海外トピックス

2020/8/1

vol.371 『木に戻ろう』がトレンド。世界一豊かな国では木造建築ラッシュ!【ノルウェー】

 世界幸福度ランキングで毎年上位に名を連ねるノルウェー。フィヨルドと山に囲まれた独特な自然美を持つ北欧の小さな国は、オイルマネーによる経済発展を遂げ、今日では世界で最も裕福で健康な国のひとつになった(英国レガタム研究所調べ)。そんな豊かなノルウェーで今注目されているのは、ほっこりした「木」の建築だ。

近代的な建物が林立する首都オスロのオフィス街「Barcode」

木材は慣れ親しんだ素材

 首都オスロには、現代的で超ハイテク、北欧デザインの粋を集めた建築がひしめいている。約10年前からフィヨルド沿い湾岸の再開発が盛んだ。そんな中人気なのは、次々出現し始めた木造建築。オフィス、ショップやカフェなどの商業施設、学校、マンション建設などに木材が多用されるようになった。

去年11月完成したオフィスビル「Valle Wood」。無垢材で出来たビルとしては国内最大級。設計:LUND+SLAATTO ARKITEKTER
美しい木目の外観が目をひく。街の中心地に位置し、住宅や学校、幼稚園と隣接する。周囲には今後さらに同じような木造建築が増える予定

 9〜12世紀に活躍した祖先ヴァイキングが住んでいた家は、「ロングハウス」と呼ばれる丸太で造った家屋だった。中世時代の教会だって木造で建てられていた。この木造教会の建築技術は芸術の域で、石造りの教会が多い欧州では非常に珍しい。もともと林業が盛んなノルウェー。木はノルウェー人にとって身近な素材であり、慣れ親しんだ建築素材なのだ。

ノルウェー民族博物館にある1216年頃に建てられた「ゴル・スターブ教会」。支柱を木にはめ込んで建てたもので釘一本使われていない。まさに匠の技

木材は健康によい!

 近年ノルウェーやドイツをはじめ欧州の研究では、木材が心拍数の低下、痛みの軽減、睡眠の改善と感染リスクの低下などに効果があることが証明されている。また、木目を見る環境にあると人間はストレスが軽減されるという興味深いレポートもある。そのためか木造の教育施設や老人ホームが目立って増えている。

 オスロ市にある幼稚園「Fagerborg Menighetsbarnehage」。こんなおしゃれな幼稚園があるなんてさすが北欧!と唸ってしまう斬新なデザインだ。設計した建築家Ramstad氏は、「既存の退屈なデザインとは反対の遊び心溢れる幼稚園を建てたかった」と言う。違う高さに設定された窓も面白いし、雨の日でも屋外で遊べたりなど随所に創造的な工夫がされ、子供(大人も!)がワクワクするようなデザインだ。

小さな都市公園の真ん中に位置し、庭園に囲まれたように保護された屋外エリアがある。オスロ市建築賞などを受賞した名建築。設計:Reiulf Ramstad Arkitekter 撮影: Søren Harder Nielsen 
木材を選んだのは、環境によいこと、また優しく柔らかい木の感触を子供たちに感じてもらうためだそうだ。撮影:Reiulf Ramstad Arkitekter

 確かに木目を見たり、木に囲まれているとなんだか心地よく、癒される感覚がある。Well-beingの観点からも木材に注目が集まっているのは至極納得。

ノルウェー中部、学生の街トロンハイムにある学生寮「Moholt 50 | 50」。1965年頃からあった煉瓦作りの古い学生村が2017年新しく木造都市に生まれ変わった。設計:MDH Arkitekter 撮影:MDH Arkitekter
学生寮の共同キッチン。木を活かしたシンプルなインテリア。撮影:MDH Arkitekter

木材は低コストで環境にもよい

 ノルウェー建築家協会は、街に木造を建てるのが環境にも最善であり、しかも最も安価だと提言している。オスロ市北部には若者に低コストで住宅を提供するためのプロジェクトとして作られた集合住宅がある。デザイン性に富みながら木材が温かい印象を与えている。こんな素敵な集合住宅なら住んでみたい。

月額賃貸料は、2ベッドルーム9500ノルウェークローネ(約11万円)〜。物価高のオスロでこの家賃はありがたい。設計:Haugen/Zohar Architects

 また、木材はグリーンシフトにとっても重要だ。建設業界は、温室効果ガス排出の最大分を占めている。木造建築にするとかなりのエネルギーを節約できるという。

 ノルウェー政府は、2030年までに1990年と比較して温室効果ガス排出量を少なくとも40%削減することを目標に掲げている。

ノルウェーの南、スタヴァンゲル市に完成したばかりのFINANSPARKEN「SR-Bank」。ヨーロッパ最大の木造商業ビル(22,600 平方メートル)。設計:SAAHA  撮影 :  the architect Njål Undheim / Helen & Hard
銀行の従業員約650人が働く。75%の省エネ率。贅沢な木のしつらえのインテリアは圧倒される美しさ。撮影 : Jan Inge Haga

 建物がどのように健康や環境や福祉に貢献できるか。都市に大きな木造建築を建てることは、環境、経済、社会の持続可能性をもたらす。ノルウェーは国全体でそのことに取り組んでいる。この木造ブームは、ただの流行ではないのだ。

古澤恭子 
ライター・編集・ガイド。流行通信社、宝島社、扶桑社などで女性誌編集を経て2010年よりノルウェー在住。北欧の文化やライフスタイルを寄稿。「海外書き人クラブ」所属。

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