記者の目 / 仲介・管理

2022/10/3

目指せ「100年マンション」

管理組合主導で資産価値の向上図る

 国のマンション「管理計画認定制度」と(一社)マンション管理業協会の「マンション管理適正評価制度」が今春同時にスタートし、マンションの資産価値向上における、マンション管理の重要性に改めて注目が集まっている。今回は、こうした動きを先取りして、適正な維持管理によりマンションの資産価値を目指す管理組合の取り組みを紹介したい。

「我孫子ビレジ」

70年代を代表する先進的マンション。居住者の意識も高く

 千葉県我孫子市の郊外に建つ大規模分譲マンション「我孫子ビレジ」(総戸数994戸)。東急不動産(株)が1970~80年代にかけ手掛けてきたまちづくり型の分譲マンション「ビレジ」シリーズの一つで、地上5~14階建て20棟の住棟と、銀行やスーパーなどの生活利便施設が入る店舗棟で構成される。

 開発にあたって、同社は若手社員を欧米に派遣し、集合住宅の視察を実施。その成果を盛り込んだ。土地の持つ色彩を建物へと反映させる「環境色彩」をマンションで初めて導入。円形の公園を中心に中層、高層の住棟を取り囲むように配置し、各棟間は生活路を兼ねた緑道や、遊水路としており、緑地率は40%も確保した。公営住宅(いわゆる団地)のファミリー向け住戸がせいぜい広さ20坪(66平方メートル)だった時代に、戸当たり平均専有面積が78平方メートルというゆとりある住戸を供給した。建物も、当時最先端のPC工法を採用。二重床やセントラル給湯によるパネル暖房も導入され、高層棟はスケルトンリフォームも可能(低層棟は壁式工法のためNG)。外壁180mm、内壁150mmにより、現行の耐震基準もクリアする。

規模もさることながら、欧米視察の成果を取り入れたまちづくりは今でも色あせない

 こうした先進的なマンションだけに、入居者(管理組合)の資産(生活環境)維持に対する熱意は非常に高い。同マンションの管理組合では、理事会の下に置く4部会の一つとして「営繕部会」を設け、竣工時から管理を手掛ける(株)東急コミュニティーの現地スタッフと連携。現場主管で維持管理の課題解決に迅速に対応できるようにしている。また、維持保全業務には専門知識・経験が必要であることから専任理事を置き、機動的な修繕計画を可能とするため営繕部会を補佐する「営繕タスクフォース」も常設。大規模修繕の工事施工業者や監理会社も自ら選定するなど、組合主導でマンションの維持管理を推進している。東急不動産グループを代表するマンションなだけに、東急コミュニティーの管理も熱が入っており、管理員や技術担当者など1団地としては異例の3名を常駐させ、日夜管理組合と情報交換を行なっている。

省エネ性と居住性向上へサッシと玄関ドアまで交換

 同管理組合では「100年マンション」を合言葉に、建替えずに竣工時のクオリティ(以上)の建物・インフラを維持していくため、主として(1)耐久性の維持(2)管理コストの低減(3)居住性向上・防災性能向上(4)省エネルギーなどを主眼に、細部にわたる修繕を行なってきた。それらの取り組みについていくつか紹介したい。

 これまで3度行なった大規模修繕では、建物塗装、屋上防水の強化、共用給排水・給湯管の交換、建物間通路や公園の整備・バリアフリー化などを実施。大規模修繕対象外となる専有部の給排水管についても、専有部内の特別管理として積立金制度を導入し、全戸更新した。

 セントラル給湯設備については、加圧式高温水ボイラーから真空式温水ヒータ・蓄熱槽式へ交換。ボイラー運転に必要な監視員が必要なくなった。受水槽加圧給水設備は高機能ポンプユニットの導入により高層・中層棟の個別給水へと移行。非常用発電機により、停電後も7時間の給水を可能とした(発電機のある受水槽ポンプ室では、7時間電気が使えるようになった)。共用部の電灯1,750箇所は、すべてLED灯に交換した。「セントラル給湯設備の更新で、電力費は75%、燃料費も38%削減しました。受水槽加圧給水設備の交換では電力費を58%削減できましたし、水銀灯と蛍光灯のLED灯への換装では、年間約170MWh、500万円相当を削減することができました」(我孫子ビレジ団地管理組合法人専任理事・田中裕実氏)

