不動産ニュース / 政策・制度

2022/7/15

国交省、国土形成計画策定に向け中間とりまとめ

 国土交通省は15日、第24回国土審議会(会長:永野 毅東京海上ホールディングス(株)取締役会長)を開催。計画部会(部会長:増田寬也日本郵政(株)取締役兼代表執行役社長)が策定した「国土形成計画(全国計画)中間とりまとめ」を報告した。

 中間とりまとめでは、国土の課題として、人口減少・少子高齢化への対応、巨大災害リスクへの対応、気候変動への対応(カーボンニュートラル(CN)の実現)、東京一極集中の是正、地方の暮らしに不可欠な諸機能の確保、国際競争力の強化、エネルギー・食料の安定供給等を挙げた。

 これら課題を踏まえ、今後の重点施策として、「地域の関係者がデジタルを活用して自らデザインする新たな生活圏~地域生活圏~」「多様なニーズに応じあらゆる暮らし方と経済活動を可能にする世界唯一の新たな大都市圏~スーパー・メガリージョンの進化~」「産業の構造転換・再配置により、機能を補完しあう国土~令和の産業再配置~」「住民自らが話し合い官のサポートで人口減少下の適正な土地の利用・管理の方向性を示す管理構想の推進方策を強化して全国展開 (国土利用計画)」を掲げた。これらを進めることで、持続可能な国土の形成、地方から全国へとボトムアップの成長、東京一極集中の是正の実現に寄与したい考え。

 地域生活圏とは、地域ごとに(1)官民の多様な主体が共創して、(2)デジタルを徹底活用し、(3)生活者・事業者の利便を最適化しつつ、(4)横串の発想という4つの原理で取り組みを独自に考え行動し、将来にわたり暮らしに不可欠な諸機能の維持・向上を図る新しい生活圏を指す。市町村界に捉われず、(1)~(4)の原理をうまく取り入れる(取り組みの参考となる人口規模の一つの目安は10万人)。地域生活圏の実現においては、関係人口の拡大・深化や女性活躍によって多様な人材の確保することがポイントになるとした。

 スーパー・メガリージョンの進化は、東京・名古屋・大阪を含む一連の圏域が、リニア中央新幹線の開業、5Gの活用や自動運転の実現によって、一体化した世界最大級の新たな大都市圏を形成する。多様な暮らし方と経済活動を提供できる大都市圏として世界に例を見ない存在を目指す。

 令和の産業再配では、地域生活圏の構築と新たな大都市圏の形成を目指す中で持続可能な経済を実現巨大災害のリスク軽減を、CN実現のための産業転換を契機に、同時に解決する。民が力を最大限発揮し、官が支えていくことが不可欠であるとした。

 また、共通して取り入れるべき課題解決の原理として、「民の力を最大限発揮する官民共創」「デジタルの徹底活用」「生活者・事業者の利便の最適化」「分野の垣根を越えること(いわゆる横串の発想)」を示している。

 委員からは「グランドデザインがほしい」「交通に頼ったスーパー・メガリージョンについてはやや時代遅れな印象がある」「首都機能のバックアップ体制の構築が求められる。その上でデータの利活用が重要になる」「地域生活圏の考え方を明確化してほしい」「農山漁村の在り方についての記述が少ない」「自然環境の保全や景観の形成に対する言及がもっとほしい」等の意見があった。これらを踏まえ永野会長は「とりまとめの“哲学”が伝わる書きぶりが求められる。活動の主体がどこにあるのか、明瞭であるべきだ」等と話した。

 今後は、2023年6月頃の新たな国土形成計画の閣議決定を見据え、具体的対応策の検討を同部会で進めていく。増田部会長は「食料確保、国土強靭化、交通ネットワークとカーボンニュートラルの組み合わせなどについてさらなる審議を進めていく。また、スーパー・メガリージョンは誤解を招かないような整理が必要だ。データ活用についても一層の議論を進めたい」などと述べた。

 国土交通大臣の斉藤鉄夫氏は「取り組まなければいけない課題が山積している中、新たな国土形成計画の基本的な方向性を示していただいた。この方向性を踏まえ、政府一丸となって新たな計画策定に取り組む」と話した。今後、同氏は永野会長、増田部会長と共に、岸田文雄内閣総理大臣に今回の中間とりまとめを報告する。

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国土形成計画

国土の利用・整備・保全を推進するための総合的かつ基本的な計画で、国土形成計画法に基づき策定される。計画は、全国計画と広域地方計画で構成される。

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