記者の目 / 開発・分譲

2005/6/16

「ブロックリノベーション」が実現する「ジェネレーションミックス」の街づくり

三井不動産他5社、「芝浦アイランド」いよいよ販売

 三井不動産ほか5社(三菱商事、オリックス・リアルエステート、住友商事、新日鉄都市開発、伊藤忠都市開発。事業比率は三井50%、他5社がそれぞれ10%)による大規模マンション「芝浦アイランド グローヴタワー」が、いよいよ販売開始となった。2007年度の街開きをめざし整備が進められている「芝浦アイランドプロジェクト」の、約4,000戸が予定されている共同住宅の核になるもの。「ブロックリノベーション」の思想を取り入れ、都市再生機構と港区、民間事業者が一体となり、あらゆる世代が集まった「ジェネレーションミックス」な街をめざす「芝浦アイランド」は、今後の都市再開発の新しいベンチマークとなりえる、要注目のプロジェクトだ。

芝浦アイランド全景予想図。土地取得から5年のスピード開発
芝浦アイランド全景予想図。土地取得から5年のスピード開発
メゾネット住戸リビング。天井高は5.6m
メゾネット住戸リビング。天井高は5.6m
玄関から靴を脱がずにアプローチできる多目的室(DOMA)
玄関から靴を脱がずにアプローチできる多目的室(DOMA)
「芝浦アイランド」の開発進捗状況をリアルタイムでチェックできるクラブハウス
「芝浦アイランド」の開発進捗状況をリアルタイムでチェックできるクラブハウス

 「この“芝浦アイランド”がこれまでの都市再開発と決定的に違う点は、官公民が一体となって“ブロックリノベーション”の思想を本格的に導入したことと、あらゆる世代によるコミュニティー=ジェネレーションミックスの街づくりを行なうことだ」--三井不動産住宅事業本部の鈴木健副本部長は、こうアピールする。

 「芝浦アイランド」は、JR田町駅南東に広がる、周りを運河に囲まれた約6haのエリア。かつては都電の操車場として利用され、人口は都営住宅に住むわずか400人の町だ。ここを、たった5年で人口1万人、ありとあらゆる生活利便施設が整った「街」へと変貌させるための“マジック”が、「ブロックリノベーション」だ。

 「ブロックリノベーション(街区の刷新)」は、欧米では都市再生の一手法として定着しているもので、大きな街を1つのテーマに基づき、インフラ整備から商業施設・住宅に至るまでまるごと再開発することを指す。
 もちろん、そんな芸当は民間ディベロッパー単独では無理。「芝浦アイランド」では、東京都、港区、都市再生機構と民間ディベロッパー8社(分譲・賃貸)が一体となって推進している。田町駅へストレートに伸びる運河を渡る橋を新設。徒歩8分でのアクセスを可能とした。アイランド周囲は新たに耐震護岸とし、遊歩道を整備。エリア内は港区により区道が整備され、公園・緑地整備が進められる。さらに、アイランド内を第2種住居地域、高層住居誘導地区とし容積率をアップ。教育施設、医療施設も整備する。

 民間ディベロッパーが土地を取得したのは02年。各建物は、「青山パークタワー」などを手がけた光井純氏がデザインガイドラインを策定。これに基づき、建物外観や街区デザインに統一感を持たせている。入居開始は07年初春。土地取得から入居開始までわずか5年の驚異的スピードを実現できたのは、行政によるインフラ整備が先行していたから。全国の大規模ニュータウンや土地区画整理事業に欠落している「スピード」と「官民両輪の連携」こそが、ブロックリノベーションの大きな特徴だ。
 新たに作られる「街」は、その誕生時から教育・医療から商業にいたるまで、ありとあらゆる施設が整備され、住宅についても分譲・賃貸、さまざまな広さの住戸が4,000戸整備される。超都心立地のマンションは、その多くが「いびつな」住民構成となるきらいがあるが、「芝浦」は成熟度の高い都市機能を最初から整備することで、あらゆる世代を住民として迎え入れ、多世代による様々なコミュニティー=ジェネレーションミックスをめざしていく。

 さて、「芝浦アイランド」4,000戸の住宅供給の先鞭となる「グローヴタワー」は、地上49階建て・総戸数は833戸。1LDK・47平方メートルから3LDK・175平方メートルまでの基本プランに、3種類のインテリアテイストと無償・有償のプラン変更でさまざまなライフスタイルに応えていく。
 鹿島建設施工によるダブルチューブ工法で、居室内への出梁を極力少なくし、PSの外出し、ワイドスパンによるスクエアな間取りで、専有部の有効率を高めている。350mmのボイドスラブ・二重床・二重天井を採用しながら天井高は2.6mを確保するなど、基本性能が高い。水周りや建具は決してグレードの高いものではなかったが、デザイン性の高さがそれを補っている。
 モデルルームで提案された3戸では、玄関横から土足のまま入れる仕事・趣味空間「DOMA」や、雪見障子のある和室、最大天井高5.6mの2層メゾネットなどが目を惹いた。共用施設や多種多様なサービスは、いちいち書き切れるレベルではないので割愛するが、「芝浦アイランドが持つさまざまな施設やサービスを自分の住まいの共用施設として使いこなす生活」の提案を前面に出している。このモデルルームとは別に、建設地前面に「クラブハウス」が設けられ、プロジェクトの進捗状況や街並みの変貌を、リアルタイムでチェックできる。

 気になる販売価格だが、中心となるのは専有面積80平方メートル台の3LDKで、これが6,500万円台を予定。全体では3,000万円台から2億円台まで、平均坪単価は約250万円。周囲で数多と販売される「湾岸マンション」群より、やや強気の値付けだ。
「これからは、マンション単体で差別化できる時代ではない。(芝浦は)1つの街づくり、都市開発の発想を取り入れることで、大きな差別化ができたと思っている」(鈴木氏)。同社は、全833戸を年内には売り切ってしまう予定だ。

 最後に、この「芝浦アイランド」のプロモーション展開について触れておきたい。同プロジェクトが正式発表された今年2月から、「Shibaura Island」というシンプルなロゴが踊る新聞・交通広告やTVCMが繰り返し流された。TVCMに登場する渡り鳥や犬の声を演じていたのは、あの「SMAP」。広告もCMも「島」「都心」といったキーワードとホームページのURLが紹介するだけのシンプルなもの。これまでの「タレントマンション」のような「広告塔」的プロモーションとは違う、全く新しいアプローチだ。
 だが、それが逆に話題を呼び、サーチエンジンで「芝浦の島」検索件数は300万件を突破。ホームページのアクセス件数は25万件を超え、7,000組が会員登録、モデルルームへの事前来場がわずか3週間でなんと2,000組を突破。人気物件を数多く手がける同社をして「空前絶後」と言わしめる大反響を呼んでいる。

 販売開始とともに間もなく始まるTVCMには、いよいよSMAP本人が出演する。一連のプロモーションにいくらかかるのかこっちが心配になるが、販売前の驚異的集客数をみれば、さすがに「余計なお世話」というしかないだろう。物件のクオリティにいささかの手抜きもないのだから、なおさらだ。
 ちなみに、モデルルームで頒布するパンフレットも、かなり手の込んだものが用意されている(ただし、かなりの重量)。そして、そこでのプレゼンテーションは、あの人気番組「アド●●●天国」調だ。この2つは、ぜひ読者自身が来場して確かめてほしい。(J)

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