国土交通省は4日、社会資本整備審議会河川分科会土砂災害防止対策小委員会(委員長:京都大学防災研究所教授・藤田正治氏)の3回目となる会合を開催。答申に向けたとりまとめを行なった。
同委員会では、令和元年台風第19号等近年の災害や気候変動等の影響を踏まえ、土砂災害における実効性のある警戒避難体制づくりをさらに促進するため、土砂災害防止対策基本方針の変更案について審議してきた。
平成30年7月豪雨で土砂災害による死者が出た箇所の8割強は土砂災害警戒区域に指定されるなど何らかの形で危険が周知されていた一方、令和元年東日本台風の土砂災害で人的被害や人家被害が発生した箇所の約4割が土砂災害警戒区域に指定されていなかった。その原因として、より詳細な地形データでなくては箇所を抽出できなかったこと、現在の指定基準には該当しなかったこと等が認められた。これらを踏まえ変更案では、基礎調査の結果の公表後は速やかに土砂災害警戒区域等を指定することが望ましいとしたほか、「基礎調査完了後も測量技術の向上も踏まえ、数値標高モデル等の高精度な地形情報等を用いて土砂災害の発生するおそれのある個所の抽出に努めるものとする」などとした。
土砂災害警戒区域等が指定された後、ハザードマップの作成が完了していない市町村や、住民のハザードマップの認知率も高くないことから、新たに「都道府県による土砂災害警戒区域等の指定後は、市町村は速やかにハザードマップに反映し、避難場所等の見直しを図るものとする」とした。また、平成30年7月豪雨後に被災地域で行なったアンケートで、自宅が土砂災害警戒区域に含まれていることを認識していた住民が2割にとどまっていたことから、都道府県に対して土砂災害警戒区域等を明示した標識の設置などにより、周知を徹底し、「住民の理解を深め、避難の実効性を高めることが重要」とした。
答申および変更案は、3月下旬めどに河川分科会から社整審に報告。4~5月にかけパブリックコメントを実施し、6月中旬~下旬にかけ基本方針を変更する予定。