三井不動産グループで事業継続力強化支援サービスを提供するアンドレジリエンス(株)は28日、マスコミを対象にしたオンラインセミナーを開催した。
同社は2023年1月より、災害等の出来事を動画により疑似体験し、取るべき行動にどこまで気付けるかを定量的に評価、行動力を点数化して見える化する「災害時行動力の見える化ツール」(以下、「見える化ツール」)を提供している。24年7月までに2万人超に利用された同ツールを利用した企業・組織の結果を基に、同社プリンシパルコンサルタントの伊藤 毅氏が解説した。
災害対策の基本はBCPの策定といわれているが、同社の調査によると、実際に策定している企業は16年7月で19.8%、24年7月が19.8%と8年間で4.3ポイントしか増加していない。さらに、策定以降に計画見直しを実施している企業は44.9%にとどまり、内容が最新の状態に更新されていない懸念も確認された。
「見える化ツール」を用いてビジネスパーソン2万693人の災害時行動力を採点したところ、平均点は100点満点中46.8点。これはとるべき行動の半分も書き出せなかったことを意味しており、「人命安全確保に向けた必要な対応もできない」(伊藤氏)レベルだという。
なお、自社のBCP策定の有無について回答があった社員のデータを比較してみたところ、策定している企業・組織の平均点が47.9点、未策定が47.7点と両者間にはほとんど差がなく、BCP策定有無が適切な行動力につながっていない実態が明らかとなった。
さらに、災害発生直後にすべき行動について気付けた割合を分析したころ、「避難誘導」「対応体制の設置」「応急救護の実施」といった、人命安全確保に直結する発生直後の初動行動の回答率がいずれも4割を下回った。これについて伊藤氏は、「総務等が指示してくれるだろうという待ちの姿勢となり、自発的に行動をすることを考えていないということがうかがえる。BCPがあることで、危機感を持たずに指示待ちをしてしまっている」と解説した。
伊藤氏は、「初動の遅れは、結果としてその後すべての対応が後追いとなり、事業再開の大幅な遅れを引き起こす」と指摘。建物設備の被害がわずかだったとしても、人命を守れなければ復旧再開は数ヵ月単位で遅延するため、初動行動の迅速性を確保すること、迅速な行動や判断につながる情報の入手について検討・実施することが重要である、とした。
また、BCPを策定しても、それがマニュアルの押し付けであっては行動を変えるのは難しいと述べ、「どうやるのか(How)からスタートするのではなく、何のために(Why)、何を目的に(What)、誰が(Who)、何に対して(Where)…といった具合に、動機付けから取り組みを進めていくことで、自発的な行動をとってもらうことができるようになる」と、思考の転換を求めた。
最後に、災害発生時の対応の段取りを話し合いながら役割分担と事前対策を全員で話し合い、対策の実施状況を毎年確認し、できていなものは再度検討するという取り組みを実施し、行動力評価の社員平均点が76点を獲得している企業の例を紹介。“自分事化”して考え、実践することが重要であると説明した。