不動産ニュース / 政策・制度

2024/3/26

令和6年地価公示、団体トップ等がコメント

 国土交通省が26日に発表した「令和6年地価公示」について、業界団体・企業のトップから以下のようなコメントが発表された(以下、順不同)。

(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏
(一社)不動産流通経営協会 理事長 太田陽一氏
(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏
三井不動産(株)代表取締役社長 植田 俊氏
三菱地所(株)執行役社長 中島 篤氏
住友不動産(株)代表取締役社長 仁島浩順氏
東急不動産(株)代表取締役社長 星野浩明氏
野村不動産(株)代表取締役社長 松尾大作氏
東京建物(株)代表取締役 社長執行役員 野村 均氏
森トラスト(株)代表取締役社長 伊達 美和子

◆(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏

 令和6年の全国地価は、景気回復の背景を受け全用途平均・住宅地・商業地ともに3年連続で上昇、上昇率が拡大し、資産デフレからの脱却が鮮明化した。
 特に、三大都市圏では上昇率が拡大、地方圏にも波及しており、全体でも上昇率が拡大傾向を示す等、人口減少下にあっても持続的成長を期待できる結果であった。
 全宅連不動産総合研究所における不動産市況調査でも直近の土地価格動向DIにおいても実感値でプラスの4.7ポイントであることからも明らかに不動産市場を取り巻く環境も好調の兆しであることがうかがえる。
 一方、日銀では、賃金の上昇と物価の安定的な推移が見通せるものとして17年度続いたマイナス金利政策を解除し、金利を引き上げることを決定、今後は、住宅ローン金利や消費者の住宅取得意欲に影響を及ぼさないか注視していく必要がある。
 今後全宅連では、本年4月より施行される相続登記の義務化など所有者不明土地等の解消に向けた各種制度の確実な実行を望むものであり、また、昨年12月に施行された改正空家特措法に基づく宅建協会への管理活用支援法人指定への支援や相談体制の構築等により、社会的な課題である空き家、空き地等の解消に向けた取り組みに邁進していきたい。

 ◆(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏

 令和6年地価公示では、全国平均において、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、かつ上昇率も拡大した。
 圏域別にみると、地方四市の平均変動率が全用途平均・住宅地・商業地ともに11年連続で上昇するなど堅調を維持しており、中でも福岡市は住宅地、商業地ともに目覚ましい上昇率を見せている。このほか、札幌市、仙台市の上昇基調も極めて安定的に継続しており、三大都市圏と併せて、こうした中枢都市の動向が一部周辺地域に波及する傾向も続いている。

 個別の動向としては、流山市おおたかの森駅エリアが東京圏における住宅地の上昇変動率最大値を示した点が目に留まる。同エリアは「駅前送迎保育ステーション」などの子育て支援施設や回遊性のあるウォーカブルなまちづくりで近年注目されており、こうした取組みが今回しっかりと地価に反映されたことで他の地域のまちづくりプランにも好影響を与えるだろう。このほか、熊本県大津町及び菊陽町の地点において、いわゆる“半導体需要”が30%以上の地価上昇をもたらした点にも瞠目している。

 折しも2016年より続いたマイナス金利政策の解除が決定されたところであるが、足元での短期プライムレートの上昇は起きないと見ており、目先の住宅ローン市場に大きな影響はないと思われる。しかしながら、巨視的には既に金利上昇局面に入っているとも考えられ、これに伴い大都市圏を中心にさらなる地価の上昇が生じるのはほぼ確実であり、さらには変動金利の利率上昇も遠からず現実のものとなろう。
 このような理解のもと、本会としても引続き時流と市場動向を見定めながら時宜に即した対応を行っていく所存である。

◆(一社)不動産流通経営協会 理事長 太田陽一氏

 本年の地価公示では、景気が緩やかに回復している中、全国平均では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。住宅地は、三大都市圏のいずれも上昇率が拡大し、地方四市においても高い上昇率を維持しており、これに伴い周辺部にも上昇の範囲が拡大している。

 東日本不動産流通機構の統計によると、首都圏中古マンションの成約価格(平方メートル単価)は46ヵ月連続、成約件数も9ヵ月連続で対前年比上昇が続いている。足元の首都圏中古戸建住宅の成約価格は、ほぼ横ばいを維持し、成約件数も総じて上昇傾向に入った。当協会としては、日本銀行によるマイナス金利政策の解除が今後の市場需給に及ぼす影響について引き続き注視してまいりたい。

