不動産ニュース / 団体・グループ

2018/6/4

民間事業者による活用や登記・税制の見直しが課題

パネルディスカッションの様子。大学教授、弁護士等のパネリストの他に、税理士、不動産鑑定士、司法書士等のコメンテーターも登壇した

 (公社)日本不動産学会は1日、すまい・るホール(東京都文京区)にて「所有者不明土地のゆくえ」と題し、2018年度春季全国大会シンポジウムを開催した。

 同学会は4月、(公社)都市住宅学会、資産評価政策学会と共に所有者不明土地を利用希望者に提供するための政策提言を提起。また、学会誌でも特集を行なうなど、同課題について研究を進めている。今回は、所有者不明土地の発生原因や、所有者不明土地の有効利用に係り必要となる制度改正についてパネルディスカッションを実施した。

 元国土交通省職員で、現(一社)民間都市開発推進機構理事長の原田保夫氏は所有者不明土地と都市のスポンジ化問題が表裏一体であると指摘。2月に閣議決定した都市再生特別措置法等について「土地収用の対象となる公共事業について、所有者の特定にコストと時間がかかっている点を解消すべく、低未利用地の所有者と利用希望者を行政が結びつける制度作りがなされた」と解説した。今後については、「建物を“つくる”ことから“空間管理”に主眼を変え都市づくりを行なうこと、建築不自由原則を確立すること」の2点に取り組むことが、両問題の解消につながるとした。

 横浜国立大学大学院准教授の板垣勝彦氏は、管理放棄されている所有者不明土地について言及。「取得時効という制度があるため、価値がある土地であれば所有者が不明であっても利活用は行なわれるだろう。所有者不明土地の課題は、誰も所有したくない管理放棄土地をどうするのかということ。国・地方公共団体が集積し、経済的な障壁の除去などをした上で、再度市場に還流させるなどの制度が必要では」と述べた。

 その後のディスカッションでは、所有者不明土地発生の原因について「所有権の登記は手続きも多く登録免許税などの費用もかさむため未遂行の人が多い。インターネット申請のシステムを作るなど手続きの簡易化を図っては」「使いたくない土地でも相続してしまうと国に還すこともできず、固定資産税を払わなければいけない点が課題。資産課税の見直しや、所有権の放棄制度の策定が必要」等の意見があった。

 また、3月に閣議決定された「所有者不明土地利用の円滑化等に関する特別措置法案」について、「公共性のある事業については5年間の利用権を付与する仕組みが作られたが、利用用途も利用期限も限定的すぎるため大きく利活用が進むとは考えられない。民間事業者による利活用も許可する方針にすべき」との意見が多く挙がった。

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不在者とは、住所または居所を去って、容易に帰ってくる見込みがない者をいう。不在者は失踪宣告を受けた者を含み、失踪宣告を受けた者よりも広い概念である(詳しくは失踪宣告へ)。

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