シニア層の買換えや共稼ぎ世帯の都心居住ニーズ等、分譲マンションの取得需要は引き続き堅調に推移している。本年7月に販売を開始した「ザ・パークハウス 本郷」等の都心高額物件の売行きは引き続き好調で、郊外の「ザ・パークハウス オイコス 金沢文庫」も本年10月の販売開始に向け、集客状況は好調である。

 優良な資産形成や都心へのアクセスが良好な立地での自己居住・セカンドハウス等のニーズに対応する資産形成用のコンパクトマンション「ザ・パークワンズ」ブランドも、第1弾である品川戸越・千代田佐久間町両物件が約5か月で完売した。引き続き、利便性の高い都心エリアで同ブランド展開を続けていく。

■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏

 先行き不透明な経済情勢が続くなか、持続的な景気回復とともに都心部や各都市の駅前再開発といった都市再生が推し進んだ結果、今回の地価調査では、東京都心や大都市圏を中心に全国で商業地が上昇に転じ、住宅地も昨年に続き下落幅が縮小するなど、総じて地価の安定的な回復傾向が見られたものと考える。

■東急不動産(株) 代表取締役社長 大隈郁仁氏

 今回の都道府県地価調査においては、三大都市圏では住宅地については小幅な上昇・商業地については上昇が強まっているとともに、全国的には下落幅が縮小し、かつ、商業地においては横ばいから上昇に転じるなど、回復基調である。これは、雇用情勢の改善やインバウンド需要の増加などを背景に、地価の回復基調がより鮮明になったものと捉えている。

 住宅地については、低金利や住宅ローン減税等の政策的支援により、総じて堅調に推移しており、上昇ないし下落幅の縮小がみられた。

 都心部を中心とした駅前や、再開発地域といったマンション適地の需要がますます高まっており、供給が希少な地域においては、上昇傾向が一段と強まっている。当社販売物件では、駅前再開発事業により更なる発展が期待される横浜駅西口から徒歩6分の『ブランズ横浜』、地下鉄御堂筋線中津駅直結という都心立地の『ブランズタワー梅田North』などが好調。

 商業地においては、国内外からの来街者の増加等により店舗やホテル等の需要が増加傾向であり、オフィス空室率の低下による収益性の向上、都心中心部における再開発の進展による繁華性の向上が見込まれた。

 当社は地価上昇の顕著な立地で開発を進めており、昨年に開業した『東急プラザ銀座』のほか、エリア特性に合わせた先進的な商業施設・オフィスを多数運営している。渋谷駅周辺では、3つの再開発事業を推進するとともに、渋谷を中心とした「広域渋谷圏」でのプレゼンス確立を目指している。また、浜松町・竹芝エリアにおいて、国家戦略特区に指定され約20万㎡の大型開発となる『(仮称)竹芝地区開発計画』を手がけており、優良立地における都心再開発の積極的な展開を図ってまいりたい。

 地方圏においては、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では三大都市圏を上回る上昇となり、その他地域においても下落幅の縮小傾向が継続している。交通利便性の向上や独自の取り組みなどを行っているエリアでは大きく上昇している。
 当社では、東急グループにて参画し、昨年に民営化が開始した仙台空港の運営や、投資が活発化しているニセコエリアでのリゾート展開、国内外の観光客が増加している沖縄での『ハイアット リージェンシー 瀬良垣アイランド 沖縄』など、需要が旺盛な地域での事業を推進している。また、中長期滞在型ホテル『東急ステイ』が地方へ初進出し、2017年秋以降に札幌、京都、博多において5施設の開業を予定している。

 2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に向け、企業収益の改善や、設備投資への資金流入、消費意欲の改善などにより、都心部のオフィス需要や店舗の出店については、継続して堅調な状態が続いているとの認識を持っている。

■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏

 訪日客の伸張等に伴う店舗・ホテル需要の増加、オフィス空室率の低下・賃料上昇等による収益性向上および良好な資金調達環境等を背景に、3大都市圏の商業地の地価は総じて上昇傾向が継続している。
 また、住宅地についても、雇用情勢の改善等により、東京圏を中心に地価は底堅く推移しており、今後も回復傾向はしばらく続くと見ている。

 このような地価の回復傾向を背景に、賃貸オフィス市場は空室率が低水準で推移し、賃料水準も緩やかに上昇している。分譲住宅市場においては、土地価格の上昇や建築費の高止まり等により住宅価格も高水準にあるが、都心部に限らず、駅前や商業施設等に近接するなど利便性の高いマンションの販売状況は旺盛な需要により引き続き好調を維持している。不動産投資市場は、良質な投資物件の不足により、過熱感が継続している。

 今後は、価格の高騰には十分留意しつつ再開発や建替え事業にも注力していく。

■野村不動産(株) 取締役社長 宮嶋誠一氏

 今回の地価調査では、全国的に住宅地の地価は総じて底堅く推移し、東京圏・名古屋圏では4年連続で小幅な上昇となった。商業地の地価は、インバウンド重要の増加等により店舗やホテル等の需要が旺盛であり、オフィスについても空室率の低下傾向、賃料水準の改善が引き続き見られるなど、不動産需要は旺盛で、総じて上昇基調にあるといえる。なお、地方四市では昨年に引き続き、住宅地、商業地ともに三大都市圏を上回る上昇傾向が見られた。

 住宅市場に関しては、首都圏における新築分譲マンションの販売価格は引き続き高い水準にあり、強弱はあるものの需要は概ね堅調である。利便性の高い都心立地や駅周辺再開発等による新築分譲マンションでは、引き続き価格上昇も見られる。この傾向は、首都圏のみならず近郊部や地方中核都市にも波及が見られ、共働き世帯やシニア層による需要は旺盛といえる。当社は、首都圏や関西圏に加え、地方中核都市も含めてコンパクトタウンや再開発事業への取組みを積極的に行い、街づくりを通じて社会に貢献していく。

 オフィスビル市場に関しては、空室率の低下傾向は継続しており、新規募集、改定ともに賃料上昇傾向が継続している。商業施設に関しては、東京都心部を中心にテナントの出店意欲は引き続き堅調に推移している。物流施設に関しては、首都圏エリアにおいて、今後大量供給が予定されているものの、先進的な物流施設への需要を背景とし、今後も堅調に推移するものと想定される。当社は、オフィスビル、商業施設、物流施設に関しても積極的に展開していく。

 住宅地、商業地ともに事業用地の取得環境は引き続き厳しく、今後の地価動向については、不動産市場の中長期的トレンドの指標として引き続き参考にしていく。

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都道府県地価調査

都道府県地価調査は、国土利用計画法による土地取引の規制を適正に実施するため、国土利用計画法施行令第9条にもとづき、都道府県知事が毎年9月下旬に公表する土地評価である。評価の対象となるのは全国の約2万地点の「基準地」である。

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