国土交通省は29日、「『ひと』と『くらし』の未来研究会 Season3」の5回目の会合を開催。とりまとめに向けて議論した。
コロナ禍において居心地の良い日常の「幸せなくらし」を実現するには、各地域に住まい、集う「ひと」に着目し、「くらし」に関するあらゆる産業分野や地域づくりの担い手が連携することで、地域の新たな価値や可能性を創造していくことが必要と認識。その実現に向けて、民間の実務者の最先端の知見や事例を集め、従来の行政にはない発想・視点から自由に議論する場を設けるため、2021年3月に同研究会を立ち上げた。
22年10月から開始したSeason3では、「幸せな暮らし」の実現に向けての課題解決をテーマに検討を行ない、(1)コミュニティ財としての空き家等の管理・活用、(2)築年数の古い建築物の活用の円滑化、(3)多様なファイナンスの活用、といった論点で議論を進めてきた。特にメインテーマとなった(1)では、サブリース事業者が居住者やオーナー、他の事業者等と連携し、良好なコミュニティ形成や地域の活性化、ビジネスの創出等を行なうことを「共創型サブリース」と定義。優良事例の発掘、普及を図ることの重要性等についても言及した。
また、この間に地域の関係者と共創して地域づくりやコミュニティづくりに取り組む不動産事業者等を表彰する「地域価値を共創する不動産業アワード(不動産・建設経済局賞)」を創設。23年3月に低未利用不動産の有効活用、中心市街地・農村活性化等の6部門で表彰を行なうとともに、アワード大賞および特別賞を選定した。
とりまとめ案では、これまでの検討内容を踏まえ、新たな地域価値創造に向けた方向性として(1)不動産事業者等の「共創」の見える化の推進、(2)コミュニティ財としての空き家の管理・活用の推進、(3)地域の宝となる不動産を地域で守り育てるためのファイナンスの充実を示した。
その実現に向け講ずべき施策として、(1)においては「地域価値を共創する不動産業アワード」での表彰・奨励、業界団体と連携した集合住宅のコミュニティ形成の状況を客観的に評価できる基準等の検討を挙げた。(2)では、所有者等が空き家の管理を第三者に委託する場合の標準的な契約モデルやガイドライン等の検討、地方部での住宅宿泊管理業者の担い手育成に向けた規制緩和の実施等を示した。(3)では、「京町家カルテ・プロフィール」および「京町家ローン」の仕組みを参考としたモデル事例の創出を掲げている。
同研究会のコアアドバイザーからは「アワードで表彰された事例をもとに、同様の取り組みをいかに普及させていくかが重要」「地域価値を創出する上で賃貸管理事業者、不動産オーナー、入居者等のかかわるすべてのステークホルダーがフラットな関係で、ともに共有財である空き家等を活用して価値を創出していくことがポイントになる」「人口が少ないエリアで理解や普及が進まない傾向がある。いかにその課題を解決するかが重要」「共創サブリース等の考え方が一般化していくこと望む」等の意見が挙げられた。
同研究会は今回が最後。同省は今後も年1回程度、コアアドバイザーとの間で進捗状況について報告し、フォローアップを行なう場を設定することで、着実に「地域価値共創」の進展を図る方針。同省不動産・建設経済局参事官の峰村浩司氏は「今後もアワードで表彰された先駆的な事業者はもちろん業界団体の皆さんとも連携しながら、地域価値を共創するうえで必要な課題解決や必要な制度設計等を進めていく。地方での展開を進めるために、自治体や地域金融機関とも意見交換を行なう機会を設けたい」などと話した。