セントラル給湯設備の更新で監視員コストも削減
受水槽ポンプは非常用発電を備え、緊急時の電力供給場所としても機能する

 居住性の向上に向けては、竣工35年時にすべての住戸のすべての窓をLow-E複層ガラスへ交換、玄関扉も36年目に交換している。玄関と窓は入居者が交換することはできないため、今後も大きなセールスポイントとなるだろう。

共用廊下。すべての住戸の玄関扉を高断熱性のものへ換装するなど、入居者では不可能な居住性向上にまで手を入れてきた

 緑が豊富な住環境についても今後のセールスポイントと考え、造園業者と長期契約し、生育不良植樹の植え替えや補植も行なっている。生活路兼用の緑道はバリアフリー化。新たに3つの子供公園を整備したほか、敷地内に防災深井戸を3箇所掘り、普段その水は遊水路へ流し水道代をコストダウンした。

緑被率40%という敷地では、生育不良の樹木の入れ替え、捕植で環境を維持している
防災井戸を敷地内に3箇所掘削。その水を敷地内の游水路で活用することで水道代を削減した

インフレ想定した36年間の長期修繕計画

 資産価値保全には、こうした適切な維持管理はもちろん重要だが、同時に新たな入居者負担なしにこれらを継続していくことが重要となる。そこで同組合では、3回目の大規模修繕(2019年・20年)を契機に、周期18年、2回分(36年間)の長期修繕計画を策定した。この計画には年率1%の物価上昇と消費税率20%までのアップが織り込まれており、現行の修繕積立金(月額1万2,000~1万5,000円)値上げや新たな借入金なしに、36年間黒字を維持しながらの組合運営を可能とする。長期修繕計画はさらに10年計画に展開し、毎年見直しを加えていき、劣化度合いを考慮し、5年ごとに長期修繕計画へと反映させていく。「入居者は70歳~90歳が過半だが、値上げなしの修繕計画は評価されている」と田中専任理事は胸を張る。管理費・修繕積立金の滞納率も0.4%に過ぎないという。

 こうした計画的かつ意欲的な修繕による建物の維持管理が評価され、同マンションは22年2月、ロングライフビル推進協会の「第31回BELCA」のロングライフ部門を受賞。今後は、マンション管理計画認定制度での情報公開(我孫子市の基準公表待ち)、(一社)マンション管理業協会「マンション管理適正評価制度」への登録を目指す。すでに現在の維持管理計画レベルで、マンション管理適正評価制度の最高評価である★5つが目指せるという。

若年層呼び込みと資産価値への反映が課題に

 一方、同マンションには課題も少なくはない。まず、入居者の高齢化。築44年のマンションながら入居率は94%と高いが、竣工当時からの住民が高齢化していることで、過半が70歳以上となっている。100年マンションを目指すうえでは住民の若返りは必須だ。「国やマンション管理業協会の評価制度に加え、マンション管理センター「マンションみらいネット」での情報公開を予定しているほか、管理組合運営についてもICT化を図り情報を公開していくことで、若年家族にアピールしたい」(田中氏)。

 適切な維持管理による資産価値向上が、どのように流通市場へと反映されるかも、このマンションの今後を左右する。東急リバブル(株)の「中古マンションライブラリー」を見ると、このマンションの参考相場価格(70平方メートル)はここ数年、700万~900万円で安定している。築44年のマンションとしては順当な評価ではあるが、駅徒歩10分以内に数千戸の既存マンションがひしめく我孫子駅圏では埋没してしまう(我孫子ビレジは駅徒歩15分)。建物そのものへどれだけ手をかけているかはもちろん、緑豊かな環境や入居者や地域とのコミュニティーなど、各種評価制度には表れないセールスポイントをどうやって見える化していくかも課題となろう(J)。

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