全宅連不動産総合研究所は26日、全宅連会館(東京都千代田区)で、2回目となる「空き家対策等地域守りに関する調査研究」講演会を開いた。
今回は、空き地管理や建築、不動産売買・賃貸仲介を手掛ける大里綜合管理(株)(千葉県大網白里市)代表取締役の野老 真理子氏が、空き地管理ビジネスと自社の地域貢献活動について語った。
同社は、空き地管理ビジネスのパイオニア。年2回の草刈り、年4回の見回り等を年額1万5,000円で請け負い、現在8,500件の空き地を管理し、同社売り上げの3分の1を占めている。同氏以下約20名の社員は、同事業や他の事業を通じて住民や地域の困りごとや役に立つことに“気づく訓練”を徹底しており、その気づきを通じて作り上げた約300もの地域活動に、社員全員が率先して取り組んでいる。
地域活動は、学童保育や地域美化活動、お祭りやコンサート、各種講演、野菜売りや朝市などのコミュニティビジネス、東日本大震災復興支援など多種多彩。社員達は、労働時間の約6割をこうした地域活動に割いている。また、社内の気づき力を高めるため、1日1時間の社内清掃を継続。そこから生まれた業務改善も1,000項目を超えたという。
「『それでよくやっていけるなぁ』と不思議がられますが、政治力も資本力もない当社が、地域の不動産の価値を上げるには、自社のマンパワーで地域のため、地域を良くするための活動をできる限り手掛け、ここは良いまちだと知っていただくしかない。その姿勢は創業から今まで変わりません」(野老氏)。バスロータリーでの誘導活動など、同社の活動が自治体の事業になったこともあるという。
当初は、お客さんの一部から「そんなこと(地域活動)ばかりしている会社には任せられない」などと非難されたり、ボランティア活動よりも仕事を優先したい社員が反発したこともあったというが「今では、地域の皆さんが応援してくれる。儲けようと無理させなくても、地域の担い手としての責任を果たすことで、自然と適正に儲かる会社になった」(同氏)。
同社は、年1回、1年の行動計画と売り上げ、利益、納税目標等を盛り込んだ経営計画書を発表し、それらと地域活動とを両立させることをミッションとしてきた。同氏は「地域活動が大きな商売につながることはないが、地域の人たちは『いつまでもいまの大里でいてほしい』と思っているはず。小さな商圏でも、小さな不動産会社が、ずっと商売が続けられるようがんばっていきたい」と結んだ。