不動産ニュース / その他

2007/3/22

2007年地価公示に業界・各社がコメント

 国土交通省が22日に発表した「2007年地価公示」結果について、業界団体・各社のトップから以下のようなコメントが発表された。

■(社)全国宅地建物取引業協会連合会 会長 藤田和夫氏

 平成19年の地価公示では、三大都市圏や地方ブロック都市の地価上昇を背景に、全国平均では平成3年以来16年ぶりに、住宅地(0.1%)、商業地(2.3%)ともに上昇に転じた。地方圏でも住宅地が平均▲4.2%から▲2.7%へ、商業地でも平均▲5.5%から▲2.8%へと3年連続で下落幅が縮小している。
 一方三大都市圏では、住宅地が平均で2.8%と16年ぶりの上昇、商業地が平均で8.9%と2年連続で上昇し、ブランド力のある地域や高級住宅地、高度商業業務機能集積地区などで局地的に高い地価上昇がみられるもの の、利便性、収益性に劣る地域では依然として下落傾向が続いており、「地価の二極化」傾向は強まっている。
 都心部の地価上昇は、いざなぎ景気を超える好況とJ-REITや投資ファンドによる不動産証券化の活況などが要因と思われるが、地方圏では依然として下落傾向が続いており、憂慮している。
 折りしも日本銀行の金利引き上げ、株式市場の低迷等により、今後の日本経済の行き先にも不透明感があり、都心圏と地方圏の地価の二極化現象は依然として解消されていない。
 本会では従来より、全国的な「資産デフレからの脱却」を目指して、学識経験者からなる「今後の土地住宅税制のありかに関する研究会」(座長:山崎福寿上智大学教授)を設置し、平成19年度税制改正要望などの際に政策提言を発表している。本会では今後とも、地方圏においても不動産取引や証券化が活性化される取り組みを行い、全国的な地価の安定が図られるよう意見表明を行うとともに、予想される消費税率引き上げが、我が国経済を支える個人消費の中心である住宅取得の懸念材料とならないよう政策提言をまとめ、引き続き税制改正要望活動を行っていく所存である。

■(社)不動産流通経営協会 理事長 三浦正敏氏

 地価は、住宅地、商業地ともに、三大都市圏および地方ブロック中心都市を中心にした上昇により、全国平均で平成18年地価公示に比べわずかな上昇となったが、全国の地方圏においては依然として、地価下落が続いている状況にある。
 今回の地価公示においては、利便性、収益性の高い地域と、その他の地域の地価動向の差異が一層鮮明になったといえるであろう。また、三大都市圏および地方ブロック中心都市の今後の地価見通しについても、景気および金利の動向、建築価格の上昇等によるマンションの需給動向等に留意する必要があるといえるであろう。
 今後、少子高齢化の進展、団塊世代の大量退職など社会情勢の更なる変化が見込まれる中、全国レベルでの順調な地価回復を実現するためには、地方経済の活性化を進め、国民生活の基盤である土地・住宅に関する多様なニーズに応える政策の推進が不可欠である。国の住生活施策の方針である住生活基本法、住生活基本計画さらには現在、自由民主党で検討されている「200年住宅ビジョン」等でも示されている通り、住宅ストックの有効な活用を図る既存住宅流通市場の活性化は、今後の政策上の重点課題であり、不動産流通を促進する税制の継続実施および住宅投資等に対する幅広い政策面での支援策の強化がさらに求められる。

■(社)日本ビルヂング協会連合会 会長 高木丈太郎氏

 堅調なオフィス需要や不動産証券化市場の拡大、また都心回帰型のマンション供給等を背景として、三大都市圏商業地では2年連続して地価上昇、住宅地も16年ぶりで上昇に転じたが、一方、地方圏では、地価下落に歯止めがかからない状況がなお続いている。
 東京・大阪等の都心部においては、比較的高い上昇率となっているが、これはオフィスやマンションに対する実需と事業の収益性、更には再開発等による地域のバリューアップが適切に反映されたものであり、バブル期のような投機的要素は見られないと判断している。
 こうした地価の動向は、大きな時代の変革期に差し掛かっている我が国の構造問題を反映しているように思われる。即ち、グローバル化が進展し産業構造の変革を求められる一方で日本の総人口が減少していくという大きな流れの中で、知的生産の基盤となるオフィス空間に対するニーズが増大し土地の有効利用による職住近接の都市形成が進む一方、高度成長期に拡大した大都市縁辺部や地方都市における立地需要の相対的な減少が見られる。
 このような状況を踏まえると、まだまだオフィスの空室率が改善したとはいえない地方の中核的な都市に焦点を当て、都市再生施策を一層進展させるとともに、過重になっている固定資産税負担を軽減する等、選択と集中による経済活性化支援策を通じたまちづくりへの強力な取り組みが望まれる。

