不動産ニュース

2024/9/17

令和6年基準地価、業界各トップがコメント

国土交通省が17日に発表した「令和6年 都道府県地価調査」結果を受け、業界団体・企業のトップが以下のコメントを発表した(以下抜粋、順不同)。

■(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏
■(一社)不動産流通経営協会 理事長 太田陽一氏
■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏
■(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏
■三井不動産(株) 代表取締役社長 植田 俊氏
■三菱地所(株) 執行役社長 中島 篤氏
■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏
■東急不動産(株) 代表取締役社長 星野浩明氏
■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏
■野村不動産(株) 代表取締役社長 松尾大作氏
■森トラスト(株) 代表取締役社長 伊達 美和子氏

■(一社)不動産協会 理事長 吉田淳一氏

 今回発表された都道府県地価調査では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。また、地方圏においても上昇幅の拡大や上昇傾向が継続するなど、地域や用途により差はあるが、地価の回復傾向が全国的に進んだ。我が国経済の緩やかな回復が地価にも反映されたものと認識している。一方、海外景気の下振れリスクや物価上昇、金融資本市場の変動等が経済に与える影響等にも留意しつつ、今後の地価動向については注視していく必要がある。

 少子化・人口減少をはじめとした構造的かつ深刻な課題にも直面する中、デフレからの完全脱却と持続的な経済成長に向け、賃上げや国内投資拡大の流れをさらに加速し、我が国経済を「成長型の新たな経済ステージ」へと移行させていかなければならない。そのためには、まちづくりにおけるDXやGXの加速やイノベーションの創出、都市の国際競争力の一層の強化や防災性能の向上、豊かな住生活の実現等が極めて重要であり、急激かつ大幅に建築費が高騰する状況等にもある中、そうした取組みを確実に進めるために必要な施策を講じていくことが不可欠だ。

■(一社)不動産流通経営協会 理事長 太田陽一氏

 本年の地価調査は、全国の地価が全体として上昇基調を強めていることが大きな特徴と言える。なかでも、地方四市を除く地方圏の全用途平均が32年ぶりに上昇に転じたことは、今後の不動産流通市場の動向をはかる上で明るいサインである。

 一方で足元の既存住宅の流通市場においては、東日本不動産流通機構によると、首都圏マンションの成約件数は対前年で2ケ月連続の減少、また成約価格においても51ケ月ぶりに前年同月を下回っていることから、より一層、今後の不動産価格の動向とともに消費者の住宅取得ニーズの変化等に注目する必要がある。

 堅調な住宅需要を反映した住宅地の地価上昇が継続しているところ、需要を下支えする低金利環境が物価上昇や金融資本市場の変動等の影響により、今後どのように推移するか十分注意する必要がある。地価が安定的に推移することを通じて、経済を成長軌道に乗せていく上で、住宅・不動産流通市場が果たす役割は重要である。
 当協会としても内需の牽引役として、安全・安心な不動産取引ができる市場の実現とさらなる活性化に鋭意取り組んでまいりたい。

■(公社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 坂本 久氏

 令和6年の都道府県地価調査は、全用途平均が3年連続で上昇し、上昇幅も拡大しており堅調な結果であった。
 住宅地は、低金利環境の継続などにより大都市圏を中心に住宅需要が底堅く推移し、また、商業地も店舗・ホテルなどの需要が引き続き旺盛であり、オフィスでも収益性が向上し、地価上昇に寄与している。
 景気が緩やかに回復するなか、地域差はあるものの全国的に地価の上昇基調が継続している。デフレ経済からの完全脱却と、全国的な地価上昇を堅持し、「賃金と物価の好循環」を確実なものとするための果断な政策実行が望まれるところである。
 全宅連では、先般公表された『不動産業による空き家対策推進プログラム』の柱である「流通に適した空き家等の掘り起こし」と「空き家流通のビジネス化支援」に資するため、宅建協会と協働し、空き家所有者の相談体制強化や、空き家対策の担い手育成への取り組みを通じて、全国的な空き家・空き地の解消と地域活性化を目指していく所存である。さらに、令和7年度の税制改正においては、住宅需要への影響に鑑み、子育て世帯等に対する住宅ローン減税の拡充等に鋭意取り組んでいく。

