不動産ニュース / 団体・グループ

2020/7/8

「孤独死に係る説明・告知の在り方」等で報告書

 (公社)全国宅地建物取引業協会連合会の不動産総合研究所は7日、令和元年度(2019年度)の「住宅確保要配慮者等の居住支援に関する調査研究報告書」を公表した。

 住宅確保要配慮者の中でも対象数が多い高齢者を対象に、住宅を斡旋する上での課題や個社で対応できる方策を18年度から検討してきた。19年度は、高齢者の入居を拒む一番大きな要因である「孤独死=事故物件」という風潮と、事故物件に対する明確な定義がないことに着目し「孤独死に係る説明・告知のあり方に係る考え方」としてとりまとめた。

 報告書では、「賃貸住宅は、そこに人が居住等し生活をする以上、そこで「死」という事実が発生することは不可避であり、高齢社会の進展や、自宅で最期を迎えることを希望する者の増加等も踏まえれば、賃貸住宅で『死』という事実が発生することは、通常にありうるということを基本としなければならない」とした。その上で「賃貸住宅内で以前死があったという事実があり、それが一人暮らしの者であったからといって、そのことのみをもってただちに事故物件となると考えることはできない」ことを確認すべきとした。

 また、心理的瑕疵の考え方については、裁判例では、「目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥」であるとされること、その対象となる事情は、個々の当事者、個々の物件(所在地や入居者の構成、周辺環境等)ごとに異なること、「瑕疵」とは物件が通常有するべき性能・価値の欠如を意味するものである以上、その要因となる事実は、賃貸物件一般にありうるものではなく、特定の物件において特別に生じうる特殊な事案であることなどを指摘した上で「賃貸住宅内で一人暮らしの者の死という事実が存在することが通常ありうるという前提に立てば、そのことだけをもって心理的瑕疵に該当すると評価することはできない」「発見に至る経緯や後日借り主が知る可能性などのプラスアルファの要素があるときに限り、心理的瑕疵と評価すべきである」「心理的瑕疵と評価される場合であっても、一定の期間経過後は、当該瑕疵は消滅する」などとした。

 これらを踏まえ、孤独死があった場合の説明・告知のあり方について報告書では、(1)孤独死については、原則として説明・告知の必要はない、(2)臭気等によって近隣から居住者に異変が生じている可能性が指摘された後に孤独死の事実が発覚した場合には、説明・告知をする必要がある、(3)(2)の場合であっても、次の借り主が、通常想定される契約期間の満了まで当該物件の利用を継続した場合には、貸し主はその次の借り主に対し説明告知する必要はない、(4)媒介事業者は、事業者としての通常の注意に基づき(2)の事実を知った場合に限り、(2)(3)と同等の取り扱いをするものとする、などと整理している。

この記事の用語

心理的瑕疵

不動産の取引に当たって、借主・買主に心理的な抵抗が生じる恐れのあることがらをいう。心理的瑕疵とされているのは、自殺・他殺・事故死・孤独死などがあったこと、近くに墓地や嫌悪・迷惑施設が立地していること、近隣に指定暴力団構成員等が居住していることなどである。

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