不動産ニュース / 政策・制度

2022/10/14

国土形成計画、直面するリスクを踏まえた目標を設定

 国土交通省は14日、新たな国土形成計画(全国計画)の策定に向け、国土審議会計画部会(部会長:増田寬也日本郵政(株)取締役兼代表執行役社長)の13回目の会合を開催。来年の最終とりまとめに向けての検討を開始した。

 7月に中間とりまとめを策定し、岸田文雄内閣総理大臣に報告した。岸田総理大臣からは、新しい資本主義のグランドデザイン・実行計画やデジタル田園都市国家構想の基本方針を踏まえ、これを反映して総合的・長期的な国土づくりの方向性を示すとともに、中間とりまとめで提示された「地域生活圏」「大都市圏の再構築」「産業の再配置」について具体的対応策の検討を進めることなどを指示された。事務局は、総理指示等を踏まえて国土形成計画の基本的な考え方として、(1)わが国国土が直面するリスクと構造的な変化、(2)目指す国土の姿、(3)国土の刷新に向けた重点テーマ(仮)に分けて整理し、その案を示した。今回は、(1)(2)の内容について議論した。

 (1)では、人口減少、少子高齢化の加速化、災害リスクの高まり、気候危機など、わが国が直面するリスクの高まりや、コロナ禍を経たデジタル化の進展等による暮らし方・働き方の変化、緊迫化する国際情勢など、国土をめぐる社会経済状況は、時代の転換点ともいえる重要な局面に立っているとの認識を強調することを提案した。地域の持続性、安全・安心を脅かすリスクの高まりとして、地方の危機、巨大災害リスク、気候危機について言及。コロナ禍を経た暮らし方・働き方の変化としては、デジタル化の進展と課題、場所にとらわれない暮らし方・働き方、新たな地方・田園回帰の動き、地方での暮らしの魅力などを示した。

 (2)は、(1)を踏まえ、「デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくり」「巨大災害、気候危機、緊迫化する国際情勢に対応する安全・安心な国土づくり」「世界に誇る多彩な自然と文化を育むグリーンな国土づくり」を目標とした。
 「デジタルとリアルの融合による活力ある国土づくり」では、デジタルの徹底活用により、場所の制約を超え、多様な暮らし方や働き方を自由に選択できる国土づくりによる個人と社会全体のWell-beingの向上、リアル空間とサイバー空間の融合による先端技術サービスの実装、人と人、人と地域、地域間のネットワーク強化による地域共創などを掲げた。「巨大災害、気候危機、緊迫化する国際情勢に対応する安全・安心な国土づくり」では、切迫する巨大地震、激甚化・頻発化する水災害等に対する事前防災、事前復興の観点からの地域づくり、2050年カーボンニュートラル、30年度46%削減目標の実現に向けた地球温暖 化緩和策の推進などを示した。「世界に誇る多彩な自然と文化を育むグリーンな国土づくり」においては、ネイチャーポジティブの考え方による国土利用・ 管理、陸域・海域における生態系の保全・回復などを盛り込んだ。

 委員からは「人口減少は影響がかなり大きい。その影響をもう少し深く分析して、計画に盛り込む必要がある」「地政学的リスクを踏まえた内容にすべき」「デジタル化が遅れている人たち対する考え方が必要」「コンパクトシティ+ネットワークの中での自然との共生を明らかにするべき」「インフラの要素が少ない。今の時代に合ったインフラの定義も含め、さらなる整理が必要だ」「デジタル田園都市の『田園都市』の関する内容がさらにほしい」等の意見が挙がった。

 今後は、新たな国土形成計画(全国計画)の策定に向け、中間とりまとめ等を参考に、都道府県および指定都市からの計画提案を募集する。その内容も踏まえて、14・15回目(11月17日、12月22日)は、重点テーマの深掘り等を行なう。年明けからは、項目整理等、最終とりまとめの作成に向けた作業に取り掛かる予定。また、若年層からの意見を取り入れるため、国土の将来ビジョン等について意見交換を行なうためのイベント「国土を若者が考える!グランド・デザイン・ダイアローグ2022」を 11月17・ 23日に開催する。

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国土形成計画

国土の利用・整備・保全を推進するための総合的かつ基本的な計画で、国土形成計画法に基づき策定される。計画は、全国計画と広域地方計画で構成される。

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