■(公社)全日本不動産協会 理事長 中村裕昌氏

 令和6年の都道府県地価調査においては、全国の全用途平均、住宅地、商業地ともに3年連続で上昇し、上昇幅も拡大した。また、三大都市圏に加えて、地方四市、とりわけ福岡市の上昇基調は住宅地、商業地を通じて勢いを増しており、その他の地方圏においても全用途平均において平成4年以来32年ぶりに上昇に転じるなど、地域・用途による差は見られるものの、全体としては地価公示に続いて地価の回復傾向が鮮明になったといえる。

 今回、用途別の全国変動率において、住宅地では前年に続いて沖縄県の恩納村と宮古島が高い伸び率を示したほか、商業地では熊本県大津町の肥後大津駅周辺地点において前年の32.4%をさらに上回る変動率33.3%と、僅か2年のうちにおよそ1.75倍に地価が上昇するという瞠目すべき状況が見られた。隣接する同県菊陽町においてかねてより資本投下を進めるTSMCの関連企業であるJASMの第2工場建設が決定したことを受けたものと考えられる。さらに、こうした地価上昇の波及は菊陽町及び隣接する合志市に比して、大津町の方が開発規制の緩やかな非線引区域が広いことも要因の一つといえるだろう。
 このほか、長野県白馬村の白馬駅周辺、岐阜県高山市の高山駅周辺、東京都台東区のつくばエクスプレス浅草駅周辺、そして京都市中京区の京都河原町駅周辺で変動率25%以上の大幅な地価上昇が見られたが、いずれもインバウンド需要のV字回復がもたらした効果と言えるであろう。また、東京都中野区の中野駅周辺(“100年に一度の再開発”)、東京都渋谷区の渋谷駅周辺(「広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)構想」)、福岡市博多区の博多駅周辺(「博多コネクティッド」計画)など、大規模な再開発事業が進展する地点でそれぞれ20%近い上昇を示すなど、これらのプロジェクトが如実に地価に反映していることも目に留まる。

 このように、企業誘致や観光資源、さらには良好な市街地再開発や都市計画によって人の集積、賑わいを生み出すことが土地の、ひいては「まち」の価値に直結する好例として大きな関心を持って動向を見守っている。

■三井不動産(株) 代表取締役社長 植田 俊氏

 先日発表された都道府県地価調査では、全国の全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大しました。三大都市圏、地方圏ともに上昇傾向が続き、景気回復の影響が全国的な地価上昇に波及した結果となりました。今回の地価上昇については、我が国の経済活動の回復が反映された結果ととらえています。この経済活動の回復に伴い需要が創出され、日本の産業競争力強化、そして、国富増大に結び付いているとも言えます。

 都心部においては、底堅い需要に支えられた住宅マーケットの好調さや活況なインバウンド需要などが地価上昇に反映されました。また東京駅周辺などの再開発事業が進行するエリアの地価上昇も継続いたしました。大規模再開発事業は、わが国の経済活動を大きく牽引するものであり、国際競争力の強化に貢献し、今後も経済回復に好影響をもたらすと期待しています。
 地方圏での上昇は、昨年に引き続き、各地域の特色を活かした産業創造の進展が一因と考えます。半導体関連企業の進出が進む地域や、物流施設需要が高まる地域での地価上昇は、わが国の産業競争力強化に寄与する動向ではないでしょうか。

 世界では、大きなパラダイム転換が生じています。デジタルシフトによる行動変容やAIの発展は、これからの世界を一変させるインパクトをもって日々、加速度的な進化を遂げています。加えて、地政学リスクの高まりや、日本においては、インフレ社会と金利のある世界への転換、新しいワークスタイルの定着、気候変動への対応など、これからも一段と激しい環境変化が予想されます。また、本年は「失われた30年」からの脱却に向けた勝負の年でもあります。

 当社グループとしては、このような環境の変化を大きなチャンスととらえ、付加価値の創造力において圧倒的な力を発揮していきたいと考えております。「不動産デベロッパー」の枠を超えた「産業デベロッパー」として、日本の産業競争力の強化・新産業の創造を通じて、新たな社会的価値と経済的価値の創出を両輪で実現してまいります。

