不動産ニュース

2023/10/5

11人に1人が性的少数者の“LGBTQ”

 生活の基盤となる「住まい」の選択は、誰にとっても自由であるべきだ。しかし、その住まいを確保するために、性的少数者(LGBTQ)の人たちはさまざまな困難に直面し、不自由を感じているのが現状だという。

 追手門学院大学地域創造学部地域創造学科准教授・葛西リサ氏が約1800名の LGBTQ当事者(以下、「当事者」) を対象に「セクシュアリティを理由に不動産会社へ行くことへの不安がある」との問いに、約40%が「強く感じる」「やや感じる」と回答。「セクシュアリティを理由に将来の住まい確保に不安があるか」との問いにも、約40%が「強く不安に感じる」「やや不安に感じる」と答えており、性的少数者の多くが住宅問題に不安を抱えていることが分かった。
 「(賃貸物件で)不動産事業者やオーナーに隠れて同居したことがある」と回答した同性カップルも、約61%に上っている。

 福岡市を中心に4万戸超の賃貸物件を管理する(株)三好不動産(福岡市中央区、代表取締役社長:三好 修氏)は、社員研修をきっかけにLGBTQの部屋探しが困難であるという現状を、社員共有の課題として認識。LGBTQ当事者である、同社テナント事業部テナント営業課の原 麻衣氏がLGBTQ対応の旗振り役となり、社内外の啓発に取り組んでいる。
 LGBTQのシンボルであるレインボーマークを店頭に掲げ、スタッフは全員レインボーバッチを装着。社内のデスクにレインボーフラッグも掲げるなど、全店でLGBTQフレンドリーである姿勢を示している。「本来、LGBTQを特別視する必要はないはず。これまで入居後のトラブルが発生したこともない。理解不足が原因で入居を断られることがないよう、引き続き管理物件のオーナーにはしっかりと説明していく」(原氏)。

 当事者とアライ(LGBTQを理解・支援する人)のスタッフにより運営されている不動産会社(株)IRIS(東京都新宿区、代表取締役CEO:須藤啓光氏)。同社を訪れるユーザーの約9割は当事者、そのうち約7割が同性での入居を希望する人たちだ。同性カップルの場合、日本ではまだ法的な婚姻関係になれないため、一般的にルームシェアという定義に当てはめられることが多いが、「ルームシェア物件の流通数は、2人入居物件の7分の1以下程度。築年数も古く、立地が良いとはいえない物件も少なくない」(須藤氏)という。
 同社はまず、当事者に住みたい部屋の条件を聞き、その物件のオーナーに個別に交渉。その際に、偏見や思い込みなどがある場合は、きちんと説明することでオーナーの不安を解消する。当事者の属性を伝えつつ、契約形態、保証内容などを確認し、賃貸借契約へと進めていく方法で、当事者の「希望に叶う」物件への入居につなげている。

 詳細は、(株)不動産流通研究所が発行する「月刊不動産流通2023年11月号」の特集を参照。葛西准教授の調査結果とともに、LGBTQの部屋探しをサポートする上記2社を含めた4社の事例を紹介している。

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