記者の目 / IT・情報サービス

2022/6/13

ICTで変化・多様化する本人確認手法

行政窓口、金融機関に加え、不動産会社や携帯等のショップでの契約など、本人確認(認証)が必要な場面は実に多い。以前は免許証や健康保険証、マイナンバーカード、パスポートなどを見せるというのが一般的だったが、ICTの活用やオンライン取引の普及などにより、この方法が変化を見せているようだ。

◆自分の肉体で「私」を証明

 生体認証という言葉を聞いたことがあるだろうか? 言葉の意味をはっきり理解していないとしても、顔や指紋を使いスマートフォンのロックを解除している、という人は少なくないはず。これは生体認証という技術を活用した一例で、その人の肉体・生体情報を基に、本人かどうかを認証している。今回は、数々の生体認証について研究している富士通(株)で話を聞いた。

 まずは「本人確認(認証)」について説明しよう。本人確認とは、その人が本当にその人であるかを確認する作業・手続きのことである。そしてそれには大きく次の3つの種類があるという。下記の図を確認していただきたい。

富士通(株)の資料を基に編集部作成

 「知識(記憶)認証」の代表的なものは、パスワードや暗証番号だ。ネットショップやネットバンキングなどではこの方法が用いられているケースが多い。
 「所有物認証」は、前述の健康保険証や運転免許証、マイナンバーカードなどで確認する手法。非常になじみ深いものであろう。
 そして3つめが、「生体認証」である。
 前者2つについては、忘却、偽造、盗難などのリスクがあるが、生体認証はそうしたリスクが低い。そして何より利用者にかかる手間が小さいことから、採用される場面が増加しているようだ。

 ところで、この生体認証。記者は指紋、虹彩、顔…くらいしか知らなかったが、認証に活用できる部位・物はどのくらいあるかご存知だろうか? 「実は30個以上あります」(同社インフラ&ソリューションセールス本部プリセールス統括部生体認証プリセールス部マネージャー・高梨太郎氏)というから驚いた。すべてが実用化されているわけではないが、前述のもの以外に、歯形、耳介(耳の形)から、声紋、さらには着座時の尻の圧力なんてものでも本人確認が可能なのだという。
 ちなみに実用化され使われている主なものは、指紋、静脈、虹彩、顔、署名(サイン)、音声だそうだ。

◆手のひらがICカードの役割を果たす

 同社のオフィスビル「Fujitsu Uvance Kawasaki Tower」(川崎市幸区)では、社内に手のひら静脈認証システム(以下、手のひら認証)を導入し、社内で活用する実証実験を行なっている。見学した。

 最初に専用端末で、手のひら静脈を登録する。赤外線を当てて、手のひらの中の静脈を撮影。ものの1~2秒で終了した。

専用端末でてのひら静脈を登録。あっという間に終わった

 これを済ませた同ビルで働く人は、手のひらでその人“本人”を証明して働くことができる…というわけだ。世間一般的に利用されているICカード、それを手のひらで済ますことができるとイメージすると分かりやすいだろう。

 エントランスゲートやエレベーターを降りてからオフィスフロアに入るところのセキュリティ。これらを手のひらをかざすことで通過できる。

執務フロアの入口のセキュリティも、手のひらをかざすだけで自動ドアが開く

 パソコンや重い荷物を持ち歩いているときにICカードをかざすのは結構な手間だが、手のひらをかざすだけなら負担にならない。ICを家に忘れて出勤し焦った経験をした人も少なくないと思うが、その心配も無用だ。

 社員食堂での支払いも、手のひらでOK。同社はペーパーレスを推進していて複合機の利用にも個人の認証が必要だが、それも手のひら認証で利用できる。

社員食堂の会計場所には、電子マネー等の読み取り端末の隣に手のひら認証の端末が
複合機を利用するときも、手のひらをかざすことで認証され、利用が可能となる

 設置されているロッカーも、手のひらで利用できるもの。ナンバー式のロッカーは多いが、ナンバーを失念して困ってしまうことがある。手のひらならその心配もいらない。結果として、ロッカーの管理者の負担削減も実現できるはず。

ロッカーの利用(施錠・解錠)も手のひらをかざせばOK

 なお、同社が手のひら認証を導入している理由。それは簡単に言うと、認証の精度が高く、認証時間が短く、偽造が困難だから。つまりは特長、メリット・デメリットを勘案した結果、手のひら認証が現段階ではもっとも優れてい、という結論からだ。

