(公社)全日本不動産協会の専属研究機関である全日みらい研究所は29日、2024年7月1日に施行された「低廉な空家等の売買・交換に係る媒介等に関する報酬額の特例」に関する調査結果を公表した。
同特例について、取引現場での実際の運用状況や流通促進効果を把握し、政策提言に結び付けることが目的。25年8~9月、協会会員に対しインターネットによるアンケートを実施した。有効回答数は963。
24年7月1日から25年6月30日までの1年間に特例適用対象となる代金800万円以下の宅地または建物売買等を行なったかについては、「あり」が435社、「なし」が528社だった。その約6割に当たる266社が「報酬額特例の適用により原則を超えた報酬を受領できた」と回答した。さらにその約6割に当たる156社が「対象となる媒介等の全件で特例を適用して報酬を受領した」と回答している。
特例を適用した中で、原則に対する上乗せ額が最大であった事例としては「売買代金10万円に対し、報酬額66万円」という回答が寄せられた。原則1万1,000円の報酬に対し、64万9,000円の上乗せがあったことになる。
「特例に基づき原則を超えて報酬を受けることに対する依頼者の反応・対応」については、「依頼者の理解がスムーズに得られた」が59.3%を占め、円滑に特例に基づく報酬を受領できた案件も多くある一方で、「原則通りの報酬額以外は提示していない」という回答も25.9%あった。
同特例制度への評価としては、「低廉な空家等に係る取引への意欲が増した」などの肯定的な意見が大半を占め、5段階評価では平均★3.8ポイントに。一方で、「『低廉な空家等』という表現が空き家に限定された制度と誤解を招く」や「上限額ではなく固定額とすべき」といった意見もあった。