■三菱地所(株) 執行役社長 中島 篤氏

 令和6年都道府県地価調査は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇幅も拡大した。賑わいの向上が期待される地点の上昇傾向が継続していることや、インバウンド需要を背景とした上昇が目立つ地価動向であったと認識している。
 国内経済の回復が進んでいることが地価に反映されているものと考えているが、足元では本格的なインフレが根付きつつあり、企業活動の成長が期待されると同時にその真価が問われるビジネス環境となっている。

 地価上昇のひとつの要因として、主要都市におけるオフィスの空室率低下や賃料上昇が挙げられるが、経済の回復が続き、オフィスは適切な人材を確保し優れた経営を行なっていくための投資という見方が強まっている。当社としては、そうしたニーズに応える本質的な価値提供を進め、付加価値をきちんと評価いただくことで、丸の内エリアをはじめとしてオフィス賃料水準の上昇トレンドをつくっていく。直近では、弊社が事業の代表企業を務める「グラングリーン大阪」が9月6日に先行まちびらきを迎えたが、大阪駅前に4.5haにも及ぶ公園とイノベーション拠点を整備する本プロジェクトに対しては、多くの企業が環境価値とビジネス創発の可能性を評価のうえ入居を決めていただいたと認識しており、こうした持続可能な取り組みがオフィスの事業成長には重要と考える。

 また、商業地の地価上昇に表れている通り、円安を背景としたインバウンド需要の回復・拡大を受け、ホテルや商業施設は好調を継続している。「御殿場プレミアム・アウトレット」は2023年度に売上1,000億円を突破し、同施設を含む複数のアウトレットモールにおいてコロナ前を含めても過去最高の売上を記録している。
 工業地では大型物流施設用地需要による地価への影響が見られるが、半導体関連産業の伸長やeコマース市場の拡大を取り込みつつ、物流の2024年問題の解決に資する効率性を備えた、持続可能な物流網・施設の整備が求められている。当社としては次世代モビリティの受け入れを想定した高速道路IC直結の基幹物流構想を進めており、既に関西圏(京都府城陽市)・東北圏(宮城県仙台市)で事業を始動している。

 最後に、地価上昇が続く住宅地について、分譲マンションは需要が堅調な一方、供給は限られており、賃貸マンション等周辺領域を含め今後も好調が続くだろう。金利の上昇に注視は必要であるが、現時点で住宅市況への影響はそれほど大きくないと考える。

■住友不動産(株) 代表取締役社長 仁島浩順氏

 世界各国の景気や金融政策の動向により、株価や為替が大きく変動し、先行き不透明な経済情勢が続く一方で、物価や賃金の上昇とともに国内景気は緩やかな回復基調が持続している。
 こうした中、商業地では、旺盛なインバウンド需要を中心にホテルや商業店舗の需要が一段と拡大したほか、東京のオフィスビル市況も、企業の優秀な人材確保に向けた、働きやすいオフィス環境整備を目的とする移転、増床需要により、緩やかな賃料上昇を伴って需給改善が続いている。
 住宅地は、資材や労務費の上昇などを反映して、マンション販売価格の上昇傾向が特に都心で顕著となっているものの、ローン金利の上昇が小幅にとどまるとともに、住宅取得支援策などが下支えとなり、生活利便の高い地域を中心に一定の需要が保たれている。

