記者の目 / 開発・分譲

2006/5/19

「広さ」「環境」「価格」の3拍子そろえたマンション

風致地区で専有面積100㎡超、藤和不「汐見台」をみる

 マンションにおける最大の性能は「広さ」である。資産デフレという「追い風」を受け、一時期、専有面積が100平方メートルを超える「100平方メートルマンション」がブームになったこともあるが、ここにきて用地価格・建設費の高騰をうけ、再び専有面積は縮小傾向にある。  そんななか、久しぶりに「平均専有面積100平方メートル超」というマンションを、藤和不動産(株)が発売した。しかも、最高の環境が保証される「風致地区」に立地し、価格も抑えていると聞けば、その中身がますます気になる。さっそく、同物件「グランノア汐見台」を取材してきた。

100㎡超のゆとりが生む広大なリビング。モデルルーム住戸(専有面積113㎡)ではLDKは約25畳
100㎡超のゆとりが生む広大なリビング。モデルルーム住戸(専有面積113㎡)ではLDKは約25畳
「グランノア汐見台」敷地全体模型。写真奥が久良岐公園。自然の傾斜を活かしたランドプラン。敷地内も充分な緑化がなされる。
「グランノア汐見台」敷地全体模型。写真奥が久良岐公園。自然の傾斜を活かしたランドプラン。敷地内も充分な緑化がなされる。
(上)「風致地区」汐見台の入口。突然緑が多くなる。エリア内は電線は地中化している(下)現地の様子。久良岐公園の緑が目立つ。写真では判りづらいが、公園の向こう側にベイブリッジやランドマークタワーが臨める
(上)「風致地区」汐見台の入口。突然緑が多くなる。エリア内は電線は地中化している(下)現地の様子。久良岐公園の緑が目立つ。写真では判りづらいが、公園の向こう側にベイブリッジやランドマークタワーが臨める
(上)長さ3メートルはあろうかというカウンター付きのキッチン。オール電化によりIHクッキングヒーターとなる(下)主寝室の広さは重要。モデルルームでは8.3畳で、ベット2つとナイトテーブルを余裕をもって設置できる
(上)長さ3メートルはあろうかというカウンター付きのキッチン。オール電化によりIHクッキングヒーターとなる(下)主寝室の広さは重要。モデルルームでは8.3畳で、ベット2つとナイトテーブルを余裕をもって設置できる
「グランノア汐見台」完成予想図
「グランノア汐見台」完成予想図

横浜市内屈指の緑豊かな住宅地

 「グランノア汐見台」は、横浜市磯子区汐見台1丁目(京浜急行線「上大岡」駅徒歩14分、同「屏風浦」駅徒歩13分、JR根岸線「磯子」駅バス12分)に立地する、地上5階建て5棟で構成される総戸数170戸の低層マンション。

 「汐見台」は、1960年代から横浜市(住宅供給公社)が開発してきた大規模団地(約72ha、4,300戸)を中心に、根岸湾埋立地に進出した企業の社宅などが建設されたエリアで、地区全体が「風致地区」に指定されている。「風致地区」とは、都市の風致を維持するため定められる地区で、都市計画法上のさまざまな規制がかけられるほか、その環境を維持するため地元自治会などとも建築協定が定められる。こうした規制や協定により、広さ23haに及ぶ横浜屈指の久良岐(くらき)公園をはじめ、保安林や私有の斜面緑地や街路樹、団地建物間や学校内にいたるまで、エリア一帯が緑に包まれ、それが維持されている。電線は地中に埋設され、建物の高さも抑えられているため、その景観を阻害することもない。

 記者は、実際に建設地である汐見台へモデルルームから歩いてみた。上大岡駅からの道のりはゴミゴミとした住宅地を抜けながらの山坂道だったが、ひとたび汐見台エリアに入ると風景は一変。うっそうとした緑の中に、規則正しくマンションが立ち並んでいた。自然の起伏は高齢者にはキツかろうが(37歳の記者でもキツかった)、それを補って余りある環境がここにはある。
 「グランノア」は、この汐見台丘陵のほぼ頂点、北東・北西を久良岐公園に接している。この敷地は旧大蔵省官舎跡地で、「地元の人に聞けば“あぁ、あそこ”とすぐわかるほど有名な場所」(藤和不動産・グランノアマンションギャラリー・高木陽一氏)という、垂涎の地だ。

