記者の目

2023/6/30

“北伊豆”をバズらせる!(前編)

不動産会社が取り組む地方創生

伊豆といえば静岡県の東部に位置する静岡県を代表する観光エリア。豊かな自然、多くの観光スポット、海鮮を中心とするグルメなど、国内観光客のみならず、インバウンドも含め人気を博している。
伊豆半島の北部に沼津市の三の浦(さんのうら)というエリアがあるが、ここでは高齢化、過疎化が進行。空き家が増え、地域の活力が急速に失われている。その三の浦地区を“北伊豆”と命名し、観光客や移住者を引き込もうと奮闘している不動産会社がある。取材した。

◆沼津市の三の浦を「北伊豆」とする!

 伊豆半島の東海岸に位置する「東伊豆」、伊豆半島南部に位置し、マリンレジャーや海水浴場で有名な「南伊豆」、堂ヶ島温泉郷がよく知られている「西伊豆」、半島の中央部の自然が豊かな「中伊豆」。伊豆はこの4地域で構成されている。「沼津市」は一部が伊豆半島に位置しているが、「伊豆」の名前は冠していない。沼津市で「三の浦(さんのうら)」と呼ばれる「静浦」「内浦」「西浦」を「北伊豆」と呼んで盛り上げていこうと、さまざまな取り組みを進めているのが、コロナ禍に設立された不動産会社、太助合同会社(静岡県沼津市、代表社員:小池祐一郎氏 )である。

北伊豆(三の浦)の位置
北伊豆エリアは海岸に沿って広がる(牛臥山公園から三の浦を眺めた光景)

 ところで、地域の呼び名、名称を変えることが、なぜ地域を盛り上げることにつながるのか? ピンとこない記者が質問したところ、その理由について、代表社員を務める小池氏はこう語る。

太助合同会社・代表社員の小池祐一郎氏

 「知らない地名、知らない場所には、『そこに行ってみよう』、『そこに移住しよう』とはなかなか思えない。『沼津の三の浦』では“引き”が弱い。知名度のある伊豆を名称に入れた『北伊豆』という地名を定着させ、人を呼び込もうというわけです」。

 三の浦=北伊豆は、みかん畑が広がり、温暖で海が近く、過ごしやすい地域だ。海の幸も豊富。東京からのアクセスも良い。「東京」駅から「沼津」駅・「三島」駅までは新幹線で1時間前後。自動車でも高速道路を使用し東京都心から2時間前後で到着できる。
 こうした環境・立地の優位性があるにもかかわらず、人口減少が進んでいる。高齢者率40%超、人口減少率(2015~60年までの予測)マイナス60.3%と消滅の危機に瀕しており、「自分の子供も含めて、同級生がいないのが当たり前なほど子供が少ない」(小池氏)という過疎のエリアなのである。

 こうした状況を憂いつつも、故郷のこの地を愛する小池氏は、「この地を盛り立てよう」との思いを新たに。幼馴染の大木基行氏に声をかけ、北伊豆を定着させることでのまちづくりと、移住希望者に不動産を仲介することを目的に、宅地建物取引士の資格を持っている友人の木村颯馬氏にも声をかけ、2020年4月、太助を設立した。

太助のホームページ。トップページからすでに「北伊豆」愛が伝わってくる

 余談だが、同社の社名は、この地をこよなく愛し親善大使も務めたことのあるタレントのタモリさんが過去に経営していたもんじゃ焼き屋さんの店名を、タモリさん本人の承諾を得て引き継いだものだ。

◆社長はモデルに応募!…も“北伊豆PRのため”

 まちおこしと、不動産の仲介の両輪を目的に設立された太助。北伊豆という呼び名の定着とPRに向けてあらゆる取り組みを進めている。

 会社の近くある小池氏が経営する自動車販売会社の建物に「ようこそ北伊豆へ!!」と北伊豆をPRする看板を設置。通過する車にも「ここは北伊豆」だと刷り込みをかける。

小池氏が経営する自動車販売会社の建物に北伊豆をPRする看板を掲出

 この地の良さを伝えるために、と同社ではフィルムコミッション事業(映画やテレビ番組などのロケーション誘致&撮影等の進行支援)も展開中。海沿いでロケ地を探していると耳にし、北伊豆の良さをPRした結果、映画「さかなのこ」のロケを北伊豆で実施してもらえることになった。映画は公開され、北伊豆の美しさを映画を通じて伝えることにも成功している。

 小池氏は、地元を盛り上げるためなら、ある意味手段を選ばない。(株)マンチェスが運営する大きいサイズのアパレル通販サイト「MID international」のモデルとしても活動しているが、これも地元を盛り上げるため!サイトのモデル紹介のページや冊子に登場する際にも、「北伊豆」をアピールしまくる。

(株)マンチェスが運営「MID international」のモデルとしても活躍する小池氏

 小池氏のバイタリティ、熱き思いは、多くの人を巻き込む力がある。音声配信SNSで知り合った、吉本興業(株)所属で住みます芸人の富士彦さん、人気番を多数手掛けるカメラマンの辻 稔氏を“巻き込み”、次なる挑戦を開始した。それが「北伊豆動画プロジェクト」だ。

後編へ続く)

新着ムック本のご紹介

ハザードマップ活用 基礎知識

不動産会社が知っておくべき ハザードマップ活用 基礎知識
お客さまへの「安心」「安全」の提供に役立てよう! 900円+税(送料サービス)

2020年8月28日の宅建業法改正に合わせ情報を追加
ご購入はこちら
NEW

月刊不動産流通

月刊不動産流通 月刊誌 2024年6月号
「特定空家」にしないため…
ご購入はこちら

ピックアップ書籍

ムックハザードマップ活用 基礎知識

自然災害に備え、いま必読の一冊!

価格: 990円(税込み・送料サービス)

お知らせ

2024/5/5

「月刊不動産流通2024年6月号」発売開始!

月刊不動産流通2024年6月号」の発売を開始しました!

編集部レポート「官民連携で進む 空き家対策Ⅳ 特措法改正でどう変わる」では、2023年12月施行の「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」を国土交通省担当者が解説。

あわせて、二人三脚で空き家対策に取り組む各地の団体と自治体を取材しました。「滋賀県東近江市」「和歌山県橋本市」「新潟県三条市」「東京都調布市」が登場します!空き家の軒数も異なり、取り組みもさまざま。ぜひ、最新の取り組み事例をご覧ください。