■東急不動産(株) 代表取締役社長 星野浩明氏

 今回の都道府県地価では全国の全用途平均は3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。景気が緩やかに回復基調にあるなか、インバウンドの需要増などで都市部を中心に人流が回復し、主要都市では店舗・ホテルの需要が堅調なほか、首都圏などではオフィス需要も空室率の低下や賃料の上昇などで収益性が向上していることが、地価上昇の背景にあるとみている。一方で、金利上昇やロシア・ウクライナ情勢などによる世界経済の先行き不安、工事金や物価上昇による国内景気の減速懸念などの不安定要素もあり、当面は国内の地価動向を注視していく。
 商業地は全国平均で3年連続の上昇となった。再開発事業等が進展している地域では、利便性やにぎわいの向上への期待感などから、地価上昇は継続している傾向にある。当社のメイングラウンドである渋谷エリアでも地価上昇は継続している。これは当社が東急グループで連携して「100年に一度」ともいわれる渋谷の大型再開発を推進し、回遊性向上やバリアフリー化に努めてきた取組みの積み重ねが、街の魅力向上につながり、地価上昇の一助となったのではないかと捉えている。その渋谷では今年7月「Shibuya Sakura Stage」が渋谷駅周辺の大型再開発のラストピースとして街開きを迎えるなど、街は大きく変化している。「流行の発信地」と言われインバウンドの訪れたい街NO1に選ばれるなど「遊」の面で注目を浴びてきた渋谷だが、渋谷駅周辺の大型の再開発ビルの登場で渋谷のオフィス床面積は拡大しており「働」の面でも注目を集めている。ITやコンテンツ産業を中心にオフィス需要が旺盛で賃料水準は上昇基調であり、空室率も低い状態が続いている。今後はハード面だけではなく、スタートアップ支援や文化などソフト面の発信も積極化し、「国際都市渋谷」の価値の更なる向上を目指す。
 また、インバウンド需要や出張・観光需要の回復で「東急ステイ」が宿泊料、稼働率ともに好調を維持しており、沖縄や軽井沢などのパブリックホテルも堅調だ。今後は需要回復の傾向を見ながら、首都圏を含め全国主要都市での進出も積極的に検討していきたい。北海道・札幌でも昨年11月に札幌中心部「すすきの」の玄関口に大型再開発ビル「COCONO SUSUKINO」を開業したほか、娯楽ビルの跡地にはオフィスビル「CONNECT SAPPORO」が竣工した。こうした当社の開発により、すすきのエリアの昼夜の人流を変容させ、エリアの新たな付加価値を創出することに貢献できたのではないかと考える。今後も当社の開発により、地域の価値向上になるような取り組みを行っていきたい。
 住宅地では全国平均の住宅地が3年連続の上昇となり上昇基調が続いている。大都市圏を中心に低金利環境の継続など、引き続き住宅需要は堅調だ。全国の住宅地をみると都市中心部の希少性の高い立地や、交通利便性等に優れた周辺地域では地価上昇が継続するなど根強い需要がある。当社は東京都心部ではJR埼京線の十条駅直の再開発マンション「THE TOWER JUJO」など利便性の高い再開発物件、関西では最上階に共用部を設けたタワーマンション「ブランズタワー大阪本町」を提供するなどして、旺盛な住宅需要の獲得を進めている。また、長野県軽井沢町などの人気の高いリゾート地では、別荘やコンドミニアム、移住者用住戸などの需要が増加しており、当社も軽井沢で同町初となる新築分譲ホテルコンドミニアム「グランディスタイルホテル&リゾート旧軽井沢」の開発を進めている。こうした移住者需要も取り込めるよう、引き続き検討していきたい。
 中長期的な不動産市場については、足元では国際経済情勢などのマクロ要因などを注視する必要があるが、不動産市況は回復基調が続くだろう。中長期的には少子高齢化による単身世帯の増加や空き家問題、「働き方改革」によるオフィス環境の変化等、不動産市場を取り巻く環境の変化が続くが、国内外で環境への意識が高まるなか今後の不動産市場では「環境」が大きなテーマになるとみている。当社の再生可能エネルギー事業は7月末時点で全国に113事業の発電所を有するなど、国内有数の発電能力を持つ。これを活用し保有する全施設の再エネ化を完了し、国際的イニシアティブ「RE100」の目標の達成がRE100事務局のCDPより国内事業会社で初めて認められた。今後は環境に配慮したオフィスビルやマンションなどの開発などに加え、北海道石狩市での再エネ100%のデータセンターなどの「GX」×「産業」の取り組み、DXを活用した最新鋭の物流施設など、環境経営とDXで最先端の不動産開発を進めて行くことで、新たな不動産の価値を提案していきたいと考えている。

■東京建物(株) 代表取締役 社長執行役員 野村 均氏

 今年発表された地価調査では、全用途平均・住宅地・商業地が3年連続で上昇し、上昇幅が拡大した。この背景には、分譲マンションマーケットの堅調さや、オフィス需要の底堅さ、インバウンド含む人流の回復およびそれに伴うホテル・商業施設等における需要の増加、都市部を中心とした再開発事業の進展などがあると考えられる。日銀が政策金利の引上げを決定しており、金利の動向等については注視する必要があるものの、不動産投資市場は引き続き好調に推移している。