 その上で、わが国経済を持続的な成長軌道に乗せる上で、景気の回復と相まった地価の底堅い推移が重要であり、内需の牽引役である住宅・不動産流通市場のさらなる活性化に引き続き取り組んでまいりたい。

◆(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏

 今回発表された地価公示では、全国平均は、全用途平均、住宅地、商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率も拡大した。地域や用途により差があるものの、都市部・地方部ともに上昇基調を強めている。コロナ禍からの脱却やインバウンド観光の回復等に伴う、我が国経済の緩やかな回復が地価に反映されたものと認識している。一方で、国際情勢や、金利の上昇、海外経済の下振れ懸念等によって、経済の先行きは不透明な状況にある中、今後の地価動向についても十分に注視していく必要がある。

 また、甚大な被害をもたらした能登半島地震によりまちづくりにおける防災性能向上の重要性を再認識するとともに、少子化・人口減少といった構造的な課題にも直面する中、デフレから完全に脱却し、新たな成長型経済に移行していくためには、引き続き安心・安全なまちづくりを通じて様々な社会課題の解決を経済成長のエンジンに変えていく必要がある。

 とりわけ、不動産分野におけるGXやDXの一層の促進によるイノベーションの創出等も図りながら、都市再生の推進による我が国の国際競争力の強化、更新等も含めた良質な住宅ストックの形成、不動産市場の活性化を進めて行くことが不可欠である。

◆三井不動産(株)代表取締役社長 植田 俊氏

 今般発表された地価公示では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。また、三大都市圏・地方圏においても、上昇が継続し、上昇基調を強めています。
 都市部においては、コロナ禍以降、インバウンドを含め人の流れが活発化し、経済が回復基調にあることが、今回の地価公示上昇に反映されていると考えています。オフィスにおいては出社回帰の動きがみられるほか、ホテルや商業施設における集客がコロナ禍前以上の水準で推移、さらに、住宅については堅調なマーケットに支えられて引き続き好調です。足元もこの動向は継続しており、今後のわが国の経済回復に一層寄与すると考えております。また、都市部以外においても、大手半導体メーカーの工場が進出する地域や、Eコマース事業伸長により、大型物流施設用地周辺での地価上昇も見られ、新たな需要創造により経済が活性化されていくということも、今回の地価公示で注目すべき点と考えています。
 先月には日経平均株価が過去最高値を更新し、日銀によるゼロ金利政策も解除されましたが、バブル崩壊後の「失われた30年」にピリオドを打ち、デフレから完全脱却ができるかどうか、2024年はその見極めをする勝負の年だと考えています。デフレのもとでは、付加価値創出のための努力が報われず、中々イノベーションを起こすのは困難でした。しかし、賃金上昇も伴った持続的・安定的なインフレに移行することで、投資の拡大、イノベーションや付加価値の創出、そして、その付加価値をお客様に正当に評価いただく、という好循環が生み出されます。この好循環のもと、日本経済が持続的に成長していくことを期待しています。
 当社グループは、これまでも、日本橋におけるライフサイエンスや宇宙領域での「場」と「コミュニティ」の提供などを通じて、集まる人々や企業のイノベーションや付加価値向上のお手伝いを行い、共に成長してきました。また、スポーツ・エンターテイメントの力を活用するなど、コロナ禍が明け再認識された「リアルの価値」を最大限に高めるミクストユースの「行きたくなる街づくり」も推進しております。
 今回の地価上昇については、我が国の経済活動の回復が反映された結果ととらえています。この経済活動の回復に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして、国富増大に結び付いているとも言えます。当社グループとしましても、イノベーションや付加価値を創出することで、日本の産業競争力強化に貢献してまいります。

◆三菱地所(株)執行役社長 中島 篤氏

 令和6年地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続上昇し、上昇率が拡大した。利便性や生活環境に優れた地点の上昇傾向が継続していることや、インバウンド需要を背景とした上昇が目立つ地価動向であったと認識している。
 足元では、日経平均株価の上昇、企業による力強い賃上げ、マイナス金利政策の解除など日本経済が大きく転換しようとしている。この動きを不動産業界全体の好機と捉え、本質的な価値提供を続けていきたい。

