不動産ニュース / 調査・統計データ

2023/1/25

マンション共用部の状態、購入予定者8割強が関心あり

 (一社)不動産流通経営協会が25日に公表した「マンションの共用部分に関する消費者意識調査」の結果によると、マンションの購入予定者の約8割が、「関心がある」と回答。その半面売却予定者が共用部分の建物状況調査を「実施したい」という回答は3割弱にとどまるなど、購入・売却で意識に乖離があることが分かった。同協会では、マンションの資産価値の維持に向けて、共用部の維持保全とその情報が的確に購入予定者に伝わることが重要だとする。

 宅地建物取引業法改正により導入された建物状況調査制度が導入後5年を経過したが、戸建てについては制度利用が進んでいる一方で、マンションについては現状、戸建てと比較して利用があまり進んでいない。その一因として、既存マンションの売買取引の際、区分所有者で共有している共用部分の建物の状態をきちんと把握することが現実的に難しいことが挙げられる。そこで、同協会では、点検・⾒直しやマンションの共⽤部分の⾒える化に向けた基礎資料とすべく、共⽤部分の建物の状態・管理に関する消費者の意識を把握するために同調査を⾏なった。

 同調査は、1都3県に現在居住する世帯主の年齢が25歳以上(回答するマンションの所在地につていは不明)を調査対象に、2022年11⽉7〜8⽇の期間、インターネットを通じてスクリーニング調査および本調査を実施。回収サンプル数は、スクリーニング調査・本調査併せて5,150サンプル。内訳は、5年以内のマンション購⼊者(新築515、既存1,545)、同10年以内(新築515、既存1,545)、5年以内のマンション売却経験者515、5年以内のマンション売却予定者515。

 「共⽤部分の状態」への関⼼について、購⼊予定者は、「とても関⼼がある(35.6%)」と「やや関⼼がある(47.7%)」を合わせて8割強と、⾮常に⾼い結果となった。購⼊者の関⼼を築年数別で⾒ると、築浅の既存マンション購⼊者ほど、関⼼が⾼い傾向にあった。築浅ほど購⼊価格に占める建物価格の割合が⼤きいため、建物の状態に対する意識が⾼いと考えられる。

 「共⽤部分の状態の把握」に関する意識では、購⼊予定者が共⽤部分のうち把握しておきたい部位は「給排⽔設備の詰まりや劣化の状態(57.3%)」、「屋根や外壁等のひび割れ、⾬漏りの状態(55.8%)」と、⾃分だけでは把握しにくい部位が上位に。次に「エントランス、共⽤廊下の⽼朽化の状態(41.7%)」、「エレベーターのメンテナンスの状態(37.4%)」と、⽣活していくうえで⽬に付く部位が続いている。購⼊者が共⽤部分のうち把握しておきたい部位を築年数別にみると、築浅の物件購⼊者ほど、「エントランス、共⽤廊下の⽼朽化の状態」、「エレベーターのメンテナンスの状態」など、⽣活していくうえで⽬に付く部位が⾼く、「給排⽔設備の詰まりや劣化の状態」は、築20〜30年の物件購⼊者のスコアが⾼い。⼤規模修繕の時期を意識しているためと考えることができる。

 既存物件購入者が共用部分の状態を把握したかどうかについては、「充分できていた」と「まあまあできていた」で約6割を占める⼀⽅、「あまりできていなかった」と「全くできていなかった」も約3割となった。築年数別では、築20年未満の既存物件購⼊者は、「⼗分できていた」と「まあまあできていた」の割合が全体よりも⾼くなっている。

 建物状況調査に関する売却者等の意識について、売却予定者は「共⽤部分の建物状況調査を、「実施したい(27.8%)」は3割弱と、同調査の必要性の認識が乏しい結果となった。実施したくない理由としては、「費⽤がかかるから」がかなり⾼く、売却側の意識を端的に示した結果となった。

 購⼊後の「共⽤部分の管理」に関する意識では、マンション共⽤部分の管理に関して「特に問題はなかった(既存のみ58.7%)」となった⼀⽅で、問題があったとする回答の中では、「修繕積⽴⾦や管理費が思った以上に値上がりする」が約16%とやや⾼かった。築年数別では、築5年未満の新しいマンション購⼊者で最も⾼いスコアになっており、次いで築5〜10年未満のマンション購⼊者が⾼い。

 これらの結果から、マンションの共⽤部分の建物の状態について買い主の関⼼は⾮常に⾼いと考えられる。築浅の物件購⼊者ほど、⽬に付く部位を中⼼に関⼼が⾼く、築古物件購⼊者は、購⼊時において建物の状態に対して「関⼼が低い」一方、その裏返しでマンションの共⽤部分の状態について「把握できていなかった」という認識も持っている。

 同協会では、築年数が経過した⾼経年マンションを含めてマンションの流通を円滑化するためには、マンションの資産価値が維持されることが重要。そのためにマンションの共⽤部分の建物の状態の維持、保全がしっかり⾏なわれるとともに、消費者に対して的確な情報を提供できるか、が政策的には⼤きな課題であるとしている。

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