不動産ニュース / 団体・グループ

2020/12/11

全日、「空家対策大全」を公表

「全日空家大全」。全国の自治体等に配布するなどして空き家対策への意識喚起を行なっていく

 (公社)全日本不動産協会の専属研究機関である全日みらい研究所は11日、会員の空き家取引の実態を収集・分析した総合的な空き家対策資料「全日空家対策大全」を発表した。2019年度に同協会が発表した中期ビジョンに基づく活動の一環。全国の会員から空き家取引事例の情報を集めて分析、空き家取引の実態を詳らかにした。その上で、空き家対策に向けた政策提言をまとめた。

 全国の会員180社が空き家取引事例の情報を寄せた。回答会員の年間平均空き家取り扱い件数は15.7戸で、最頻値は約5戸。回答の8割が23戸以下となった。このうち、媒介契約を結んだ上で成約しなかった件数は平均4.6戸。同研究所所長の毛利信二氏は「取扱戸数の3~4割が成約していないことになる。一般的な取引に比べると著しく成約率が低い」とした。

 データ分析では、取引発生のきっかけ別や、取引不調に終わった原因別に、会員が感じた課題について調査。きっかけ別では、行政からの依頼に応じた取引したケースでは、財政支援を求める比率が22%と、所有者や買い手からの相談をきっかけとしたケースよりも高く、依頼に応じた支援が得られていないことを示す結果となった。

 このほか、各事例について、会員に対してメールや電話等で追跡調査を行ない、そこから得られた課題観や知見を「インプリケーション」(示唆的事項)として付与してリスト化。「個々の不動産取引事例を紹介するのではなく、そこから得られた知見を付与することで、応用しやすい資料とした」(毛利氏)。

 事例分析を通じて、空き家の適切な管理・処分について「地域社会においても一定の公益性を有するため、相続人・地域住民・自治体・国・関係事業者が連携して責務を果たすことが求められる」とした。

 空き家取引の主な問題点として「物件の正確な状況が分かりづらい」「空き家固有の付加的業務が多くコストがかさむ」「売り主が遠隔に所在する場合、売り主希望価格と成約可能な価格との乖離が大きく、成約まで時間がかかるケースも」「特に地方においては価格が低く、不動産事業者の得られる報酬がその努力に見合うものではない」といった要素を挙げた。

 その上で、政策提言として「空き家バンクに登録する段階で一定の物件情報を登録者に求め、当該情報を事業者に提供する仕組みの創設」、「空き家取引にかかかる固有の諸経費について国として実態を調査し、実費弁償の原則を明確にする」、「AI等も活用した新たな価格査定マニュアルの策定」など6項目を盛り込んだ。

 「全日空家対策大全」は同研究所ホームページよりダウンロード可能。

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