記者の目 / ハウジング

2009/7/31

ゼロ・エミッションへの取り組み

ミサワホームが産業廃棄物中間処理施設「関東資源循環センター」を稼働

 近年、環境意識の高まりとともに各業界で「ゼロ・エミッション」が注目されている。  「ゼロ・エミッション」とは、1994年に国連大学が提唱した考え方で、産業廃棄物をゼロに近づけるため、廃棄する物質を資源として再利用しようというもの。この「ゼロ・エミッション」、現在製造業を中心に積極的な取り組みがはじまっている。  そんななか、ミサワホーム(株)が、3月に千葉県野田市に建設した敷地面積7,738坪の産業廃棄物中間処理施設「関東資源循環センター」を6月から本格稼働させたと聞き、新設工場を見学してきた。  

建屋面積2
建屋面積2
870坪におよぶ関東資源循環センターの内部
870坪におよぶ関東資源循環センターの内部
見学会冒頭、あいさつを行なうミサワホーム(株)取締役の東海健生氏
見学会冒頭、あいさつを行なうミサワホーム(株)取締役の東海健生氏
廃棄物を各工程に運ぶ、廃棄物運搬車両「こまわりクン」
廃棄物を各工程に運ぶ、廃棄物運搬車両「こまわりクン」
ダンボール選別の様子
ダンボール選別の様子
「発泡スチロール減容機」で溶かした発泡プラ。
「発泡スチロール減容機」で溶かした発泡プラ。

ミサワホームの「ゼロ・エミッション」とは

 「担当メンバー一同、当施設は日本一のレベル、と自負している」と語るのは、ミサワホーム(株)取締役の東海健生氏。
 複数の都道府県にまたがり産業廃棄物を回収・処理することができる「広域認定制度」を活用し、山梨県を含む1都7県の施工現場で発生する余剰資材を同センターで回収している。
 同社が進める「ゼロ・エミッション」システムを以下にまとめてみた。

(1)ハウスメーカーは資材を常時保管しているが、その物流網においては、資材を仕入先から施工現場に運ぶ「動脈物流」と、施工現場からの廃棄物を回収する「静脈物流」がある。同社ではこの「動脈物流」と「静脈物流」をドッキング、一台のトラックで、資材搬入から廃棄物回収までをできるようにした。

(2)廃棄物は施工現場で、木くず、金属くず、石膏ボートなど10種類に分別、袋詰めしており、それぞれにQRコードラベルを添付する。その上で、同センターに回収した廃棄物は、一時保管場所に素材別に置く。なお、QRコードラベルには、施主情報が入力されており、邸別の廃棄物量が計測できるようになっている。

(3)一時保管場所に置いた廃棄物は、廃棄物運搬専用車両「こまわりクン」で各リユース、リサイクル工程に運ぶ。この「こまわりクン」は同センター内を常に巡回し、どの工程でどの素材が不足しているか迅速に判断する役目を持つ。

(4)各工程に運搬した素材はすべて計量器で測り、選別。それぞれ圧縮・減容などの処理を実施する。例えば、ダンボールは、「ダンボールベーラー」で処理されそのまま再生紙とし、発泡プラは「発泡スチロール減容機」で溶し、RPF(固形燃料)、プラスチックもしくはミサワのサスティナブルマテリアル商品「M-Wood2」にリサイクルする。
 ちなみに「M-Wood2」は、デッキ、フェンスなどのエクスエリアに広く使うことができる同社の主力製品である。
 
 同センターでの「ゼロ・エミッション」は2010年達成予定で、1棟あたり処理費用を40%削減することが目標。
 同社はすでに、全国15ヵ所の工場で「ゼロ・エミッション」を達成しているが、同センターの開設にあたり、施工現場においても「ゼロ・エミッション」達成を目標に掲げている。
 今後は、同センターでのノウハウを固めていき、状況を見つつ、近畿・東海へ進出していく構想だ。

ハウスメーカー各社の「ゼロ・エミッション」達成後の次なる課題は?

 実は「ゼロ・エミッション」を達成しているハウスメーカーは同社だけではない。毎年、契約・着工棟数ランキングで上位に挙がるようなハウスメーカーで、すでに施工現場での「ゼロ・エミッション」も達成していると聞く。

 ハウスメーカーにとって、環境に対する「ゼロ・エミッション」の次なる課題は何だろうか。
 近年、時を同じくして注目されている「長期優良住宅」。
 「いいものをつくって、きちんと手入れをして、長く大切に使う」との考え方に基づき、長く住める優良な住宅を普及させていこうという取組みだ。
 「ゼロ・エミッション」の目的は住宅を施工する際に発生する産業廃棄物をゼロに近づけることであるが、この長く住める優良な住宅「長期優良住宅」を供給していくことこそが、産業廃棄物ゼロに貢献し、根本的な意味での「ゼロ・エミッション」につながるのではないだろうか。(Tam)

動画でチラ見!

第18回 ジバコー 「原点」を語る

ニュースはこちら

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2025年5月号
「事故物件」、流通の課題は?
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2025/4/21

「記者の目」を更新しました

有事に立ち向かうエリアマネジメント」を公開しました。

エリアの価値向上に大きく寄与する複合開発。住宅や商業施設、公共施設、教育施設や図書館、クリニックなどが一体的に整備されることで、再開発されたエリア内で日常生活が完結できるような、利便性の高い生活環境が整うケースもありますが、その規模感の大きさから有事の際に全体が連携できるのかといった懸念も…。今回は、オフィスビル・賃貸マンション・分譲マンションの3棟からなる複合開発「MEGURO MARC」を取材。防災対策の本音を調査しました。