 分譲住宅は、都心の高額物件の需要が引き続き旺盛であり、都内では「ザ・パークハウス 千代田六番町」の販売が好調に推移している。大阪では、梅田駅前の再開発事業「グラングリーン大阪」至近に計画中の「ザ・パークハウス 大阪梅田タワー」の反響が大きい。賃貸住宅では、フレキシブルな働き方が社会に根付いたことに伴い、居住者が24時間使用出来るコワーキングスペースを併設した「The Parkhabio SOHO」シリーズの引き合いが強い。

 順調なインバウンドの回復を背景に、ホテルやアウトレットも好調に推移している。
 ホテルでは、インバウンド比率がコロナ前を上回る水準になっており、市況を牽引している。今年2月に開業した「ザ ロイヤルパークホテル アイコニック 名古屋」や、今年5月に開業予定の「ザ ロイヤルパークホテル 銀座6丁目」などでもこの旺盛な需要を取り込んでいきたい。アウトレットにおいても、インバウンド比率が高まっており、「御殿場プレミアム・アウトレット」などが好調。昨年12月は御殿場を含む複数施設にて過去最高の月商を記録した。

 オフィスは、経済活動の正常化が一段と進んだことで、出社率が上昇傾向にあり、丸の内エリアへの集約移転や業容拡大による増床の動きが活発化している。同エリアの空室率は昨年12月時点で2.88%と低水準を維持しており需要は底堅い。今期は東京駅前の「Torch Tower」の他、渋谷や赤坂でも新たに大型複合ビルを着工した。オフィス、商業、ホテル、エンタメなど多様な機能をハード・ソフト両面から整備し、人・企業を呼び込み、巻き込みながら、新しい価値を生み出し続けるまちづくりを実現したい。

◆住友不動産(株)代表取締役社長 仁島浩順氏

 国内経済は、物価の上昇が浸透しつつある中、企業業績の拡大や賃金の上昇期待の高まりなど、景気は緩やかな回復基調が持続している。
 こうした中、商業地では、ホテルや商業店舗の需要が回復したほか、東京のオフィスビル市況も、企業の出社回帰や優秀な人材確保に向けた、働きやすいオフィス環境整備を目的とした移転、増床需要が一段と強まっている。
 住宅地は、資材高などを反映して戸建やマンションの販売価格上昇が続くものの、住宅取得支援策の継続などが下支えとなり、希少性の高い都心や生活利便の高い地域を中心に一定の需要が保たれている。

◆東急不動産(株)代表取締役社長 星野 浩明氏

 今回の地価公示では全国の全用途平均は3年連続で上昇した。アフターコロナの人流回復を受け、都心部を中心にオフィス需要、店舗需要、そして利便性の高い住宅地などは地価の回復基調が続いているほか、再開発事業等が進展している地域の地価が上昇している。また、インバウンドを含めた観光需要の回復でリゾート地の地価が上昇している地域も目立つ。

 用途別でみても三大都市圏(東京、大阪、名古屋)では商業地、住宅地とも3年連続で上昇し、その上昇幅も昨年よりも拡大している。商業地では当社がオフィスビルを展開する東京都心5区、特に当社のホームグラウンドの渋谷区のオフィス空室率は低い状態が続いており、オフィス需要は好調だ。JR渋谷駅に直結予定の「職・住・遊」を兼ね備えた大規模施設「Shibuya Sakura Stage」をはじめ、東急グループで渋谷駅周辺での「100年に一度の再開発」として大規模再開発を進めてきたオフィスの需要は好調が続いている。「Shibuya Sakura Stage」で7月に予定する「まちびらき」に向け、渋谷駅周辺のにぎわいは盛り上がると期待している。
 さらに渋谷駅を中心に半径2・5キロメートルのエリアを指す当社の重点エリアである「広域渋谷圏」では、渋谷が「外国人観光客の訪れたい街第一位」になるなど、インバウンドを中心に観光需要が活発で人流回復が続いている。当社では「Shibuya Sakura Stage」に中長期型滞在ホテル「ハイアットハウス東京 渋谷」を2月に開業し、外国人の需要を中心に好調が続いている。今後、4月に東急プラザ表参道原宿「ハラカド」が開業するなど広域渋谷圏の賑わい創出を進めるほか、MIT(マサチューセッツ工科大学)のプログラムと連携したスタートアップの育成など、ハード・ソフト両方の力を合わせて「国際観光都市渋谷」作りの一助を担っていく。
 関西では3月23日に北大阪急行が延伸するのに伴い、同日、新駅「箕面萱野駅」に直結する商業施設「みのおキューズモール STATION 棟」を開業するなど、利便性の高さを生かし、地元の方々を中心に愛される施設を育てていく考えだ。

