記者の目

2018/2/1

テナントリテンションをアプリで実現

 賃貸住宅が“貸し手市場”だった時代を知る人にとって、今は受難の時代かもしれない。入居者獲得競争は年々激しくなり、賃料は上げられない、リフォームやリノベーションをしたくても資金の確保が困難、しかも工事を実施しても入居者が獲得できるとは限らない…。そこで、過大な投資をせずに物件の魅力を高めようという取り組みに注目が集まっている。文具通販などを手掛ける(株)一貫堂(名古屋市中区、代表取締役:長屋 博氏)は、管理会社やオーナーと入居者をつなぐシステムとアプリを開発。ソフトで物件価値を高める取り組みに挑戦している。

◆物件ごとのポータルサイト実現へ

 同社が提供するアプリが、「住まい手便利帳」だ。「入居者に情報発信を行うことで暮らしやすさ、便利さを提供する」をコンセプトに開発した。

 大規模な分譲マンションや、大手が運営する高級賃貸物件などでは、物件ごとにサイトが設けられ、イベント告知などの情報発信や、入居者からの連絡受付・対応などを行なっているケースは多い。しかし、地場不動産会社が管理している中小規模の賃貸物件では、そうしたサイトの開発・運営はコスト的に困難。「そこで、そうしたサービスを提供しているアプリを当社で開発。安価で提供しようというのが、『住まい手便利帳』なのです」(オフィスライブラリ事業部・椎名雄太氏)。

 管理会社は、パソコンで管理画面にアクセスし、そこで情報を入力していけばOK。物件の独自ポータルサイトとして仕上げることができる。入居者にはスマートフォン用のアプリを提供。それを利用してもらう。

導入物件「泉アパートメント」のトップ画面

 開発のきっかけは、同社社長の長屋氏が単身赴任で賃貸マンションに入居したときの体験にある。仕事をしていると、クリーニングの依頼や受け取り、管理会社との情報のやりとりなどで支障を感じることがたびたびあったのだという。その時の経験から、「賃貸物件にこそ、物件ポータルが必要。そこで提供されるサービスの需要は高いはず」開発を決めた。

◆「アプリ」を「不可欠なツール」に

 15年に開発着手。16年4月より実証実験を開始し、17年11月よりシステムの販売をスタートした。

 開発に当たっては、入居者に便利に暮らしてもらうためアプリでの提供とすること、そして中小不動産会社にも導入しやすいツールとすること、さらに入居者の利用度を高めるために、サービスを拡充させることに配慮したという。

 具体的には、中小不動産会社に導入してもらいやすくするために、受託製作の形ではなく、プラットフォームを提供し中味は自社で入力・拡充できる仕様とした。これにより、諸費費用やランニング費用は低廉(初期費用3万円、ランニング費用2万円から)に設定できたという。

 デフォルトでは、「ニュース」「緊急連絡先」「サービス」「メッセージ」などのメニューを用意。

入居者へのお知らせも一斉発信できる。情報を確認したかどうかも確認できる

 「ニュース」では、設備点検の案内や更新時期のアナウンスや契約を更新するかどうかの確認などについて、入居者宛に発信することができる。内容を確認したかどうかを確認する「既読」機能も搭載しているので、誰が通知を見たか・見ていないかの確認もできる。ポップアップ機能も近日導入予定だという。また契約の更新などについては、入居者からの契約更新・契約終了の申し入れを受けることも可能だ。

 「緊急連絡先」では、ライフラインなどにアクシデントが発生した際の連絡先を集約掲載できる。万が一の時にアプリを開けば、電話番号をタッチするだけで発信もできるし、これまでリーフレットとして印刷・配布していたものを盛り込めばコストダウンも図れる。自治体の相談窓口なども登録・掲載可能だ。

緊急連絡先を登録しておけば、万が一の時にすぐに連絡ができ、入居者にとっても非常に便利

 「サービス」メニューでは、福利厚生サービス提供の(株)ベネフィット・ワンと提携してサービスを提供。映画などの割引チケットの購入や飲食店の割引サービス、宿泊施設の割引予約などの特典を受けることができる。大手企業並みのサービスメニューを享受できるという訳だ。もちろん導入企業独自のサービスメニューを用意し、登録することもできる。

 さらに同社提供のサービスメニューとして、宅配クリーニングの申し込み・受け取り手配などの機能も盛り込んでいる。ハウスクリーニングや宅配サービス、自転車などの出張修理、カーシェアの予約などについても、サービス提供会社と交渉中とのこと。「こうしたメニューがあることで、アプリを利用することのメリットを打ち出しています」(椎名氏)。

 なお入力情報のカテゴリはカスタマイズ可能。オーナーや管理会社でさまざまな情報を登録していくことで、より充実した情報発信ができる。

 例えば地域の飲食店情報や、同じオーナーが所有する物件情報、管理会社が管理する他の賃貸物件情報なども掲載・周知することも可能だ。「管理物件間での住み替えに特典を付与したりすれば、他に入居者が流出するリスクも減らせるかもしれません」(同氏)。

 同社は、「このアプリを使うために、今の物件に入居し続けたい」というところを目指し、これからもサービスを拡充させていく計画だという。

◆◆◆

 これまで賃貸経営における対策で、「資金がないから、家賃を下げるしかない」との結論に達していたケースは多かったはず。異なる選択肢を提供する今回のサービスは、アイディア次第で強固な武器になる期待を抱かせるものだった。また地域密着企業ならではの情報を“武器”に変えられるツールにもなりうるだろう。(NO)

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