海外トピックス

2020/4/1

vol.367 バルセロナと東京、こんなに違うシェアハウス【スペイン】

バルセロナの街を一望できるブンケル

 スペイン・バルセロナはガウディ、ピカソ、ダリといった芸術家たちの作品に触れることができるだけでなく、サッカー好きにも、グルメな人にも嬉しい都市です。さらに1年を通して比較的温暖で(とはいえ、きちんと冬は寒いですが東京に比べれば……)、山もあれば海もあり、アウトドアも楽しむことができます。

 ですからいつも街の中心部は観光客でいっぱいなのですが、前回の記事で触れたように外国人の流入が増え続け、バルセロナ市内の家賃価格の高騰が止まりません。以前、私は一人暮らしをしていたのですが、あまりにも高かったため(月980ユーロ)現在はシェアハウスに住んでいます。

シェアは当たり前

 スペインでは学生だけでなく社会人になってからも、友達や知らない人とでもアパートをシェアをするのは当たり前のこと。「アパート」といってもファミリータイプのものなので、寝室は2~5室あり、バスルーム、キッチン、そしてリビングを共有します。極端すぎる例ですが、映画『スパニッシュ・アパートメント』を想像するとわかりやすいかもしれません(あれほどカオスではありませんが)。

 私がいま住んでいるのは、サンパウ病院やサグラダ・ファミリア付近のエル・クロットという、中心地からは少し外れた地区です。友人を通じてこの家を紹介してもらいました。アイルランド女性とカタルーニャ男性と3人でシェアしています。

 電気・水道・インターネット混みで、家賃は月500ユーロ(約6万円)。また、毎週お掃除の女性に来てもらっているので、それに加えて各々が毎回10ユーロ支払っています。

住んでいるのは、右側の建物。ローカルの人が多く住む、非常に静かなエリア

 家自体は日当たりも良く、リフォームされているので綺麗なのですが、なんせ1880年代に建てられたという建物なので、中身は相当ガタがきています。水道管が詰まったり、お湯が出なくなったり、さらにトイレが詰まったり、いきなり停電になったりと、ひっきりなしに問題が起きています。

 また、暖房も冷房もないので、冬は小さいヒーターを買って暖を凌ぐという始末。もちろん、冷暖房完備の物件もありますが、古い建物が多いバルセロナでは珍しいことではありません。

リビング
バルコニー。夏は気持ち良いですが、冬は寒い…

やっぱり高い、バルセロナ

 友人には、この地域でこの狭さ(バルコニーはあるけれど、自室が非常に小さい)は高い、と憤慨されることもあれば、光熱費とインターネット込みなら妥当だと言われることもあるので、果たして500ユーロが安いのか、高いのかは正直わかりません(ちなみに、学生の頃に留学していたサラマンカでの家賃は290ユーロと破格の安さ)。

 ただ、「idealista」「fotocasa」などの物件検索サイトを少し見たところ、バルセロナ市内で3人未満、バスルームは2つ、さらに内観が綺麗なところ──と、条件を付け足していくと数件しかヒットせず。さらに家賃も500ユーロ以上するので、根気を持って探さないと気に入る物件に出会うのは難しい気がしました。いっそのこと、友達を見つけて自分たちで借りてしまったほうが安いかもしれません。

自室のバルコニーから

 同居人がいると、家に問題が起きたときに手分けして解決できたり、話し相手がいて寂しくないという利点もありますが、1人暮らしに慣れた身としては、正直、ストレスになることも多々あります。

 キッチンが汚れたままだったり、友達を連れてきて夜にリンビングで音楽をかけられると、最初はイライラしたものですが、慣れとは恐ろしいもので「あぁまたか」という受け流すキャパシティが身に付きました。逆にこちらが少しくらいうるさくしても、何も言われないのでそれはそれでいいのかもしれません。

東京の「シェアアパート10万円」はあり得ない!?

 最近では、東京でもシェアアパートがとても増えたという印象を受けます。実は、私も一時期都内のシェアアパートに住んでいたのですが、スペインのものとは非常に勝手が違い、少し戸惑いました。

 私が住んでいたのは、100人近くが住む大型のシェアアパート。1階にはリビングとキッチン、地下にはワーキングスペースとマルチパーパスルーム。そして2~8階が専有部で、各階にバス・トイレがありました。また、カフェとイベントルームのようなものも併設されており、自由に使えます。自室は10m2ほどと非常に狭く、家賃は約10万円と、ちょっとお高め。

 そもそも、このような巨大なシェアアパートはバルセロナで聞いたことがありませんが、ここに住む人たちの動機も、こちらとは違っていました。

 東京のシェアアパートに集まっている人たちの場合は「いろいろな人たちと出会って刺激を受けたい」「自分を変えたい」という、積極的な理由が多い印象を受けました。また、アパート内のイベントも頻繁に開催されていて、圧倒されたのを覚えています。1人暮らしをするより高くついても、こうした機会を求めてやってくるようです。

 一方、バルセロナ(スペイン)では1人暮らし用の物件が少なく、前述の通りほとんどの人がシェアするのが当たり前という感覚で住んでいます。ですから、シェアなのに10万円支払っていたとスペイン人に話すと「何言ってるの?」と仰天されます。

東京とバルセロナ、同じ「シェア」といっても認識はこんなにも違うようです。


上田紋加(編集・ライター)
2017年からスペイン・バルセロナに在住。大学在学時代にスペイン・サラマンカに留学し、スペイン生活に憧れるように。総合商社で2年勤務後、2014年より講談社「クーリエ・ジャポン」のフリーランス編集者・ライターとして勤務。海外で活躍する日本人や旅行、映画、グルメなど主にカルチャー分野を取材、執筆する。

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