 住宅地は利便性の高い地域、住環境に優れた地域などの住宅需要は堅調。当社も東京ではJR十条駅直結の超高層駅前複合再開発事業のマンションである「THE TOWER JUJO(ザ・タワー十条)」など、今後は都心部の再開発を中心に事業展開していく計画だ。また東急新綱島駅に直結する商業施設併設型のシニアレジデンス「グランクレール綱島」を2023年11月に開業するなど、利便性の高さに着目した不動産開発を積極化している。
 関西では大阪市中心部で日本初となる冷凍・冷蔵宅配ボックスを採用したタワーマンション「ブランズタワー大阪本町」を開発するなど、大阪中心部のマンション需要の獲得を進めている。

 地域別に地価の上昇地点をみると北海道、特に札幌市近郊の好調さが目立つ。2030年以降に予定される北海道新幹線の札幌駅への延伸を見据え、札幌駅周辺を中心に市内で開発が進んでいるほか、新千歳空港近くでの半導体工場の開発などもあり札幌市周辺でも住宅地、商業地にも地価上昇の流れが波及している。当社も札幌の中心部「すすきの」の玄関口で2023年11月、ホテルやシネマコンプレックスなどの入る複合商業施設「COCONO SUSUKINO」を開業した。環境先進型の分譲マンション「ブランズ新札幌」を開発・販売するなど、注目度が高まる北海道内でも積極的に開発事業を進めている。

 中長期的な不動産市場については、足元ではロシア・ウクライナ情勢などによる世界情勢の不安定化、国際経済動向などのマクロ要因、国内では日銀のゼロ金利政策解除による住宅ローン金利の上昇、人手不足や資源高などの動向を注視する必要があるが、不動産市況は回復基調が続くだろう。中長期的には少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等、不動産市場を取り巻く環境の変化が続くが、国内外で環境への意識が高まるなか、不動産市場では今後も「環境」が大きなテーマになるとみている。当社はハードだけでなく当社グループの持つ幅広い事業領域を生かしたソフトサービスという付加価値を組み合わせて事業展開を進めていくとともに、再生可能エネルギーの活用のほか、ZEBやZEHなど環境に配慮したオフィスビルやマンションの開発を進めるなど、今後も積極的に「環境経営」を進めていく方針だ。

◆野村不動産(株)代表取締役社長 松尾大作氏

 今回の地価公示は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも、3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。住宅地については三大都市圏・地方圏のいずれも3年連続で上昇し、三大都市圏においては上昇率が拡大。地方圏では、地方四市が11年連続で上昇した。商業地については大阪圏が2年連続で上昇、三大都市圏・地方圏いずれにおいても3年連続で上昇し、上昇率も拡大した。
 住宅市場に関しては、引き続き需要が堅調であることに加えて、マンション供給数が減っていることもあり、需要と供給のバランスが取れていることから売れ行き好調な状況が続いている。日銀が「マイナス金利政策」解除などの政策修正を発表したことを受けて、今後の金利上昇も予想されるが、当社のお客様の多くが変動金利の住宅ローンを利用されており、同ローンの過去の変遷を見る限りでは急激な上昇になるとは考えづらいことから、この影響は大きくないと考えている。但し、建築費高騰は今後も継続すると考えられることなどからも価格下落も想定しにくく、価格に見合った付加価値のある商品を企画していく必要がある。お客様のニーズが益々多様化する中、今後は「サステナビリティ」や「激甚化する災害」に対応した設備も一層求められてくる。
 オフィス市場に関しては、2025年に東京での新規供給が集中するものの、23区全体のマーケット規模と過去からの供給量を鑑みると、需給バランスが急激に悪化することは考えづらい。当社主力ブランドのPMOを例に話すと、コロナ禍を経て出社や採用を増加している企業が増えてきており、PMOに加えて、サービス付き小規模オフィスのH1O、時間貸しシェアオフィスのH1Tの組み合わせにより、コロナ後の働き方の多様化にも対応出来ていることから、リーシングも順調に推移している。
 2025年にいよいよ竣工予定の「芝浦プロジェクト」S棟では、ワーカーの皆様が多様で新しい働き方を実現できるように、「TOKYO WORKation」をテーマに、都心で空・海・緑を圧倒的に感じられる立地特性を活かした新しい働き方を実現する。ビルの高層階1フロアの約1,500坪全てを「テナント様専用の共用施設」として用意するなど様々な工夫を予定している。
 ホテル市場に関しては、単月ではコロナ前の2019年を上回る訪日外国人数の月も出てきており、ホテル稼働率やADRも高い水準で推移している。商業施設についてはコロナ後の人流回復を受けて店舗需要が回復し、売上高が伸長している。
 物流市場に関しては、4月からの労働規制強化により、長距離ドライバーが不足する2024年問題を眼前に控えている。一方でEC拡大により、業務荷物量は増加傾向にあり、引き続き、物流オペレーションの自動化導入など、物流・荷主企業の抱える課題への解決策を今後も提供していく。
 当社グループでは、「将来自分たちが、どのような価値を社会やお客様に提供している企業グループになりたいのか」の目指す姿を明確にするため、2030年をターゲットとするグループビジョンとして「まだ見ぬ、Life&Time Developerへ」を掲げている。不動産開発や関連サービスの提供を通じて、お客様一人ひとりの様々な生活「Life」や、お客様一人ひとりの過ごす時間「Time」に寄り添うことを大切にしてきた。様々な社会課題に直面し、お客様の生活スタイル・価値観も多様化する中で、当社も変化していく必要がある。自らも変革していくことで、新たな価値を創造し、お客様に多様な付加価値を提供できる不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。
 地価公示は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