 商業地では、オフィス需要の堅調さやホテル・商業施設の需要回復を背景に、全国的に地価の上昇が継続した。オフィスマーケットにおいては、出社回帰の動きの加速もあり、都心5区では空室率が低下し、賃料は緩やかな上昇に転じるなど、柔軟かつウェルビーイングな働き方を後押しする付加価値の高いオフィス等を中心に根強い需要が認められる。現在、当社でも「八重洲プロジェクト」(「東京駅前八重洲一丁目東地区市街地再開発事業(A地区・B地区))をはじめとしたオフィス用途を含む大規模再開発に複数参画している。ホテル・商業施設マーケットは、インバウンドの増加や人流の回復により、顕著な成長がみられる。当社としても、「フォーシーズンズホテル大阪」や「ヒルトン京都」、ラッフルズブランドとして日本初進出となる「ラッフルズ東京」など、外資系ハイエンドホテルの開発実績を積んでおり、今後もデベロッパーとしてのノウハウを最大限活かしたホテル開発により地域経済の活性化に貢献したい。物流施設マーケットについては、半導体関連産業の発展やECマーケットの拡大による需要増が継続している。当社では、半導体受託生産大手企業の進出に伴う貨物量の増加を見込んだ開発である「(仮称)熊本戸島物流PJ」や、当社初となるマルチテナント型の冷凍冷蔵倉庫「(仮称)T-LOGI大阪弁天町」など、エリアのポテンシャルや顧客ニーズに対応した積極的な開発を進めている。

 住宅地では、資産性を重視する富裕層やパワーカップル層を中心とした需要が底堅く、上昇基調が続いている。都心部に加え、交通利便性や住環境等で優位性のある立地であれば郊外や地方都市においても地価は上昇傾向となっている。分譲マンション「Brillia Tower千葉」は、JR千葉駅至近の唯一無二の立地や、周辺の再開発で見込まれる利便性の向上などが評価され、好調に販売が進捗している。また、環境に配慮したマンションの開発にも継続的に取り組んでおり、「Brillia 深沢八丁目」は、省エネと創エネの組み合わせにより住棟全体で一次エネルギー消費量削減率が100%を超える『ZEH-M』の基準を満たすなど、高い環境性能を実現した。お客様からも環境への配慮や高い断熱性能をご評価いただいている。

 地政学リスクや景気動向、建築費の高騰といった不動産市況に影響を及ぼす各要因を一層注視するとともに、お客様のニーズを的確に捉え、安全・安心・快適に過ごせる職場環境や住環境の提供に今後も注力する。

■野村不動産(株) 代表取締役社長 松尾大作氏

 今回の地価調査は、全国平均で全用途平均・住宅地・商業地のいずれも3年連続で上昇し、上昇率が拡大した。
 住宅市場に関しては、総じて売れ行きが好調である。引き続き需要が堅調であること、土地の取得が以前よりも難しいため、簡単に供給量が増えることはなく、当面、需要と供給のバランスは大きく崩れないだろう。住宅ローン金利は一部で上昇がみられるものの、現時点では顧客の購入マインドに大きな影響は出ていないため今後も引きつづき注視してゆく。
 オフィス市場に関しては、2025年に東京での新規供給が集中するため、一時的にマーケット全体での空室率の悪化や賃料の弱含みの影響が出る可能性がある。一方で、23区全体のマーケット規模と過去からの供給量を鑑みると、需給バランスが急激に悪化するとは考えにくい。当社主力ブランドのPMOを例に話すと、出社や採用の増加により、テナント企業の拡張移転ニーズが多くみられる。リアルなコミュニケーションの必要性が見直されており、リーシングも順調に推移している。
 2025年2月に竣工予定の「BLUE FRONT SHIBAURA」S棟は、多様化する働き方に対応可能なワンフロア約1,500坪のラウンジをはじめとした、都内最大級の「テナント企業専用の共用施設」に加えて、各所に様々な働き方を提供するワークスペースも提供していく。また、都心部でありながら空・海・緑に恵まれた希少な立地を最大限に活かしてこれまでにない新しい環境を創出し、水辺ならではのライフスタイルと新しい働き方をワーカーの皆様に実現していく。
 ホテル市場に関しては、予想を上回るインバウンド需要により、当社運営ホテルにおいても稼働率やADRも高い水準で推移している。また、4月には、ホテル事業も展開するUDS社を当社グループに迎え入れており、市場が活性化し再拡大するタイミングに合わせて需要を捉えることができている。
 物流市場については、今年度より運転手の労働時間規制が施行される一方で、EC市場拡大により荷物量は増加傾向にあり、人手不足が課題となっている。当社では物流施設の開発のみならず、立体自動倉庫のシェアリングサービスや物流オペレーションの自動化機器導入など、物流・荷主企業の抱える課題への解決策を引きつづき提供していく。
 一方で、資材費や労務費を含む建築費の高騰は今後も継続すると想定されることから、一部の市場においては中長期的に事業への影響が懸念される。当社としてはこの状況を今後も注視すると共に、各事業において価格に見合った付加価値のある商品をハード・ソフトの両面から企画していくことが以前にも増して重要である。
 当社グループでは、単に不動産を開発するのではなく、そこに暮らす、働く、時を過ごす一人一人のお客様の生活「Life」や時間「Time」をさらに豊かにしていくことを目指していく。その想いを言葉にしたのが2030年をターゲットとする野村不動産グループビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developer へ」。新たな付加価値を創造し、お客様に多様な付加価値を提供できる不動産関連商品・サービスをこれからも提供していく。
 地価調査は、不動産の取引動向や中期的な展望を反映したものであり、様々なマクロ指標と合わせて今後も重要指標のひとつとして注視していく。