富士通(株)作成資料を基に編集部作成

 確かに、冬は指がかさついてスマホのロックが全然外せない…ということがある。指をけがしたときもだめだった。顔認証については体験したことがないが、確かに顔写真を使われたら突破されてしまうのかもしれない。そう考えると、手のひら(静脈)は安全度が高そうだ。
 なお、手のひら認証の技術は、金融機関、シェアオフィスの入退室管理、公営の図書館の利用者管理、自治体の勤怠管理などでの導入実績があるという。

◆ニーズ高まる、オンライン取引での本人確認サービス

 不動産業では先般法改正が行なわれ、不動産取引の完全オンライン化が実現した。対面が基本だったこれまでは身分証明書で本人確認を行なっていたものを、オンライン上で行なう必要も出てきている。
 しかし、オンラインでの本人確認は、対面とは違った難しさがある。本人確認書類をモニタ越しに相手に見せても、それが本物か、身分証明についている顔写真とその場にいる人が同一かを判断するのは、簡単ではない。IT重説を体験した弊社スタッフも「提示された宅地建物取引士証は、よく見えなかったし、その人と同一かどうかも分からなかった」と言っていた。コピーして送付してもらうのも、手間がかかるうえに偽造リスクを排除できない。

 そのような中、オンラインで正確に本人確認ができるサービスが提供されるようになってきた。その一つが、(株)TRUSTDOCKが提供する「eKYC・本人確認サービス」(eKYC=electronic Know Your Customer=オンライン本人確認)だ。このサービスは、スマートフォンやパソコンといったデジタルデバイスを使用し、オンラインで本人確認を行なうサービスである。金融やクラウドファンディング、不動産取引の現場でも導入例が増えている。

 導入企業が増えているため体験済みの方も多いかもしれないが、記者も同社のサービスを体験する機会があったので、いかに紹介しよう。

◆オンラインでも確実に本人確認をするための工夫が

 同社のサービスを導入しているとある企業のサイトを利用するために、個人情報の登録画面で氏名、住所等の個人情報を打ち込んだ。それが終了したら、同社の提供する本人確認サービスの画面へと進んだ。私は運転免許証を使い本人確認を進めた。

 画面の指示に従い、運転免許証の表面・裏面をスマホのカメラで撮影(パソコンのカメラでも可)。斜めの角度からの撮影も求められた。それがすむとその内容が読み込まれ、先ほど私が登録した個人情報と照合が進められる。

スマートフォンで免許証を表・裏と撮影。なお、PCのカメラで撮影するのでもOK
偽造のものを見極めるために、斜めなど複数の撮影が必要

 その後、私自身の撮影へ。私自身の撮影でも、正面だけではなく、首をかしげたりと複数パターンの撮影が求められた。

記者自身の撮影時も、正面のほかに角度を変えて複数パターンの撮影が求められた

 複数の撮影を必要としているのは、偽造したもの、なりすましを見破るためだという。「オンラインでは、拾ってきた身分証画像や顔写真でも提出できてしまう恐れがあります。そのため、その場で撮影した証明のために、指示した行為をしてもらって撮影する等、複数パターンの撮影を求めています」(同社代表取締役・千葉孝浩氏)。

 また千葉氏は、「当社のサービスは、ユーザーの本人確認作業をオンラインで完結できます。なお画像解析等の活用に加え、人の目視による運用を実施しており、高い精度で身元の確認と当人かどうかを確認しています。また反社に該当するかどうか確認するサービスや、法人番号による法人確認サービスも提供、個人・企業の手間を省きつつ、正確な確認作業をサポートしています」と語る。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 オンライン化が進められる中で、詐欺、なりすまし、しのび込み…。悪事を排除するためにも本人確認という手続きは今後ますます重要性を増していくだろう。そして、より便利に、よりリスクの低い本人確認を進めるために、生体認証という技術の活用は今後ますます広がっていくと確信した。
 TRUSTDOCKのサービスは身分証明書をオンライン上で確認し本人確認を行なうサービスだが、これまでは複写を郵送するなどの手間がかかっていたことを考えると、これはユーザーにとっても大変便利なサービスだと感じた。
 ICTでわれわれの生活はあらゆる面で変化している。手間だな…こうだったらいいな…が次々と現実のものとなる社会は、わくわくどきどきすると共に、どこまで便利になるのだろうか…とちょっと恐ろしくもなった。(NO)

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