◆東京建物(株)代表取締役 社長執行役員 野村 均氏

 今回発表された地価公示は、地域や用途により差があるものの、三大都市圏や地方圏でも上昇率が拡大傾向となるなど、地価は全国的に上昇基調を強めている。これは社会経済活動の正常化が一層進むなか、好調な分譲マンション市場に加え、ホテルや店舗需要の回復、オフィス需要の底堅さ、再開発による利便性向上エリアの増加が背景にあると考えられる。

 オフィスマーケットは、好調な企業業績などを背景に、オフィス回帰や業容拡大、人材確保を目的とした好立地・ハイグレードオフィスの需要は引き続き底堅く、空室率も低下傾向にある。新規大型ビルの稼働率も高く、特にサステナビリティやウェルビーイングなどに対応した高付加価値のオフィスビルは今後の需要も一層増大すると見ている。当社も八重洲・日本橋・京橋エリアや渋谷エリアで地権者の皆様と進めている再開発事業において、高い環境性能とワーカーのウェルビーイングなどに配慮した快適なオフィスビルづくりを進めている。

 ホテルや商業施設は、個人消費の回復やインバウンド需要の拡大などにより、国内の人流も増え、観光地や全国主要都市を中心に、ホテルの稼働率や飲食店舗の売上が増加するなど、この先も回復基調の継続が期待できると思われる。当社は今年、ヒルトンのフラッグシップ・ブランド「ヒルトン・ホテルズ&リゾーツ」として京都初進出となる「ヒルトン京都」をオープンする。同ホテルは京都市中京区の河原町三条に位置し、客室数330を超えるラグジュアリーホテルであり、今後、京都観光の拠点の一つとして重要な役割を担うと同時に京都経済の発展にも貢献するものと考えている。
 物流施設は、施設選別の目が厳しくなりつつあるなか、自動化、冷凍冷蔵、環境性能、ウェルビーイングなどの先進性・機能性・快適性を備え、「2024年問題」などの物流課題解決に資する付加価値の高い施設が一段と求められている。

 分譲マンションマーケットは、建築費高騰や土地代の上昇などにより価格は上昇したものの、低金利の継続やローン減税等の支援策を受け、共働き世帯の増加等もあいまって、市場は好調を維持している。特に、資産性を重視する富裕層やパワーカップル層を中心に、都心部や駅近物件の販売は好調が続いている。
 当社等が大阪で開発を推進し、今年竣工を迎える「Brillia Tower 箕面船場 TOP OF THE HILL」「Brillia Tower 堂島」は、いずれも将来の資産性を重視した顧客層から高い評価を受け、販売は好調である。具体的には、「Brillia Tower 箕面船場 TOP OF THE HILL」は、北大阪急行延伸部の新駅となる「箕面船場阪大前」駅にペデストリアンデッキで直結し、駅前整備進展による将来の利便性向上による資産性に、「Brillia Tower 堂島」は、日本初となるフォーシーズンズホテルと一体となった超高層複合タワーという希少性に高い評価をいただいている。