■森トラスト(株) 代表取締役社長 伊達 美和子氏

[商業地の全体感と注目エリア]

 商業地の地価は、全国平均、三大都市圏、地方四市いずれにおいても12年連続で上昇した。東京都心のオフィスビルは、エリアによって差はあるものの、賃料は上昇基調、空室率は低下傾向である。当社保有ビルにおいても、人材獲得のための立地改善や人員増によるオフィスの拡張など新築、既存ビルへの引き合いは多い。また、インバウンド需要の拡大が続く銀座エリアなど、さまざまなステークホルダーにとって需要の高い地域を中心に旺盛な投資需要が継続し、オフィスビルの売買のほか、ホテルや住宅においても、市場は堅調だ。
 地方圏においては、主要都市や観光需要の高いエリアにおいて、好調なインバウンドなどによる店舗需要の高まり、各種開発事業の進展から、地価上昇トレンドが継続している。インバウンド需要がけん引する地域としては、京都府京都市、長野県白馬村、岐阜県高山市が挙げられる。長野県白馬村で当社グループが運営する「コートヤード・バイ・マリオット 白馬」では、冬季の宿泊客におけるインバウンド割合は、大阪、京都といった関西の人気観光地に匹敵するほどだ。豊かな観光資源をもとに、冬季だけでなく通年での誘客を目指して様々なアクティビティが提供されてきており、エリア全体で更なる発展が期待される。

[今後の展望と課題感]

 日本国内ではマイナス金利政策の解除など経済正常化に向けた動きがみられ、日経平均株価が史上最高値を更新したものの、国内外ともに政治情勢や金融政策の変化、米国大統領選挙など、引き続き景気動向を左右する出来事に注視していく必要がある。国内不動産市場においては、金利変動に関する影響は限定的であったことから、好条件での不動産取引、地価上昇傾向が続くと予想される。一方、建築費の高騰や深刻な人手不足が不動産市場に与える影響は加味する必要があるだろう。
 今後注力すべき点は、高いインバウンド需要を持続的に地方にも分散して取り込めるよう、労働力不足の解消、デジタルを活用した生産性の向上、2次交通の整備、財源の確保などに取り組み、未来に対して積極的な投資を行っていくことだ。2024年上半期の訪日外客数・インバウンド消費額は過去最高を更新しており、当社では年間の訪日外客数の予測値を昨年比30%越えの3,450万人、インバウンド消費額は7兆円規模と予測している。2030年に訪日外客数6,000万人という政府目標に照らしても、観光産業を面で支えるインフラ整備が急務だ。
 諸外国からの日本の注目度は非常に高く、不動産市場、インバウンド市場が盛況な中、当社は長期的な視点に立ち、都市の価値向上、観光産業の発展に貢献していく。

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