
野村不動産(株)は6日、「オフィス環境は職場のパフォーマンスに影響を与えるのか?」と題したメディアセミナーを、「BLUE FRONT SHIBAURA」(東京都港区)の「TOWER S」にて開催した。
同社などが推進する大規模複合開発「BLUE FRONT SHIBAURA」については、過去のニュースを参照。
セミナーには、働く場所の選択の有用性を明らかにする研究を同社と共同で進めている、国立大学法人一橋大学大学院ソーシャル・データサイエンス研究科准教授の永山 晋氏が登壇。「柔軟な(多様な場所が選択できる)オフィス環境はワーカーのパフォーマンスを高めるのか」についての研究結果を発表した。
同社社員195人に、本社ビル(東京都新宿区)(固定オフィス)からトライアルオフィス(東京・浜松町)(柔軟オフィス)への移転前後で計2回のアンケートを実施(固定オフィス勤務は101人、柔軟オフィス勤務は94人)。生産性(心身不調の状態で職務に当たることがなく、職場で本来のパフォーマンスを発揮できている状態)・仕事のウェルビーイング(仕事のやりがい、幸福感があり、ストレスのない状態)・仕事の先延ばし(合理的とはいえない仕事への取り組みの遅延)の3要因について調査した。
その結果、柔軟オフィスの利用は、いずれの要因にもポジティブな効果があることが判明。柔軟オフィスを積極活用した場合のパフォーマンス・スコアは、固定オフィスと比較し、生産性は18.8%、仕事のウェルビーイングは22.3%高く、仕事の先延ばしは19.8%低い水準に。また、リラックスして仕事をする、集中して仕事をする場所の多様性が、パフォーマンスに有意にポジティブな影響をもたらすことが分かった。一方で、同僚とコミュニケーションをする場所の多様性、フォーマルな会議を行なう場所の多様性、カジュアルな雰囲気で会議を行なう場所の多様性の影響については、有意な影響は検出されなかった。
さらに、誠実性(目標達成の追求度合い、自己規律の高さを表すもの)に着目すると、柔軟オフィスはとりわけ誠実性が高い人、またリラックスしながら多様な場所を活用する人にとって有効で、特に仕事の先延ばしが低下することが明らかとなった。
総括として、永山氏は「オフィスに多様な選択肢があるだけでは不十分で、それをうまく使いこなせるような取り組みや仕組みが必要。また、誠実性の高低は本人の心理特性の問題なので、DXを進めることなどでは解決できない。柔軟オフィスに移動する際は、そうしたマネジメントの工夫も誠実性が低い人に対しては特に必要だろうと思われる」と話した。