 先日発表された日銀の政策変更による金利上昇はそれほど大幅なものにはならないと見ており、当面不動産市場への影響は少ないと思われる。その他、地政学的リスクや為替変動の影響、国内外の物価動向や人手不足問題等、今後の景気への不安要素もあるが、アフターコロナとなった現在、社会経済活動がさらに活発化し、原材料上昇分の製品価格転嫁、賃金上昇などが進むと、商業地、住宅地、工業地を問わず利便性の高いエリアを中心に、地価はさらに上昇基調を強める可能性がある。
 地価動向には引き続き注視するとともに、当社はいつの時代もマーケットを重視し、お客様のニーズを的確に捉え、お客様が満足する商品の提供と人々が安全・安心・快適に過ごせるまちづくりを推進していく。

◆森トラスト(株)代表取締役社長 伊達 美和子

商業地の全体感
 商業地の地価は、全国平均、三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)平均、地方圏平均いずれにおいても3 年連続で上昇し、上昇率が拡大した。また、地方四市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)は、11年連続で上昇し、上昇率が拡大した。
 都市部においてオフィス需要が底堅く推移したこと、観光地においてインバウンドを含む観光客の回復による店舗需要の増加、再開発事業の進展するエリアにおける利便性・繁華性向上への期待感などから、商業地の地価は全体的に上昇基調を強めている。

注視される動向
 東京都心では、23 区全体の地価は3 年連続で上昇し、上昇率が拡大した。複数の大規模オフィスビルの竣工に加えて大規模な再開発事業が進行中の虎ノ門エリアや、国内外の富裕層による高額消費が活況な銀座エリアにおいては、出社率の回復による底堅いオフィス賃貸需要、インバウンド需要の拡大期待による店舗需要の高まりと旺盛な投資需要の継続を背景に、地価は2 年連続で上昇傾向となった。
 地方においては、主要都市と有名リゾート地を中心に、人流の増加とインバウンドを含めた消費回復による店舗需要の高まりと再開発事業の進展が起点となり、地価上昇トレンドが継続している。インバウンド需要がけん引する地域としては、京都府京都市、大阪府大阪市心斎橋・なんば地区、長野県白馬村、再開発による発展に期待が集まる地域としては、大阪府大阪市梅田地区、長崎県長崎市などが特に注目エリアといえそうだ。

総括と今後の展望
 世界経済は緩やかな減速傾向にあり、国際情勢においては中国経済の動向、米国大統領選挙など見通しの難しい要素がいくつか存在する状況にある。日本では先日、日銀からマイナス金利政策の解除が発表され、金融政策の正常化にむかう歩みが始まった。不動産市場にも少なからず影響を与えるトピックが散見される一方、日本企業の業績は総じて好調で、インバウンド需要の拡大も見込まれることから、好条件の不動産の引き合いは堅調に推移し、地価の持続的な上昇にも寄与すると考えられる。
 東京都心3 区のプライムエリアにおいては、フレキシブルな働き方への対応や従業員エンゲージメント向上などを目指したオフィスの移転需要、富裕層向けの高い資産性を有するハイグレードな分譲住宅の需要などが継続していることから、地価は上昇傾向で推移していくと予想される。
 地方においては、京都や大阪など主要観光都市と、北海道ニセコ地区や長野県白馬村など有力リゾート地を中心に、インバウンドの盛況や再開発の進展に伴い、地価の上昇が続くものと考えられる。
 一方で、観光客の増加によって住民生活が深刻な影響を受けるオーバーツーリズムが社会的課題となっているエリアも散見される。観光産業の持続的な発展にむけて、受益者負担による「宿泊税」の法定目的税化や定率制の導入など、地域が主体性をもって観光需要と足元の課題に対応することが急務である。
 日本における観光産業は、日本経済の発展を中長期的にけん引する役割が期待されている成長産業である。インバウンド消費額など多くの指標でコロナ流行前の実績を超える結果が現れ、新たなステージを迎えている今こそ、強靭な観光インフラの構築が求められている。官民連携のもと、地域社会の健全な発展にも資する取り組みを推進することが重要な局面だ。
 日経平均株価が史上最高値を更新するなど、日本経済の好循環に国内外から期待が集まる中、当社は長期的な視点に立ち、都市の価値向上に貢献していく。

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