■東京建物(株) 取締役社長 畑中 誠氏 

 地価上昇ポイントが三大都市圏に加え、札幌、福岡といった地方ブロック中心都市まで広がっている。これは構造改革や規制緩和の進展など都市再生・地域再生の流れが地方ブロック中心都市にも波及・浸透したことによる。
 また、ここ数年の不動産証券化市場の着実な拡大発展は、都市再生・地域再生の進展とわが国の不動産市場に収益還元価格による取引を根付かせ、マーケットメカニズムが働く健全かつ透明性の高い不動産市場の形成に寄与してきた。地価公示に見られる都市部の地価上昇は、マンション・オフィス等の需要の拡大など、不動産のもつ収益性向上を反映したものであり、かつての不動産バブル期の収益性を無視した取引による地価上昇とは本質的に異なっている。
 わが国経済を内需主導型の持続的な成長軌道に乗せるためには、今後も、官民一体による都市再生・地域再生、不動産証券化市場の拡大、税制の支援など各種施策が不可欠であり、その効果は、大都市だけではなく、地方都市の経済活性化に寄与するものとなろう。

■野村不動産ホールディングス(株) 取締役社長 鈴木弘久氏

 三大都市圏を中心に、分譲住宅市場は依然堅調であり、都心部のみならず主要ターミナルを最寄とした周辺通勤圏における需要は確かなものとなっている。また、不動産証券化市場においては、資本市場から不動産市場への資金の流れが増大するなかで、マーケットは拡大し取引が活性化している。
 今回の地価公示は、このようなマーケットの状況を反映したものであり、今後も中長期的トレンドの重要な指標として注視していく。
 地価形成の過程においては、実需や収益還元といった確かな利用価値に基づいた「物差し」が機能しており、今後もこうした考えが一層定着すると考えられる。また、内外からの資金流入という構造変化に伴い、従来にも増して金利の動向が地価動向に与える影響の度合いが高まっていくだろう。
 今後も都市再生・地域活性化の流れの中、不動産の付加価値をいかに高めていくかが鍵となっていき、今まで以上に商品性の向上や、高度な再開発のノウハウの提供といったデベロップメント能力が求められる。

■三菱地所(株) 取締役社長 木村惠司氏

 全国平均では、商業地・住宅地ともに16年ぶりに上昇に転じた。三大都市圏や地方中心都市における高い上昇率が全体の平均を押し上げた結果であり、三大都市圏の縁辺部や地方圏の多くのエリアは、下落幅は縮小しているものの依然として下落が続いている。
 東京では丸の内、六本木等で大型再開発が展開されているが、大阪、名古屋等においても再開発が活発になってきており、地方中心都市においても不動産開発ニーズが高まってきている。これらが、地価に反映されていると考えられ、現在の不動産価格が、収益性に基づき形成されていることを表している。
 その他の地方圏では、中心市街地の活力低下、駅前商店街の衰退等が進行し、未だ地域の活性化が進んでいない。地域の再生には、地元の自治体・企業・商店街・住民等が一体となって、各地域の歴史・文化における特色を生かし、新しい魅力を創造する努力が必要である。
 4月に「新丸の内ビルディング」が竣工するが、当社は今後も丸の内再構築を推進するほか、大阪駅北地区や仙台等においても積極的に開発事業に取り組んでいる。今後もあらゆる局面において不動産価値創出能力を発揮し、今後日本経済が持続的に経済成長していくために必須である活力ある都市創造や地域再生に貢献していきたい。また、行政に対しても不動産市場の安定的な成長に資する諸制度の適切な導入・運用等を求めていきたい。

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