記者の目 / 開発・分譲

2018/5/25

犬種限定の賃貸 “フレンチブルと住む家”

 ミサワホーム(株)東京西支店は、「吉祥寺に、この犬と住むプロジェクト」を立ち上げ、その第1弾として2018年2月に戸建賃貸「フレンチブルドックと住む家」を竣工した。犬と暮らせる賃貸住宅はもはやそれほど珍しくないが、同物件はそこから一歩踏み込んだ“犬種”限定。あえて間口が狭くなると思われる“犬種限定”とすることは吉と出るのか。その狙いを聞いてきた。

フレンチブルドッグ

◆犬の飼い主は種に対するこだわりが強い

 なぜあえて犬種を限定したのか? 

 同支店市場開発部部長の長谷川 真一氏は、猫と比較して犬は種類ごとの特長が大きく異なることもあり、飼い主の犬種に対するこだわりが強い点を挙げる。ミサワホームではすでに30年近くペットと暮らす賃貸住宅を展開してきているが、これまでは「ペットを飼ってもかまわない」という緩やかなスタンスだった。しかし、このペットブームの中、より積極的に「犬と暮らす家」を打ち出したいと考え、犬種に着目したという。

 また、ペット可賃貸住宅の場合、違う種類の犬同士の相性が合わないことで入居後1~2ヵ月で退去されてしまうといったトラブルがあるため、犬種限定がその解決の糸口とならないか、試してみる意味合いも含めている。

 ただし、アパート1棟を丸ごと犬種限定にするのはさすがにハードルが高いため、まずは戸建賃貸でそのニーズの可能性をさぐるべくトライすることに。反響によっては将来的に犬種を限定したアパートも考えていくという。

◆フレンチブルは手のかかる子

 ではなぜ第1弾がフレンチブルドッグ(以下、フレンチブル)だったのか?

 それはフレンチブルの飼い主は「特に犬種にこだわりが強い」と考えられるからだ。フレンチブルは1回の出産頭数が少なく、交配などにも手間とコストがかかるため一般的に他の犬種より価格が高い。そのため“お金持ちが飼う犬”という、一種のブランド化したイメージがあるという。「そうしたこだわりの強い飼い主に対して、犬種を限定することは物件の訴求ポイントになるはず」(同氏)。

 また、フレンチブルはもともと皮膚が敏感な犬種の上、鼻の低いいわゆる“べちゃ顔”でよだれも多く、アレルギーや感染症などの皮膚疾患を起こしやすい。こうした“手のかかるうちの子”へ配慮した家は飼い主にとって魅力的に映るという見込みもあった。供給側からも、配慮がより必要な犬種に合わせることで、どの犬種にも対応できる仕様がつくれる点は魅力的だ。

◆フレンチブルに特化した専門雑誌『BUHI』とコラボ

 住居の設計にあたっては、飼い主へのアピール効果も見込んでフレンチブルドッグの専門誌「BUHI」(オークラ出版)とコラボ。実際にフレンチブルドッグと暮らす人たちのリクエストや暮らしのアイディアなどを取り入れた。皮膚が弱い等ウィークポイントへの配慮については獣医の監修も受けている。

 こうして完成した住戸は、木質パネル接着工法2階建て、間取り3LDK。“お金持ちが飼う犬”のイメージに合わせ、60着収納できるクローゼットなど、設備や内装は同社が供給する分譲住宅よりハイスペックに。IoT機器を用いてエアコン等の機器の遠隔操作ができる機能なども付加した。

 犬種に特化した工夫としては、足が短い骨格のため、階段を1段増やして緩勾配としたことに加え、1帖の踊場を設けた。また同様にひざを脱臼しやすい性質のため、床材はフローリングでなく、すべりにくいクッションフロアにしている。そのため、よだれが多い犬種でも掃除がしやすいというメリットも生まれる。

外観
外壁の照明にフレンチブルのモチーフを用いて犬種をアピール。左横の小窓は、帰ってくる飼い主を犬が迎えるための窓

 皮膚が弱い犬は湿気にも弱いため、壁には吸・放湿効果に優れる珪藻土を採用した。珪藻土は消臭効果もあるため、臭い対策としても有効だ。また体を洗う・拭く頻度も高くなるため、浴室は同社で一般的に採用するものより25%程度広めのものを導入。主寝室内にも洗面台を設けた。

主寝室に洗面台を設けている

 壁はツメでひっかき傷がつきにくいよう腰壁を設け、傷が目立ちにくい木の設えに。またコンセントは犬の手が届かないように高い位置に設ける工夫も施した。犬の目線にあった低い位置に窓も設けている。さらに外出先からスマートフォンを通じて見守りができるよう1階と2階にWebカメラを1台ずつ設置している。

壁には吸・放湿効果、消臭効果に優れる珪藻土を採用。ひっかき傷がつきにくいよう腰壁も設けている
犬の目線にあった窓を設置(1階リビング)

◆フレンチブルと暮らす“ベネフィット”を提供したい

 相場より1割程度高めの賃料で、1月末から募集。現在、狙い通りに戸建住宅でフレンチブルを飼いたかったという人が入居しているという。今後は入居者の意見を聞いて、より住みやすい間取りづくりなど改善につなげる予定だ。

 長谷川氏によれば、この企画住宅は犬種に合わせた仕様がウリでもあるが、ハードではなくソフトをアピールしていきたいという。「スペックのアピールだと、メリットになる。メリットをうたうのではなく“ベネフィット”を提供したいと思っています。フレンチブルとの生活を思い描くウキウキ感とでもいいますか…。今後はトイプードルなど“跳ねる系”の犬種などにもチャレンジしていきたいですね」(同氏)。

◆◆◆

 この物件の建設中、偶然にも近所のフレンチブルを飼っている人が毎日、散歩で現場前を通りかかり、「どんな家なのか」「いつできるのか」など必ずなんらかの声をかけていくほど気にかけていたとか。確かに“犬種限定”は飼い主の心をそそる要素のひとつではありそうだ。犬の場合は、同じ犬種の飼い主同士でコミュニティをつくる傾向があり、そうしたつながりなども期待できるので、ニッチではあるが、マッチングさえうまくいければ、需要はありそうに思えた。(meo)

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