不動産ニュース / 開発・分譲

2022/5/17

築50年の賃貸住宅を構造から再生/三井不

「シャトレ信濃町」外観。従前の豊かな植栽を生かした

 三井不動産(株)は17日、(株)青木茂建築工房との業務提携による「リファイニング建築」の第6弾となる「シャトレ信濃町」(東京新宿区、総戸数35戸(賃貸住戸32戸))を報道陣に公開した。

 リファイニング建築は、旧耐震建物を解体することなく、現行の耐震基準を満たし、かつ建物の長寿命化も図る手法。建て替えと比較し、約70%のコストで設備、内外観を一新するのが特長。新たな躯体建築が必要ないため工期も大幅に短縮できる。三井不動産は、竣工後のサブリース等、事業面も含めた老朽化不動産再生コンサルティングを担当する。現在、運営中の竣工済の5棟については、賃料は近隣の新築相場の95%以上、稼働率は98%を維持している。

 「シャトレ信濃町」は、JR「信濃町」駅徒歩7分に立地。敷地面積約968平方メートル。1971年築、旧耐震基準の鉄骨鉄筋コンクリート造一部鉄筋コンクリート造地上9階建ての賃貸住宅で、従前の住戸数は21戸。再生後の延床面積約2,610平方メートル。改修竣工は2022年5月で、工期13ヵ月。建築当初にはなかった高さ制限、日影規制等の制約から、建て替えの場合は建物規模が5階に縮小され事業性が確保できないことから、オーナーが同手法による再生を決定した。

 同物件の特長である眺望の良さや外観、駐車場といった利便機能を損なわずに再生したいというオーナーの要望に応え、構造耐力上影響のない壁や建物正面側のバルコニー手すりを解体。改修後のバルコニー手すりは採光にも優れた軽量のポリカーボネート製を採用し、建物全体の重量を軽量化。美観を損ねないよう建物外周部は最低限の補強とし、袖壁補強と一部梁の炭素繊維補強により耐震性能を確保した。鉄骨鉄筋コンクリート造の躯体に対し、短い埋め込み深さで高い効果を発揮するアンカー「ディスクシアキー」も採用した。既存物件の豊かな植栽や、エントランスから南側の庭園が望める水盤など承継。外観は、階段室部分に暖色のアースカラーを用いるなど、植栽とのつながりを意識したデザインを採用した。

 住戸は、ワンフロアに3LDK(77~80平方メートル)3戸から、現在のニーズに合わせて各階1LDK(40~50平方メートル)4戸・2LDK(65平方メートル)1戸へ増やした。特殊樹脂を用いた軽量の遮音材を採用することで、遮音性能を向上。1階のラウンジ部分(87平方メートル)を、庭園が望める住戸に用途変更した。

 賃料は約45平方メートル・1LDKで月額約23万円(管理費込み)。平均坪単価は1万6,000円で、近隣の新築相場と同等もしくは若干増額。現在3戸が成約済み。なお、3ヵ月の期間限定で、同物件内にリファイニング建築のサロン兼モデルルームもオープンしている。

 また、青木茂建築工房の協力のもと、東京大学新領域創成科学研究科・清家 剛教授との共同研究によりCO2排出量削減効果の評価を実施。既存躯体の約84%を再利用することにより、既存建物と同規模に建て替えた場合と比較して、全体でCO2排出量を約72%削減できることが明らかとなった。同社では、直近の建築コスト上昇なども鑑み、コスト削減と同時にCO2削減も望める手法として、今後も推進していく考え。

エントランスから南側の庭園が望める水盤など従前の特性を承継
1LDK住戸内

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