必然だった「専有面積100平方メートル超」

 ランドプランは、自然の起伏による敷地形状をいかした擁壁を構築。南面に2棟、南北方向に3棟の建物を並べ、その間に5つのガーデンやプロムナードを配し、周辺の緑との調和を図った。この自然の起伏は、セキュリティラインとしても機能。さらに、駐車場のチェーンゲートやフェンス、オートロック、各住戸の開閉センサーによるセキュリティー体制を構築している。

 住戸は、専有面積82~133平方メートルの3~5LDK。総戸数の8割以上が専有面積100平方メートルを超える、いわゆる「100平方メートルマンション」だ。ただ、開発にあたって当初から「100平方メートル」という「呪縛」があったわけではない。「このエリアでは、高さ規制に加え、開発面積に対する住戸数が制限されます。当エリアの場合はそれが170戸で、その戸数で容積内の開発をしようとすれば必然的に戸あたりの面積が大きくなってしまうのです」(高木氏)。
 従って、汐見台は周辺マンションと比べ、専有面積が大きいマンションが多い。社宅跡地に建設された他社のマンションも、その傾向が強かったが、「グランノア」ほどのスケールはない。これがいい差別化になっている。100平方メートル超という「広さ」は、垂涎の立地をいかすための「必然」だったようだ。

オール電化も採用、価格も坪140万円台に抑える

 平均100平方メートル超だけあって、間取りはゆったり。最小スパンは6.8m。ほとんどの住戸が8.5mを超えている。主寝室も、最低で6.5畳を確保。廊下はメーターモジュールを採用。浴室は1,622タイプ、LDKも25畳前後が主流。収納は、同社オリジナルの「スマイル収納」。ベビーカーを持ち上げることなく収納できる玄関。吊るす・収納するという両機能を備え、自由に高さが動かせるクロゼットなど、よく考えられている。「環境を保全する」という意味から、外気熱利用型給湯器「エコキュート」、IHクッキングヒーター、電気式床暖房のオール電化を採用。昨年6月「リーデンススクエア所沢」で初採用した、ピークカット分電板も導入している。
 高さ規制のクリアからか、天井高が2,400mmとやや低いこと、直床スラブ厚200mm、ローサッシュというスペックがやや残念だが、基本性能・クオリティとも水準にあった。

 なにより、価格が安い。予定販売価格は、3,200万円台から6,300万円台。最多価格帯が4,500万円台で、平均坪単価も140万円台となる。専有面積が広いからグロス価格は上がり駅からのアクセスも悪いが、建物仕様、ランドプラン、環境を考えれば超割安感がある。
 「この土地は、入札でなく、ある企業から相対で仕入れることができました。しかも、土地価格が本格的に上昇し始める前の取得ですので、価格を抑えることができました」(高木氏)。底地を割安に仕入れることができたからこそ、余裕を持った商品企画ができたのであり、その意味で同物件はラッキーだったといえる。

減り続ける「100平方メートルマンション」

 バブル後のデフレ下で一気に普及したファミリー向けの「100平方メートルマンション」は、用地取得費や建築費の高騰の流れの中で、再びその数を減らしつつある。

 (株)不動産経済研究所調査によると、2000年以降の首都圏での「専有面積100平方メートル超住戸」の供給戸数は、2002年の8,018戸をピークに減少。03年には6,028戸、04年には4,703戸、05年には4,008戸と半減するに至った。「汐見台」のある神奈川県でも、2002年には1,895戸の100平方メートルマンションが供給されたが、05年は919戸と大幅に減少。しかも、これらは各マンションに含まれる「100平方メートル」の合計であり、「平均面積100平方メートル超」となると、その数は05年には4分の1近く(首都圏全体で1,197戸)まで減ってしまう。

 「100平方メートルマンション」は、これからますます事業化が難しくなるのは間違いない。だが、人間は、一度覚えた「贅沢」はなかなか忘れられない。用地仕入れや商品企画を担当するディベロッパーの担当者には辛かろうが、自分たちが覚えさせた「贅沢」である「100平方メートルマンション」だ。これからも、知恵と努力でコンスタントに供給していってほしい。(J)

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